【社員を本当に大切にするとは!?】人に困らない経営 ~すごい中小建設会社の理念改革~|森本尚孝

人に困らない経営 ~すごい中小建設会社の理念改革~
  • どうしたら、よりよい経営を目指していくことができるでしょうか!?
  • 実は、経営理念による一気通貫した活動が大切かもしれません。
  • なぜなら、会社には多くの人が関わってくださるからです。
  • 本書は、建設業界にあって、建設らしからぬ会社の理念経営に関する1冊です。
  • 本書を通じて、経営の本質と理念の大切さについて触れることができます。

理念ドリブンを目指す!?

著者である森本尚孝さんが代表をつとめる三和建設は、ゼネコンらしくない会社です。建設業界やゼネコンには、旧態然、古めかしい、品質不良・品質偽装が絶えない、談合を繰り返している、営業マンはゴリ押し姿勢もしくは慇懃無礼、過酷な労働環境で、働く人に優しくない、女性が活用されていないなどなど(これは森本尚孝さんが記載されいている内容です・・)イメージがあるかと思います。そんなイメージを真逆に払拭する企業が三和建設です。

三和建設の経営理念は、「つくるひとをつくる」というものです。

建築を作っているのに、ひとをつくる?ってどういうこと?と思われる方も少なくないと思います。そこが、当社がゼネコンらしくない会社といわれるゆえんです。

この理念は、ステートメントを伴っています。

つくるひとをつくる
建物をつくる
技術をつくる
価値をつくる
お客さまをつくる
信頼をつくる
社会をつくる
仲間をつくる
会社をつくる
歴史をつくる

すべてはひとがつくります。
だからつくるひとをつくります。

だからこそ、わが社は「ひと本位主義」。
社員とその家族を何よりも大事ににします。
ひとをつくり続けるため、
毎年新しい仲間を迎えていきます。
毎年入ってくる新しい仲間のために
会社の永続を目指します。
社員は会社の存在意義そのものです。
会社と社員一人ひとりが、互いにとって
真にかけがえのない存在となります。

この中でまず確認しているのは、私たちがつくっているのは建物だけではないということである。

4 経理理念はたった9文字

建物も、会社も、人あってのもの。人をつくることが突き詰めて考えると、すべての起点にあるという考え方です。人は手段ではなく、目的であるとも森本尚孝さんは語ります。こうした人起点の「大義」を語ることが出来て、初めて社長は社長の役割を全うするスタートラインに立つことができます。

いま、改めて企業の存在意義が問われる時代です。ブラック企業が淘汰される中で、一方で、フリーランスの働き方も注目されています。わざわざ組織化する必要性をいかに提示できるかが、実は会社経営にとって必要な時代がいま訪れています。

これまで考えもしなかった会社とは何なのか・・?これにいち早く自分たちらしい見立てを見つけ、その中で、自分たちの個性を言語化し、従業員やステークホルダー全体に共感をもって伝えられるかどうかが、求心力を担保します。

フリーランス市場については、こちらの1冊「【自由も、安定も、得られる方法論!?】フリーエージェント社会の到来|ダニエル・H・ピンク」、理念経営については、こちらの1冊「【「理念」でこそ、組織が動き出す!?】理念ドリブン|橋本淳」もぜひあわせてご覧ください。

一人ひとりがリーダー!?

三和建設には兵隊はいない。

2 経営情報はしっかり公開する<上位概念の徹底>

三和建設の従業員は、全員が士官です。つまり、自らの視点でものごとをみて、判断し、行動できるリーダーということでしょう。考え、判断するためには、軸足が必要です。その軸足こそが、上位概念です。つまり、理念、ミッション、ビジョンなどの会社が定めるフェアウェイです。

役割があり、責任があり、仕事を任されているという感覚が、考える風土・カルチャーを育てます。誰か、ボスのような存在が一方的に指示をするのではなく、自ら考えることがなくてはものごとが前に進んでいかないからです。

こうした一人ひとりが考えるカルチャーを持っている組織は、非常に柔軟性があり強いです。しかしそれは個別バラバラの強さではなく、理念等によってベクトルが定められているため、組織としても同時に柔軟な強さを発揮します。たとえ少しの外的環境の変化があったとしても、多様な思考力をもって、乗り越えていくことが可能です。

一人ひとりが考えるためには、月次の数字を共有することが大切です。数字は感情を排除し、冷静にものごとと現状を認識する優秀なツールになります。ありのままを従業員にオープンにする経営によって、一人ひとりが自らの行動をより良くしていく活動に真剣に取り組み、また、互いに課題を共有することでチームの底力を引き出すことができます。

可能な限り、経営はガラス張りにすることによって、ボトムアップでの変革を常に期待することができます。

月次のレビューをするためには、管理会計の導入がキーです。こちらの1冊「【管理会計を導入しよう!?】すぐわかる 中小企業の管理会計「活用術」|林健太郎,梅澤真由美」「【ありもの帳票を上手に活用!?】すぐわかる 中小企業の管理会計「活用術」|林健太郎,梅澤真由美」もぜひご覧ください。

同時多発的なコミュニケーションも非常に重要です。人は一人で仕事をしているのではありません。一人でできる仕事は想像以上に小さなものです。だから、人は会社を作ったり、社会を作ったりするわけなのですが、その「全体」を機能させていくためには、感情も含めた交換、つまりコミュニケーションがポイントになります。

三和建設では、「SODA(Sanwa Operation System for Slaes & Dairy Reports Archive)」という独自のコミュニケーションシステムを構築して、社長から従業員までが日報を筆記し、互いに閲覧することで組織の風通しを良くしています。

社員を大切にする本当の意味とは!?

多くの企業が「社員を大切に」を当然のようにうたいます。そうでなくては、新しい仲間が得られませんし、現在のメンバーの労働環境をよりよく作る上でも当然のように必要な考え方です。

しかしその本質はどこにあるでしょうか!?例えば、過保護に社員に負担がかからないようにすることも、社員を大切にしているということになるでしょうか。

森本尚孝さんは、次のように語ります。

社員を大事にするということは、決して依存させたり、受け身の姿勢をよしとすることではない。

1 大事にするとは一方的に甘えさせることではない

自分の子どもがどんなに可愛くても、猫可愛がりにした結果、誰かに支えられないと生きていけないようになってしまっては、その子のためにまったくなりません。人は世代交代していくものです。一人で生きていくための考え方とスキルを積み重ねてあげなくては、幸福を感じる時間を減らしてしまいます。

従業員との向き合いでも同じです。可能な限り、従業員が自律して、自ら活動を積み重ねていけるような指導と方向づけが会社の役割になります。本当に永続する会社は、従業員が自主自立しています。自ら考え行動することをどうしたら促すことができるか、仕組みを作るのが経営のひとつの大きな役割と言っていいでしょう。

当社三和建設の事業計画上のポイントは、実は理念や従業員に対する自立の考え方だけではありません。彼らは、自らの事業ドメインを特化し、自らの強みを引き出し、活用する視点を得ているところも非常に学びが大きいポイントです。建設業界は大きな会社から小さな会社まで、たくさんの事業者数があります。そんな中で、三和建設は中堅どころ。良く言えば自由度が高いポジションですが、悪く言えば自ら積極的に特徴を見出さなくては、顔つきが見えづらくなりがちな立ち位置です。

そこで、三和建設では、次のように自社の事業の特化ポイントを作成しています。

1)食品工場を中心とした「ファクタス」ブランド・・ファクトリーに「足す」という意味のブランドで、食品工場の建設ソリューション全体に対するブランディングと事業定義を行っています。国内の食品メーカーは国内生産を志向し続けマーケットサイズも一定程度存在し続けるという見立てと、サントリーやニチレイフーズ等の取引実績、食品工場に関わる要件の多さと計画・建設の難易度を考慮して、排他的なポジションを作れると判断しています。

2)倉庫ソリューションブランド「リソウコ」・・理想の倉庫を想起するブランドで、危険物倉庫、冷蔵倉庫などの特殊用途倉庫を計画・建設するソリューションです。

3)独自のマンション建設ブランド「エスアイブランド」・・スケルトン・インフィル(建物のスケルトン=柱・梁・床などの構造躯体とインフィル=住戸内の内装・設備等を分離すること)に関するソリューションです。当社の集合住宅建設は、一度立てたらその場所でずっと愛され続ける建物を目指すものです。

これらのソリューションブランドは、ラクに儲かるから特化しているということではないことに論点があります。従業員には実際には非常に多くの苦労をかけているといいます。

とりわけ工場についは、関係各所との調整が多く、計画から竣工まで非常に多くの課題を乗り越えていかなければならないという点において、人が担う役割がとても多いカテゴリーです。

一方で、難しいからこそ人が育つのも事実です。一定程度の負荷をかけていくことで、自らにノウハウを蓄積しながら、従業員のスキルアップとやりがいを引き出し、その上で、事業も順調に拡大させていき、永続性を見いだす方向性を当社は自らのドメインを積極的に規定することで獲得しているのです。

まとめ

  • 理念ドリブンを目指す!?――理念をもとに経営をすることで、一体感が生まれ強い組織になります。
  • 一人ひとりがリーダー!?――自ら考え行動し続ける従業員を育成できるかがキーです。
  • 社員を大切にする本当の意味とは!?――自立・自律を促す仕組みを作ることです。
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