- 現実は、実在するのでしょうか。
- 実は、現実は、頭の中で作られる解釈なのかもしれません。
- なぜなら、人それぞれで、社会のそれぞれで、現実は異なる色で存在するからです。
- 本書は、こうした主張をとる社会構成主義の入門書です。
- 本書を通じて、現実を解釈をもって見出す時、対話にできることを知ります。
現実は頭の中で、作られる!?
社会構成主義はもともとデュルケームなどにより、社会学の考え方として生まれたものです。「現実」はそれとして存在するのではなく、人々の頭の中で作り上げられるという考え方でした。
監訳者まえがき
社会構成主義は次のように主張します。人は対話(ダイアローグ)を通して意味をつくっていくのであり、「言葉が世界を創造する」。
社会構成主義の基礎的な考えはとてもシンプルなようで、奥深いものです。私たちが「現実だ」と思っていることはすべて「社会的に構成されたもの」だと認識します。そこにいる人たちが、「そうだ」と「合意」してはじめて、それらは「リアル」になります。
現実とは曖昧なものであることを意識してみても良いかもしれません。
「あなた」について考えてみましょう。
以下の人々にとって → あなたは
- 生物学者 → 哺乳類
- 美容師 → 去年のヘアスタイル
- 教師 → 将来有望
- ゲイ → ストレート
- 経験なクリスチャン → 罪人
- 両親 → 驚くほどの成功者
- 芸術家 → 素晴らしいモデル
- 心理学者 → 少しの神経症患者
- 物理学者 → 一原子構造
- 銀行家 → 将来の顧客
- 医師 → 心気症
- ヒンズー教徒 → 不完全なアートマン(真の自己)
- 恋人 → 素晴らしい人
- イファリク諸島の人々 → 稲光に包まれて
などなど・・、あなたは、いったい何者でしょうか。
重要なポイントは、人が「何が現実か」を定めるとき、常にそれは、ある一つの文化の伝統から話しているのだということです。
さまざまな視点から認識されるさまざまな「あなた」
いま、社会では新しい問いと対話が生まれています。真実、客観性、合理性、進歩、道徳、一見普遍的であると思われた伝統的な考え方に疑問が投げかけられて、それらが更新されていくように感じます。まさしく、対話の中で、新たな現実の社会が再構築されていると言えます。
これは人間の存在についての新しい希望と期待の声です。
第1章 「社会構成」というドラマ
可能性を無限に拡げる対話!?
もっと広い意味でとらえることができるのならば、わたしたちはお互いにコミュニケーションを取るたびに、それぞれが生きている世界を再構成していると言えるのかもしれません。
私たちが日頃慣れ親しんでいる伝統の中にい続ける限り、人生はそのままでしょう。
さまざまな視点から認識されるさまざまな「あなた」
解釈を二分する考え方の中では、考え方が固定化するように、自分の可能性や社会の可能性も閉じて感じられるようです。たとえば、「男と女」「貧富」「教養がある/ない」など慣れ親しんだ区分に生きている限り、人生は比較的予測可能なものであり、よくも悪くも約束されているかのように感じるのです。
たとえば、「問題」は、すべての人にそのように見えるわけではありません。私たちが、よりよい状態を共通認識しているからこそ、その事象が「問題」として認識されているのです。
考え方次第では、価値観や現実はまったく新しく捉え直しができるのです。そして、それは「対話」を通じて絶えず更新されているとも考えられます。これまで現実であるとか良いと思ってきたことを捨て去るということではなく、歴史や伝統に縛られることはないということです。
私たちの目の前には、「イノベーション(革新)」への無限の可能性が広がっています。
関係(対話)の中から私たちが「本物だ、理にかなっている、価値がある」とするあらゆるものが生まれています。「関係」に重点を置く意義はとても大きいのです。「関係」の視点は、他者と共にある人生への深い理解を呼び起こします。そのことによって、他者から切り離されたものでもなければ、他者と対抗するものでもない、関係を生み出す力と調和した行動の流れに集中するようになります。
新たなリーダーシップとは!?
関係の中から価値や価値観が生まれているのだとしたときに、リーダーシップのあり方もその関係にフォーカスされるべきだと気づくでしょう。
個人のリーダーシップから関係性のリーダーシップへ
個人のリーダーシップから関係性のリーダーシップへ
そもそもリーダーとしての役割を果たすためには、意味づくりのプロセスの中に他者の関与がなければなりません。孤立していては新たな価値を見出すことは困難なのです。
リーダーシップに関係性の視点を持ち込むことで、新たな結果がもたらされます。リーダーをひたむきで明確なビジョンをもった人物とみなすのを辞めた途端、メンバーがリーダーの役割を引き受けるようになります。単に漫然と指示を受けて日々を過ごすのではなく、方針や実践に個人的投資を行うため、積極的に関与するようになります。
企業と社会とが、互いに価値を認識するアプローチとしてこちらの投稿「【社会のために企業は存在できるか?】経済的価値と社会的価値を同時実現する 共通価値の戦略|マイケル・E・ポーター」もおすすめです。関係性によって、価値が認識されたり、意味が見出されるのであるとすれば、ブランディングも対話なのかもしれません。
まとめ
- 現実は頭の中で、作られる!?――現実とは、文化的、歴史的背景をもった認識です。
- 可能性を無限に拡げる対話!?――対話によって歴史や伝統を更新することができます。
- 新たなリーダーシップとは!?――関係性のリーダーシップです。