【まだ言葉になっていないこと?】インサイトブースト:~経営戦略の効果を底上げするブランドデザインの基本~|下總良則

インサイトブースト:~経営戦略の効果を底上げするブランドデザインの基本~
  • プランニングにおいて、大切な視点は何でしょうか?
  • 実は、やはりインサイトを見つけに行くことかもしれません。
  • なぜなら、インサイトはまだ言語化されていないからこそ重要だからです。
  • 本書は、インサイトについて改めてその重要性と有用性を感じる1冊です。
  • 本書を通じて、プランニングのキーにふれることができます。

インサイトはまだ気づかれていない!?

プランニングの目的は、何らかの企画を立案して、その結果、人の心を動かし、最終的に行動を誘発することです。そのためには、人について深い洞察(インサイト)が欠かせません。人が感じていることを言語化し、その内容に基づいてモノやサービスの切り口を検討し、適切に情報伝達することで、共感を生み出し、行動へと導くことが可能になります。

難しいのは、インサイトと一口に言ってもそれがまだ、対象者の中で明確に言語化できる概念になっていないことです。本書では、「無意識のインサイト」と名付けられています。

喉が乾いたから、なにか飲みたい。お腹が空いたから何かを食べたい。インサイトとはこうした欲求を指しますが、こうした生理的な欲求だけではないのが人間で、その欲求のレイヤーごとに気持ちを検討することが望ましいです。つまり、マズローの欲求段階と、商品やサービスの価値の重層をそれぞれ検討するということになります。

さらにもっと難しいのは、対象者がすでにそうした気持ちを言語化できていれば、話が速いのですが、往々にして、強いインサイトというのは言語化されていません。何らかの外部刺激が合った時に初めて概念として見つけられるのが本当に響く強いインサイトです。

ドリームズ・カム・トゥルーさんの「すき」という歌をご存知でしょうか。ちょっと長いのですが、インサイトの発見に関するヒントが隠されていますので、引用させていただきたいと思います。

やさしい人達の 然りげない誘いを
“×”と大きく腕で書いた 少し笑った

“心に穴が空く”ってこと
わかった気がした

妙にぴったりで また 少し笑った

すき…Uh Yeah
帰り道のことは 何も覚えてなかった

ドアを開けたままで
バスタブにうずくまった

甘い愛の歌ばかりがFMから聴こえる

“ちょっと失敗”つぶやいて また笑った
すき…Uh

抱いた膝に 次々にこぼれる しずく
そっか私ずっと 泣きたかったんだ

すき…Yeah
すき…すき すき すき すき

こんなすてきな歌詞の曲です。この歌詞の主人公の人は、失恋なのか、あるいは喧嘩なのか、きっと大切な人との溝に悩んでいるのでしょう。そして、ポイントなのは、涙を流して、はじめて泣きたかったということに気づいているところです。

私はここにインサイトの本質があるのではないかと思います。大切なことは、実は何らかの行動や現象が伴って、はじめて気づくこともあるということ。涙が流れるという現象が、自分が泣きたかったという気持ちにはじめて気付かさせてくれています。

きっと日常では、こうしたまだ気づいていない気持ちがあるはずなのです。

「自分ではまったく気づいていないか、あるいはうまく説明ができていないような思考プロセスであるものの、その結果として、消費者行動の源泉となっているその深層心理」と私は定義している

まだ言語化されていないことを見つけていくには、実は「対話」が効くかも。こちらの1冊「【対話こそが変革を生む!?】企業変革のジレンマ「構造的無能化」はなぜ起きるのか|宇田川元一」もあわせてご覧いただくとさらにインサイトの発見について、ヒントを見出すことが可能になると思われます。ぜひ!

観察がキーである!?

インサイトの発見のプロセスは、デザインを行っていくこととリンクしそうです。デザインは、「観察すること」から始まります。そして、観察して、まず対象物のあるがままを写し取っていきます。これがデッサンと呼ばれるものになります。

デッサンとは、モチーフを写実的に捉えるということではありません。

デッサンの学びは、目の前のモチーフに対して、「あなたが何を感じ取ったのか」――これを観察する力を第一に鍛える訓練である。ここでいうあなたとは、デザイナーであり、経営者であり、そのデザイン作業を行おうとしているすべての観察者だ。

この自分しか感じ取ることができなかった一次情報が、デザインの骨格となります。そして、その自分しか感じ取ることができない何かを感じて見つけられるようになるため、審美眼を鍛え続けるのが、デッサンということになります。

実際にデッサンをして自分の目の前に立ち現れていることを目にして、自分が観察して感じ取った美しさはこんなアウトプットで良いのか?を絶えず確認しながら、ギャップがあれば、埋めていくアクションを繰り返していくのです。

ギャップを埋める行為を繰り返していくことで、審美眼が鍛えられていきます。デッサンにより観察眼と審美眼を鍛える訓練を繰り返すことで、ものごとと向き合う精度を上げることが可能になります。

デザインは常に人に寄り添うヒューマンセンタードなものであるといわれるが、人の心情の機微から、政治や経済といった概念まで、ありとあらゆるものを観察し、そのデザイナーなりの解を見つけ出す。

そして、観察の対象者を人に向けることで同じようにインサイトを見つけ、そして活かすアクションを作り上げていくことが可能になります。

N=1を大切に!?

大切なのは、N=1を見つめることです。ポストモダンマーケティングは、マスマーケティングから逆走をします。ひとりひとりの解像度の高いニュアンスを見出し、そこからインサイトを見つけ出すアプローチがキーです。

ただ、インサイトは繰り返しますが、無意識です。言葉に簡単にできるようではインサイトではありません。

インサイトは、マスマーケティングに重きを置くのではなく、一個人の無意識を発掘する。つまり、インサイトブーストは、周囲と比較するのではなく、自分たちが本当は何がしたいのか、自分たち「らしさ」とはなんなのかを大切にしている。

N=1の観察を通じて、個人を突き動かす可能性のある衝動を見つけていくことが、インサイトのヒントがあります。まず、自分の内実を見つけていくことが、その先のインサイト発掘につながっていくため非常に効果があります。

衝動については、こちらの1冊「【自分を「型」から解放するには!?】人生のレールを外れる衝動のみつけかた|谷川嘉浩」もぜひご覧ください。

まとめ

  • インサイトはまだ気づかれていない!?――まだ言語化できていない気持ちを見つけに行きましょう。
  • 観察がキーである!?――観察とアウトプットを繰り返し、着眼点とのギャップを埋めていきましょう。
  • N=1を大切に!?――感情や行動の解像度が大切です。
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