- 事業の成功と成長には何がもっとも大切でしょうか!?
- 実は、もっとも大切なのは、何をするかよりも誰とするかであると、言われます。
- なぜなら、人の「可能性」は計り知れないからです。
- 本書は、そんな人を見立てる技術に関する1冊です。
- 本書を通じて、人を見立て、ひいては自分を見立てる着眼点を得られます。
人は、4つの階層でできている!?
誰とやるかが大切です。何をやるかではなく、最後は誰とやるか。それが、成否を分けると言っても過言ではありません。本書の中でも繰り返しこの点については触れられます。
また、過去の投稿「【学校で教えてくれないWHOの話とは!?】WHO NOT HOW 「どうやるか」ではなく「誰とやるか」|ダン・サリヴァン,ベンジャミン・ハーディ,森由美子」でも、具体的に人の力、チームの力について、触れられていました。
人を見る目、人を選ぶ技術を磨くことは、自分の人生を軽やかにしていくこと他ならない。
人を見浮くことは自分を見抜くこと
人を見る目は、一見、暗黙知のようですが、それを、形式知化しようと挑戦したのが本書です。人を見る目の着眼点を得られれば、自分自身を見る目を養うということに繋がります。
「私はこれが苦手です」
「私はこれが得意です」
「ぼくはこういう良い傾向があります」
「私にはこういう悪い傾向があります」
こうして、自分を客観視することができれば、自分自身に対する期待値、そして、人が自分に対して持つ期待値をジャストなところで設定して、よりよい関係性を育むヒントにすることができるのです。
人は、4つのファクターでできています。これを知ることが見る目を養う第一歩です。
地上1階――経験・知識・スキル
とても見やすく、わかりやすく、そして変わりやすいものです。多くの場合、この点だけで、その人をわかった気になっているケースが多くあります。
地下1階――コンピテンシー
コンピテンシーとは、どんなシチュエーションでその人がどういうアクションをとりがちか?という行動のパターンとして現れます。その人を時間軸で観察しないと発見しづらい特徴です。
地下2階――ポテンシャル
ポテンシャルとは、伸びしろです。ポテンシャル・モデルの4つのファクターで定義できます。それぞれのファクターに照らした具体的なエピソードを引き出すことがポイントです。
地下3階――ソース・オブ・エナジー
最下層は、その人の「使命感」であり、「劣等感」が生み出す、力の源泉です。
人の「地下」を深掘りする!?
表面に出てきている誰もがわかるポイントではなく、その人(自分)の地下、つまり、コンピテンシー、ポテンシャル、ソース・オブ・エナジーに触れる、掘削の旅に出ましょう。
コンピテンシーを知れば、「将来の行動を予測」することができます。なぜなら、コンピテンシーはパターン化された行動だからです。
3つの行動特性を押さえます。
1)成果志向――ノルマを課せられたときに、やり遂げる!という志向性のことです。低レベルの人は、「難しければやめて」しまいます。中レベルの人は、「絶対にやり遂げ、目標はなんとか達成」します。高レベルの人は、「目標は超えることが当たり前で、そのための動きが早期から逆算でき、目標超えの成果を繰り返してナンボ」と考えます。
2)戦略志向――低レベルの人は、自部門の戦略を立てることができる~高レベルの人は、産業全体の戦略を立てることができると、領域が拡張できます。
3)変革志向――ものごとを変えていく、変革する志向性のことです。現状維持ではなく、変革のための行動や作用を積極的する志向性のことです。
こちらの投稿「【行動・感性・創発の好循環がキー!?】田坂広志「21世紀の知」を語る|田坂広志」のカール・マルクスの言葉を思い出します。
「哲学者たちは、これまで世界を様々に解釈してきたにすぎない。
経済学者カール・マルクス
しかし、大切なことは、それを変革することである」
(The philosophers have only interpreted the world in various ways,
The point however is to change it.)
思考するだけではなく、明確な行動をもって、自分を、組織を、社会に変革をもたらすのが、本当の仕事ではないか、ともとらえられます。
コンピテンシーを見抜くには、具体的な「エピソード」をヒアリングしてみましょう。上記の3つの志向性のどこに触れるエピソードなのかを、インタビュワーは意識してみます。
「ちょっとそこ、もう少し教えていただけますか?」
「具体的にはどうやったのですか?」
という、カット・インのヒアリング手法を多用しながら、深掘りを続けてみましょう。
地下1階の旅が終える頃、地下2階の地層が見え始めてきます。地下1階がコンピテンシー、つまりこれからの行動予測が可能なレイヤーだったとしたら、これから見えてくる地下2階は、その人のポテンシャルです。
これを世の中では「伸びしろ」と呼ぶ。
ミステリアスな地下2階 人間のポテンシャル
過去ばかりにとらわれるのではなく、未来に向けてどのような可能性があるのかを見極める視点です。これまで、人類の人選びの歴史は以下のような系譜を辿ってきました。
- 身体的能力評価の時代
↓ - IQ評価の時代
↓ - コンピテンシーとEQの時代
↓ - ポテンシャル・モデルの時代(現在)
ポテンシャル・モデルとは、次の4つのファクターで因数分解することができます。
1)好奇心(吸収・更新)――新しい経験、知識、率直なフィードバックを求めるエネルギーの強さと、学習と変化への開放性がこれにあたります。吸収だけではなく、更新もファクターにあるのがポイントです。必要があれば、古い考え方を捨てられることも好奇心であるのです。
2)洞察力(集める・繋げる)――新しい可能性を示唆する情報を収集し、理解するエネルギーの強さです。学校教育における秀才は、集める力だけが強く、繋げる力が弱い人が多く見られます。洞察力のエネルギーはいわゆる地頭の良さと近似する概念です。
集める対象は、次の5つです。
①「データ」から始まり
②意味を持つ「情報」
③つながりを占める「知識」
④離れたものの共通項を見出す「洞察」
⑤そして、その共通項をつなげる筋を見出す「叡智」
3)共鳴力(結ぶ・響く)――感情と論理を使って、自身の想いや説得力のあるビジョンを伝えて、人々とつながろうとするエネルギーの強さです。
4)胆力(腹決め・律する)――大きなチャレンジがある課題を好み、困難な目標に向かって戦うことに強いエネルギーを得て、逆境から素早く立ち直る力です。
見るべきは、能力ではなく「エネルギー」です。すでに発揮されている能力ではなく、これから期待できる「エネルギー」がどれだけ内在されているのかを見極めましょう。
ここで言う「エネルギー」とは、本人からすると無意識で、時に無自覚に、自然と沸き起こる「熱量」のようなものだという理解がポイントとなる。
ポテンシャル・モデルを因数分解する
そして、私たちは、最下層の「ソース・オブ・エナジー」へとたどり着きます。人を根本から動かす力とは何か・・それは、「使命感」と「劣等感」として分類することができます。
使命感は、ちょっとやそっとのことでは揺るがない強固な精神性を、その人に授ける働きがあります。また、劣等感は、人の成長という観点において、使命感と同じように、その人の人生の発展にプラスに働きます。それぞれが互いに陰陽の関係にあります。
「使命感」と「劣等感」の陰陽関係については、スター・ウォーズを鑑賞することをおすすめします。
人を知り、人を愛す!?
人を「見抜く」ことと、「見立てる」ことは全く異なるアプローチです。
見抜く | 見立てる | |
期待役割 | ・発見者 | ・発明者 |
マインド | ・悲観寄りのニュートラル | ・楽観寄りのニュートラル |
脳モード | ・観察モード | ・想像モード |
発動プロセス | ・データ収集と解析 | ・メタ認知とマッチング |
人間という多言システムを理解するには、双方のアプローチを駆使することが、遠回りな近道になります。本質的な部分を見極めるためには、見抜くだけではなく、見立てる視点も導入してみましょう。「未来洞察」に少し近いかもしれません。
人に向き合うことは、決して裁くことではありません。わかったつもりに常になれないのが人ではないでしょうか。多元的な複雑なシステムを完全に理解するのは不可能で、それは他者に対してもいえますが、実は自分自身に対しても言えるかもしれません。完全に理解できない、だからこそ、繋がり続ける。繋がり続けるということは、分からないものを分けないまま、未来に行くということかもしれません。
マザー・テレサの言葉に、次のようなものがある。
「人を決めつけること」がない世界を目指して
If you judge people, you have no time to love them.
直訳すると、「人を裁いていると、人を愛することができなくなる」であるが、ぼくは少し違う意味をこの言葉から感じ取っている。
人は複雑系、常に移ろうから、繋がりながら、共に変化し続けましょう。
まとめ
- 人は、4つの階層でできている!?――4つの階層を意識して、人(自分も)深掘りしましょう。
- 人の「地下」を深掘りする!?――目に見えない部分を視点別に見出しましょう。
- 人を知り、人を愛す!?――人は複雑なモデルだと認識して、繋がり続けましょう。