- どうしたら既存事業を守りながら、次の成長領域を見つけられるでしょうか!?
- 実は、そんな両利きの経営は、組織によってもたらされるかもしれません。
- なぜなら、事業を守り、創るのは、人だからです。
- 本書は、両利きの経営の組織論です。
- 本書を通じて、事業の永続性を担保する組織設計について考えを巡らせます。
両利きの経営の最大のハードルは!?
いま、100年に1度の経営環境の大変革期です。デジタル技術をコアとした新興勢力による創造的破壊(ディスラプション)が進行する一方で、成熟した大企業の変化への適応は、なかなか進みません。
成熟した大企業では、なかなか新しい取り組みにトライできません。慣性の法則が働くからです。これまでと同じことを、確実にこなしていくことに特化した組織は、柔軟性を欠きがちです。
経営陣は、下が主体的に動かないと嘆き、中堅・若手は、トップが判断しないと何も始められないとぼやきす。
成熟企業であっても、既存事業の守りだけではなく、新規事業や新領域の開拓を両立していく必要があります。これを問いたのが両利きの経営です。こちらの投稿「両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く |チャールズ・A・オライリー,マイケル・L・タッシュマン」もぜひご一読ください。
今回取り上げる本書『両利きの組織をつくる――大企業病を打破する「攻めと守りの経営」』は、組織論にフォーカスし、両利きの経営を実践するためのポイントを説いた1冊です。
成熟企業にとって大切なことは、マーケティングでも、事業アイデアでもありません。実は大切なのは組織カルチャーなのです。なぜなら、それが最も高いハードルであり、そして、醸成さえかなえば、両利き実行の強力な力となりうるからです。
組織カルチャーの中に「(既存事業を)深掘りする能力」と「(新規事業を)探索する能力」を内包する必要があります。
相矛盾する能力を同時に追求することのできる組織能力の獲得を目指すものだ。
はじめに――成就tくした日本企業が生き残るための最重要課題
本書では、AGCの既存・新規事業に関する事例をふんだんに取り入れながら、具体的なエビデンスをもって、両利きの組織構築のノウハウが語られています。具体的なAGCの取り組みについては、次回の投稿で詳しく見ていきたいと思います。今回の投稿では、概論として、組織カルチャーの作り方と経営者の役割を中心に見ていきましょう。
組織カルチャーがキー!?
組織カルチャーとは、ある組織内で想定されている(期待されている)「仕事のやり方」であり、「仕事に対する姿勢」のことである。
組織カルチャーをマネジメントするとは?
想定される、期待される仕事のやり方とは、バリューの提供方法であり、また、個人と組織の信頼関係であると考えられます。
組織カルチャーは、組織に埋め込まれていて、変えられないものではなく、経営者がその気になれば変えることは可能です。両利きの経営で不可欠になるのは、カルチャー・マネジメントです。
既存事業と探索事業の感情的なテンション(緊張関係)への対処、探索事業の分離と統合(融合)など、両利きの経営には、高度なバランス感覚が求められます。より良い緊張関係を、カルチャーの中にイングルードしていくことがポイントです。
AかBかという単純な白黒志向ではなく、「AもBも」追求する思考が必要になり、とくに経営者はそうした緊張関係を組織カルチャーに取り込むための、「器と決断力」が求められます。
両立の思考がとても重要なのです。こちらの投稿「【両立には「パーパス」が不可欠!?】両立思考|ウェンディ・スミス,マリアンヌ・ルイス」もぜひご覧ください。
両立的なマインドセットで、次のような意志表示と価値判断に基づき、組織カルチャーをアップデートします。
1)トップの意志表示が契機となって、
2)トップダウンとミドルアップの絶妙な組み合わせが生まれ、
3)トップの価値判断によって組織の進化が可能となります。
経営者の役割とは!?
これまでの慣れたやり方を捨てて、新しい仕事を探索することは、非常に難しいことです。成功するかわからないものごとに対して、探索を繰り返しモチベーションを維持し続けることが不可欠だからです。そのために大切なのは、適切な問いを自分の中に持つことです。
①新しく何を始める必要があるのか?
②そのために、何を諦める必要があるか?
③一方で、何は継続(強化)するのか?
一般的なコーチング(問い)のメソッドでは、①と②が重視されることが多いです。しかし、実は大切になってくるのは、③も含んだ全体です。守るべきものをハッキリとさせ、抵抗の源である喪失感を緩和することができるのです。
この点については、エフェクチュエーションの発想にとても近いと考えられます。エフェクチュエーションは、革新的事業をゼロイチから創造した経営者の行動をまとめたもので、そのポイントは、今ある資源を有効活用することにあります。不足を補うのではなく、今あるものを最大限に活かすスタンスで、リソースを点検するのです。
具体的には、こちらの投稿「【「手中の鳥」を探せ!?】エフェクチュエーション|吉田満梨,中村龍太」を御覧いただきたいのですが、エフェクチュエーションのアプローチも、上記の①~③の問いかけも、人の心理にふれるところがあるのかもしれません。
できないことではなく、できていることにフォーカスし、新しいものごとに挑戦するマインドを維持することが大切なのです。
探索において、経営者の役割は重大です。具体的には、次のようなアクションと考えを持ち、組織に対して意志の発信と実行を促していくことが求められます。
1.外部環境の変化の兆しを感じ取ったトップは、組織変革の意志を発信する。
2.トップはシグナルに反応するミドル・若手を見出し、彼らの取り組みを認知・支援する。
3.トップは取り組みの中から勝ちパターンを見出し、今後の方向性を打ち出す。
(経営視点で意味づける)
4.トップは様々に行われる取り組みを同じ方向に束ねる。
5.トップは必要な場面で価値判断をし、変革を定着させる。
変革はトップダウンとボトムアップがミートするところで起こる
⑤組織開発とは、経営に対する信頼の醸成である。
(Change happens when top down meets bottom up.)
まとめ
- 両利きの経営の最大のハードルは!?――組織カルチャーのマネジメントです。
- 組織カルチャーがキー!?――両利き経営のハードルであり、ドライバーです。
- 経営者の役割とは!?――シグナルを発信し、組織をモチベートし、パターンを見出しましょう。