- これからの時代にふさわしい事業の作り方、進め方はどこにあるでしょうか!?
- 今ある「手持ち」を再評価することが、ポイントです。
- なぜなら、従来型のとあみを張るマーケティングだけは、社会の変化が激しいため不足するからです。
- 本書は、手持ち資源を上手に活用しながら、新たな取組を拡大していくための手法論に関する1冊です。
- 本書を通じて、新たな1歩の踏み出し方に視点を得ることができるでしょう。
エフェクチュエーションとは!?
熟達した起業家には、最初から市場機会や明確な目的が見えなくとも、彼がすでに持っている「手持ちの手段(資源)」を活用することで、「何ができるか」というアイデアを発想する、という意思決定のパターンが見られました。
エフェクチュエーションの5つの原則
エフェクチュエーションは5つの原則で、ものごとをスタートさせていきます。
- 目的手動ではなく、手段手動で何ができるかを発想します。
- アイデアを実行する段階では、期待できるリターンの大きさではなく、
許容できるかという基準でコミットメントが行われます。 - コミットメントを提供してくれる可能性のある、
あらゆるステークホルダーとパートナーシップを構築します。 - 予期せずしてパートナーからもたらされた手段や目的を受け入れて、
それを積極的に活用するようにします。 - 自分自身がコントロールできる部分にフォーカスします。
「何ができるのか」を問いながら、まずはやってみるスタンスを大切にするのがエフェクチュエーションです。
これまで主流であったマーケティング手法を「売り込み(Selling)」として、エフェクチュエーションを、「問いかけ(Asking)」とした場合に下記のような対比構造を見いだすことができます。
Causation | Effectuation |
---|---|
1.ビジョンの明確化 | 1.手持ちの手段&許容可能な損失で できることの明確化 |
2.実現に必要な資源の明確化 | 2.未来を共創してくれる人々の特定 |
3.資源を提供できる人々の特定 | 3.問いかけ |
4.売り込み | 4.新たな資源 or ビジョンの獲得 |
5.必要な資源の獲得 or その失敗 | →「何ができるか」の再定義 |
Causationは、
- 成功するか失敗するか
- 1回きりの関係
- 相手を積極的に説明し売り込み、あなたを買って貰う必要がある
のに対し、
Effectuationは、
- 期待した資源が得られない=失敗ではない
- 繰り返し報恩し、別のコミットメントの提供を問いかけることができる
- より多く話を聞くことで、相手が提供できる資源やビジョンについて理解する必要がある
という違いを見出します。
なぜ、手持ちの資源か!?
起業家が新たな事業に着手した段階では、市場も企業もいまだ存在しません。未来の予測可能性はほぼゼロに等しいため、必然的にコントロール重視の戦略を選択することになります。
とくに、新しい取り組みでは、潤沢な資源の確保は、最初からは難しいと思われます。
エフェクチュエーションの論理は、こうした不確実は新しいチャレンジに取り組む際に直面する問題に対して、大きく見方を転換してくれるものだと考えています。
「できない」理由に対する見方を変える
手持ちの資源をもとにアイデアを考えて、可能な限り初めてみることが大切です。その上で、人を巻き込みながら、フィードバックを得て、それらのすべてを資源として取り組みながら、仲間を増やしていきます。
大切なポイントは、すべてを計画するのではなく、偶発性を味方にすることです。偶然をポジティブに解釈して、ものごとを前に進める力として活用しましょう。
偶発性に備えることが大切です。この点については、こちらの投稿「【幸運は引き寄せられる!?】その幸運は偶然ではないんです!――夢の仕事をつかむ心の練習問題|J・D・クランボルツ,A・S・レヴィン」をぜひご覧ください。
エフェクチュエーションは、何をすればわからないという目的が曖昧な状況でも、ものごとを前に進めることが可能です。たとえ失敗を躊躇してしまうことがあっても、リスクの許容度を前提とするため、最初に1歩が踏み出しやすくなります。また、たとえ資源が限られていても、偶然の出会いを味方にしながら、リソースを補給しつつ、ものごとを成長させる力に変えていくこともできます。また、自分がコントロールできることにフォーカスするため、ムリムダがなく継続性が担保されます。
大切なのは、自分ができることに焦点を当てて、まず初めて、そして、フィードバックを大切に進み続けることです。
ウォークマンもエフェクチュエーション!?
実はSONYのウォークマンも、エフェクチュエーション的産物であったと言います。
1950年国産のテープレコーダー「G型」を初めて開発した東京通信工業(SONYの前身)は、60年代からフィリップス社のコンパクトカセット規格のテープレコーダーの製造・販売を行っていました。ウォークマンは78年からすでに販売していたオータブルモノラルテープレコーダー「プレスマン」から、スピーカーと録音機能を省き、ステレオ再生専用ヘッドを搭載し、発売されたものなのです。
当初は、製品化を想定していたわけではなく、当時の名誉会長となっていた井深大さんが、出張中の旅客機内できれいな音で音楽を聴きたいというご要望のもと、「プレスマン」に改良が加えられたのです。
急ごしらえの改造「プレスマン」を大変気に入った井深大さんは、当時の会長盛田昭夫さんに、商品の可能性を伝え、商品化がスタートしたといいます。
こうしたエピソードからは、ウォークマンにとっての事業機会は、すでにどこかに存在していた潜在ニーズを綿密な調査によって発見したものではなく、意図的に機会を探す行動が採られたわけでもないことがわかります。
創造される事業機会
大切なのは、機会は、井深大さんをはじめ、それに関わった人々が自分にとって有意味で勝ちがあると考えることを実行して、予期せぬ結果として作り出されたものだったのです。
世界を変えるアイデアは、あなたの中にあるのかもしれないということを強く見いだすことができます。そしてアイデアそれ自体よりも、それを形にして、他の人々からのコミットメントを得る行動が、より重要になります。
まとめ
- エフェクチュエーションとは!?――予測不能な世界で成果を見いだすための活動です。
- なぜ、手持ちの資源か!?――最初の1歩を踏み出すことが大切だからです。
- ウォークマンもエフェクチュエーション!?――内発的な意志と仲間の活動によるものでした。