- メタバースの本、たくさん出てて、どれ読んだら良いの!?って困っている人いませんか?
- 実は、この加藤直人さんの本は、そんな方にぴったりかもしれません。
- なぜなら、メタバースの市場チャンスを独自論点で切り取ってくれているだけでなく、俯瞰してバーチャル・リアリティ(バーチャリティ)の世界の可能性を俯瞰してくれています。
- 本書は、メタバースイベントプラットフォームで日本で最も先行する「cluster」の若き代表取締役加藤直人さんによる著作です。
- 本書を通じて、今世界で注目されているメタバース市場の可能性と日本の生き残り戦略を、知の統合を通して、俯瞰できるエキサイティングな機会を得ることができるでしょう。
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メタバースで広がる市場チャンスとは!?
「cluster」の若き経営者加藤直人さんも、メタバース市場を7つのレイヤーで説明します。この7つのレイヤーとは、ビーマブル(BEAMABLE)というライブゲームサービスプラットフォームの共同創設者でCEOのジョン・ラドフ氏が提唱したものです。
1)体験(Experience)
2)発見(Discovery)
3)クリエーター・エコノミー(Creator Economy)
4)空間コンピューティング(Spatial Computing)
5)非中央集権化(Decentralization)
6)インターフェース(Human Interface)
7)インフラ(Infrastructure)
この7分類は、過去の投稿「【100兆円市場にどう向き合う?】60分でわかる!メタバース超入門|武井勇樹」でも取り上げていますので、併せてご確認ください。
そして加藤直人さんは、ざっくりと7つを3つで俯瞰します。「体験(コンテンツ)」「デバイス(インターフェース)」「空間(プラットフォーム)」です。ただし、大切なのは、これらの市場カテゴリーごとに、どのような変化が起きてくるのか?その主たるプレイヤーは誰なのか?を把握することだと言います。
たとえば、体験においてみれば、ショッピング体験が、メタバースでの試着→リアルでの購入に移行し、さらに、メタバース完結型の体験に移行するだろうと予測します。また、これに準じて、旅行やスポーツ観戦、そして教育のあり方さえ、根本から変化していくだろうと言います。
産業革命からの200年間は、物理空間をヒトやモノが移動して価値を生み出してきた時代でした。一方、これからの200年は、データをコンピュータ上で動き、ヒトやモノの動きは必要最小限になると見ています。
モビリティの時代から、バーチャリティの時代へ。
ところで、バーチャルの捉え方を注意するべきだと、加藤直人さんは言います。バーチャルは、「仮想」と訳されますが、これは実態がないものとして捉えがちです。ではなくて、本当のバーチャルの意味は、「厳密には違うけれど、実質的には同じもの」というニュアンスがあるそうです。つまり、リアルとバーチャルの空間、世界、社会は、その現れこそ違うものの、実質的には同じ機能や役割のものとして、私たちの前にたち現れる時代が来るのです。
物理的束縛から解放されることで、「より実質的・本質的(=バーチャル)な価値を意識することができるようになった」ことこそ、今後200年にわたって人類にとって最も重要で、最も影響の大きい変化なのではないだろうか。
第3章 人類史にとってのメタバース
メタバースにおける第1次産業~第3次産業への成長過程とは?!
現実世界における第1次産業とは、自然界に働きかけて直接富を得る産業のことである。農業・林業・鉱業・漁業などがこれに該当する。われわれの世界を根本から形成する、なくてはならないものだ。
第5章 加速するあたらしい経済
メタバースに照らし合わせると、アバターはプリミティブ(根源的)な存在であり、われわれにとっての身体に他ならない。
自己を構築することが、原点にあると問いた非常にユニークで、示唆深い視点です。まずは、アバター産業が勃興する中で、そのカスタマイズ(加工)をする事業者が現れるのが第2次産業です。そして、第3次産業になると、メタバースは皆がクリエーターとなって、アバターはもとより、コンテンツや世界さえも作り出していく時代となると言います。
ここで、思い出したいのが、「ペティクラークの法則」です。
代表的著作《経済進歩の諸条件》(1940)においてクラークは,産業を第1次産業,第2次産業,第3次産業に区分し,経済発展に伴い一国の産業構造の比重が第1次産業より第2次産業へ,ついで第3次産業へ移るという経験法則を発見,〈ペティの法則〉(ペティ=クラークの法則ともいう)と名づけた。
ペティ=クラークの法則|コトバンク
いかに第3次産業への参加者が増加し、多様化するか?が、その経済主体の発展にかかわります。
ちなみに、過去の投稿「【私たちが知らない東京の真のポテンシャルとは!?】2030年「東京」未来予想図|市川宏雄,宮沢文彦」では、東京という経済圏について、このペティクラークの法則を照らしていますので、ぜひご覧ください。リアルな世界とバーチャリティを比較することで、バーチャリティ世界がどのように盛り上がってくるかを推察する参考になりそうです。
加藤直人さんは、「cluster」運営の企業の創業者ですが、最前線にいるかたならではのものごとの捉え方が秀逸です。たとえば、次のような見解は、現場でリアルな体験をしている方でないと気づかないものではないでしょうか。少し長い引用をします。
たとえばバーチャルライブでは、パフォーマンスが行われているステージ上だけでなく、観客自体が大事なコンテンツの一部だ。観客として参加しているあなたがコンテンツとなるべく努力する必要はない。コンテンツとなっていることを認識する必要すらない。アバターを着て、音楽に合わせて踊っているだけで、その全行動が自動的に発信され、それが自動的にコンテンツとなる。コンテンツの一部となることを拒否し、会場の片隅に移動してじっとしていても無駄だ。その行為自体が「会場の片隅に独りぽつんと立ってるやつがいる」という状況として自動的に発信され、コンテンツとなる。これがメタバースにおける情報発信のあり方だ。
第6章 メタバースの未来と日本
なぜこんなことになるかというと、ひとえにメタバースが身体性を有したリアルタイム体験だからである。身体がそこにあるから、存在するだけで情報が発信されるのだ。
存在こそが、コンテンツになる時代がメタバースだそうです。存在、つまり、「ありかた」さえ情報として取り扱われる時代において、いながらにして、収益を得られるモデルも個々人が実現する可能があるでしょう。
メタバース成長時代における、日本のストロングポイントとは!?
メタバース世界が成長する過程で、日本が発揮できる強みはどこにあるでしょうか?それを、加藤直人さんは、3つあげています。
1)ゲーム産業のスキルセットを転用できる
2)IP(知的財産権)の強さ
3)魂が偏在する日本特有のカルチャー
過去にもさまざまなメタバースに関する書籍を拝読してきました。1と2の視点は、いずれも共通しています。日本のポップカルチャーこそ資産に成りうる、その活用をしていくべきという論調はさまざまなところで語られています。
一方で、3つめの日本特有に根ざしたカルチャーに触れられているのは、本書が初めてではないでしょうか。ここが加藤直人さんの視点で非常にユニークなところだと感じます。まさに「知の統合」。感銘を受けました。メタバース世界がいくつも現れる中で、私たちは、それぞれの世界で生き方を見出す必要があります。でも、いくつもの生き方を使い分けられるはずの、文化を持っているのが日本文化だと言うのです。
これは、過去の投稿「【本当のあなたの「個性」はどこにある!?】私とは何か「個人」から「分人」へ|平野啓一郎」の分人や、「【日本文化をカミから、客観視する!】日本人の神|大野晋」のカミの捉え方にも触れるところです。なぜ、このように深い論点にまで行き着くかというと、やはり、それは世界の構築について私たちが向き合っているからと言って過言ではないのではないでしょうか。
本書は、メタバースの最前線で経営にあたる実業家が書いた、エキサイティングな内容となっています。ぜひ、ご一読をおすすめします。
まとめ
- メタバースで広がる市場チャンスとは!?――7つのレイヤーを3つのカテゴリーに大別すると、「体験(コンテンツ)」「デバイス(インターフェース)」「空間(プラットフォーム)」になります。
- メタバースにおける第1次産業~第3次産業への成長過程とは?!――アバター(人格)構築でスタートして、アバターの加工、そして、世界のクリエーターを巻き込みコンテンツ、世界の構築へと進みます。
- メタバース成長時代における、日本のストロングポイントとは!?――日本ならではの文化的背景と、そこから生まれたコンテンツです。
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