- ミッション、ビジョン、バリューが大切だ!と言われているけれど、結局その内実ってどんな感じ?って思っている方少なくないのでは!?
- 実は、これらをないがしろにしては、推進力を得られないかもしれませんよ!特に「ビジョン」が大切です。
- なぜなら、ビジョンのない経営とは、コンパスのない登山、あるいは、GPSのない航海なのです。
- 本書は、広告会社で多くの起業のビジョン策定を支援されてきた江上隆夫さんによる、ビジョンの大切さ、そして策定の方策を説いた充実の1冊です。
- この1冊で、組織や事業を前に進める原動力を得るための視点を十分に得られるでしょう。大変おすすめの1冊です。
ビジョンとは、だろうか!?
ビジョンなしには、会社の舵取りをすることは難しいと、思っていらっしゃる方は少なくないのではないでしょうか。すでに過去の延長線上の中で、最適化・効率化を行っているだけでは、やや厳しい時代になったからです。
「ビジョン」がないということは、地図を持たない登山であり、GPS(全地球測位システム)のない航海です。
はじめに
さらに、ビジョンは、どんな内容でもよいということではありません。著者である江上隆夫さんは、たとえば次のような起業のビジョンを、ビジョンにあらずと言います。(企業名を伏せますが、本書の中では明記されています)
**グループ経営ビジョン
**が築き上げてきた技術、品質、そして信頼は、いつも個人の熱い情熱から始まった。
飽くなき探究心を忘れずに、視野を広げ、一人ひとりが目的達成への強い意志と実行力を持ったプロとして今、行動する。
時代の先を読み、組織の力を高め、機動力を持った経営で、適正な利潤と持続的な成長を実現する。
人々の夢をかなえ、社会を変える商品・サービスを通して、お客様に安心とを笑顔を届け続ける。
今ある事業を、そしてこれから創り上げる新しい事業を、もっと大きな、世界に誇れる事業に育て、躍動感あふれる**グループを次の世代に引き継いで行く。
イノベーションへの新たなる挑戦
「実行」
ご覧になって、いかが思ったでしょうか。これは、日本を代表する企業の実際のビジョンです。
これらは、わかりやすく言うなら全社員に「心がまえ」を説いてるのです。こんな気持ちで仕事や事業に取り組んでいこうという「心がまえ」です。「心がまえ」としてなら、これでよいでしょう。しかし、ビジョンが、こうであってはならない。
次のビジョンを生み出せなかった**、**
ビジョンとは、主体的に世界を創造したいという情熱にあふれたビジョンなのです。生きていく、生き抜いていく大変さは承知しながらも、それを上回る情熱で、こうありたい!これを実現したい!という気持ちが滲み出すものなのです。
だから、恐怖の中にも希望とワクワクさが併存しているような、そんな、いい意味での覚悟と緊張感が必要です。
ビジョンは、選択的であることでもあります。私たちが目指す場所を規定するということは、目指さない場所を目指さないということでもあるからです。多くを捨てるのです。しかし、その覚悟にこそ、人は原動力を見出し、そして、信頼を見つけるのではないでしょうか。
ビジョンは、同時に「目的」であると説いたのが、こちらの書籍です。「【ビル・ゲイツ絶賛!】Microsoft Wordを開発した伝説のプログラマーが発見した「やりたいことの見つけ方」がすごい!|リチャード・ブロディ,坂元信介」目的とは、どこまでいっても達成のされないことであり、反対に、「目標」とは達成されるべきことです。この違いにも敏感になりましょう。
パタゴニアという企業があります。1990年代の経営危機の中で、自社のビジョンを見出し、その姿勢をもって世界的企業になりました。売上は全世界で800億円程度ではありますが、今、世界を代表するビジョナリー・カンパニーの1社であるといえます。
THE RESPONSIBLE COMPANY
Patagoniaの株主は地球である
彼らのビジョンを端的に表現した言葉がこれです。パタゴニアは、自社の製品とその顧客との関係活動すべてに対して、レスポンシブル、つまり地球環境への責任を掲げているのです。
大切なのは、だからといってパタゴニアは、完全なるレスポンシブル・カンパニーかというと、それは「未だ」なのです。でも、このことばは、パタゴニアが目指す先を示し、そして、従業員やステークホルダー全体に対して気づきを生み出す問いになっているということです。この思想を1990年代の世界的不況の中、自社の経営も苦しい中、希望の光として設定した覚悟を知ると、ある種の畏怖的な感慨を覚えます。
MVVを俯瞰する
江上隆夫さんは、MVVをこのように説きます。
- ビジョン Vision 未来像:自らが生み出しえる最高の公共的未来像
- ミッション Mission 使命:自らに課した達成すべき取り組み
- バリュー Value 価値基準:取り組みにおいて優先すべき価値基準
ビジョンとは、性質から見ると「多くの人に共有・共感される、未来への洞察を信念にまで高めた末に生まれた、自らが心から達成したいと願う、あるべき未来像」です。
ビジョンの性質・機能と定義
ビジョンがないということは、流れに対して傍観者になるということです。問題が起きてから対処する姿勢では、多くの人から共感や信頼を得ることは難しいのです。こんな時代だからこそ、先手であるべき・ありたい未来像を語り、そして、人々を喚起鼓舞する姿勢を提示したいものです。
未来が予測可能かと言う議論もあるかもしれません。まず重要なのは、意志は自由であることを知るのです。正解を求める姿勢ではなく、問いを投げかけ、自ら切り拓く覚悟を持ちましょう。
また、未来を個別要素で予測する態度ではなく、大きな潮流で見つめる姿勢を忘れないようにしましょう。
過去の投稿「【50年前のオムロンの未来予測がスゴイ!!】SINIC理論 過去半世紀を言い当て、来たる半世紀を予測するオムロンの未来学|中間真一」にあるように、大きな潮流とは見出すことができるものです。
ビジョンのヒントとなる4つのキーワードとは!?
ビジョンを策定(あるいは、正しくは発見といったほうが良いかもしれません)するのには、着眼点が重要です。世の中の潮流を読む着眼点です。
1)知性の外部化;記憶、認識、判断がAIに代替される世界観があります。
2)感覚と能力の拡張;人間の発明物は石器時代から現在まで、人間の身体機能の拡張で一貫していました。さらに、感覚と・能力の拡張が予測されます。
3)分散化;Web3のなかで、人と人が個別につながる世界観があります。中央集権的な「管理」ではなく、個別の繋がりによる「創造」が原動力になる日も近いです。
4)所有から共有へ;資産の共有により、さらに効率化された世界が実現します。さまざまなものが公共財、共有財化していくでしょう
これらの4つのキーワードは、ひょっとしたら一つのキーワードで括れるのではないかと私は思っています。それは「集合知」です。
4つのキーワードを一つに括ってみる
これらのテーマを俯瞰してどうお感じでしょうか。あなたならではの着眼点はどこにありますか。そのように、江上隆夫さんが説いていくれているようにも、わたしは、感じます。
まとめ
- ビジョンとは、なんだろうか!?――自らが生み出しえる最高の公共的未来像であり、人間の活動のあらゆる原動力となる意志です。
- MVVを俯瞰する――自らが生み出しえる最高の公共的未来像のビジョン、自らに課した達成すべき取り組みのミッション、取り組みにおいて優先すべき価値基準のバリューとして、連携させましょう。
- ビジョンのヒントとなる4つのキーワードとは!?――「知性の外部化」「感覚と能力の拡張」「分散化」「所有から共有へ」など、大きな潮流を知り、あなたのビジョンをアップデートしましょう。