【機械化・自動化・ワーキッシュアクトが鍵!?】未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる|リクルートワークス研究所

  • 激しい少子高齢化が解決されない中、どのような問題に私たちは直面するのでしょうか。
  • 実は、「労働供給制約社会」に私たちは向かっています。
  • なぜなら、人は何歳になっても労働力を消費しますが、加齢とともに労働供給者ではなくなっていくからです。
  • 本書は、リクルートワークス研究所による2040年社会の見立てです。
  • 本書を通じて、個人も組織も次の社会を生き抜くヒントを得られるでしょう。

労働供給制約社会のメカニズムとは!?

あまり言及されてこなかったのですが、社会の高齢化は著しい労働の需給ギャップ、需要過剰をもたらすと考えられます。人は何歳になっても労働力を消費するが、加齢とともに徐々に労働力の提供者ではなくなっていく・・という事実があります。

この単純な1つの事実が、世界で最も速いスピードで高齢化が進む日本の今後に向けて、大きな課題を提示している。

労働供給制約社会がくる

少子高齢化の中で、その問題の解像度を上げていくと、労働の受給のバランスが著しく崩れていく未来像がうかがえます。

労働供給制約社会において最も懸念されるのは、「生活維持サービス」です。

私たちの生活に大きなダメージを与える可能性が高いです。注文したものの配送、ゴミの処理、災害からの復旧、
道路の除雪、保育サービス、介護サービス……。私たちが日頃恩恵を受けているあらゆる「生活維持サービス」は、すべてかけがえのない人々の労働によって提供されています。

世界は非連続な変化の時代に突入している。ただし、日本が労働供給制約社会になることはほぼ確実な未来である。

労働供給制約社会がくる

働く未来とは!?

次のような問題点が発生してしまう可能性があります。

  • 必要なサービスの水準を低下させざるを得なくなる(人手が足りないために訪問介護が受けられない、除雪サービスが提供できず雪の事故が多発、整備が行き届かず道路がボロボロになっていく……)。
  • 必要な人手が足りないために、サービスが消滅していく(地場産業は後継者がおらず消滅、警察・消防署の維持が困難に……)。
  • 生活維持サービスを必要に応じて享受できなくなるため、ホワイトカラーも含めて社会のすべての構成員が生活にいっぱいいっぱいとなり、「仕事どころではなくなっていく」。

社会全体の経済活動の停滞・縮小が長期的に継続するとともに、生活を営むうえで必須のサービスすら維持できず生活水準も低下してしまう可能性があります。

また、生活維持サービスに現役の労働力を回さざるを得ないために、先端分野に対する人材供給が後回しになり経済活動が一層停滞するという悪循環が起こる・・最悪のシナリオが想定されます。

2040年には1100万人の供給不足

2040年には1100万人の供給不足

1.2030年に341万人余、2040年に1100万人余の労働供給が不足します。
2040年の供給不足の規模は、およそ現在の近畿地方の就業者数が丸ごと消滅する規模(近畿地方の就業者数は2022年7~9月期平均で1104万人)です。

2.労働供給は今後加速度的に減少していきます。
社会における労働の供給量(担い手の数)は、今後数年の踊り場を経て2027年頃から急激に減少する局面に入ります。2022年に約6587万人であった労働供給量は、現役世代人口の急減に伴って、2030年には約6337万人、2040年には5767万人へと減少していきます。

3.労働需要はほぼ横ばいになります。
2042年が高齢化のピークとなるため、労働需要は底堅く横ばいになってしまいます。

具体的には、次に上げられるような市場において受給バランスの拡大が懸念されます。

  • 1_輸送・機械運転・運搬:自動車運転従事者、配達員、倉庫作業従事者、鉄道運転従事者等
  • 2_建設:建設・土木作業従事者、電気工事従事者等
  • 3_生産工程:製品製造・加工処理従事者、機械組立従事者、機械整備・修理従事者等
  • 4_商品販売:小売店主・店長、販売店員、商品訪問・移動販売従事者等
  • 5_介護サービス:介護職員、訪問介護従事者
  • 6_接客給仕・飲食物調理:飲食物調理従事者、接客・給仕職業従事者
  • 7_保健医療専門職:医師、歯科医師、看護師、薬剤師、保健師、助産師、臨床検査技師等
  • 8_事務、技術者、専門職:事務従事者、技術者(機械技術、ソフトウェア等)、教員、専門職業従事者等

労働供給制約社会の解決視点とは!?

ポイント1)徹底的な機械化・自動化
自動化が起きると、働き方も変わります。自動化の推進は現代人を苦しめている長時間労働から人を解放することにつながります。自動化により人が担うタスクが減少していくことで、従来10時間かかっていた仕事が8時間ですむようになるかもしれません。これまで長時間の仕事を強いられていた人も就業時間内に仕事を切り上げることができるようになり、労働収入を損なわずに短時間労働への移行を望む人はその願いが叶えられる環境が実現します。

労働供給制約のもと、いかに持続可能な社会を作るか。試行錯誤が必要ななか、我々が特に注目する解決策を提案する。まずは「徹底的な機械化・自動化」だ。

徹底的な機械化・自動化

ポイント2)ワーキッシュアクトという選択肢
本業の労働・仕事以外で何らかの報酬を得るために誰かの何かを担う性質がある活動のことを「ワーキッシュアクト」(Workish act)と名づけました。

Workish actは、2つの言葉で表現されます。
 *Work-ish:何か社会に対して機能・作用をしているっぽい
 *act:(本業の仕事以外の)様々な活動

すでに、本レポートによると、現在、25.6%の人が実施しているといいます。

ワーキッシュアクトは次のようなポイントがあります。

  • すべての参加者が崇高な社会理念や意識を持って実施しているわけではないという点
  • ワーキッシュアクトに対して支払われる経済的報酬も様々であるという点
  • これまでは「慈善活動」や「ボランティア」「コミュニティ活動」「副業」「趣味」、はたまた「娯楽」などと呼ばれてきた活動のうち、結果として誰かの困りごとを助けているものの集合体である点
  • 何らかのワーキッシュアクトを実施している人は回答者のうち25.6%、これは約1966万人の規模である点

重要なのは、ただ結果として誰かの何かをしてほしいという「労働の需要を満たしていること」です。

その際起こるのは、「労働」や「仕事」が今のイメージから大きく変容することです。「労働や仕事ではない部分」が変わることで、人は労働や仕事に何を求めるようになるでしょう。労働供給制約社会の必要性は、人の働き方を新たに創造する潜在性を秘めています。

こうしたワーキッシュアクトが「結果として誰かの労働需要を満たしている」性質があることは、自分のために楽しみながらでも担い手になれる潜在性を示唆し、未来の社会が豊かに持続的な社会となるための重要なパーツとなるでしょう。ワーキッシュアクトのWorkishとは「何か“役に立っている”っぽい」という意味です

ワーキッシュなチーム、ワーキッシュな機械、ワーキッシュな遊び・・・。

2040年の日本をこうしたものに溢れている社会にできるかもしれません。こうした活動が広がった後、起こるのは、「仕事」や「労働」が今のイメージから大きく変容することです。楽しく担い手になれる、豊かに社会の役に立てるのであれば、働くこともまた豊かな意味を持つことができる可能性は十分あります。

労働供給制約社会が必要とする解決策は、人間は何のために働くのかという問いに、たくさんの答えを用意するようになります。

働き方あるいは、組織のあり方については、こちらの投稿「【いかに長期的に豊かな経営を目指せるか!?】経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営|中神康議」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 労働供給制約社会のメカニズムとは!?――少子高齢化によって労働力の需給ギャップが起きます。
  • 働く未来とは!?――労働需要格差によって、生活維持サービスの提供が困難な社会になります。
  • 労働供給制約社会の解決視点とは!?――徹底的な機械化・自動化・ワーキッシュアクトなどがポイントです。
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