- どうしたら、これからの社会を見通し、現在の課題をあぶり出すことができるでしょうか。
- 実は、4つの波で世界の変化をとらえることがポイントかも。
- なぜなら、人間社会は、今、4つ目の革命の中にあります。
- 本書は、4つの波で社会を捉えながら、日本の課題を見渡す1冊です。
- 本書を通じて、時系列で世界を俯瞰しながら、取り残された日本の像を際立たせることができます。
4つの波とは!?
大前研一さんが80年代から親交のあるアルビン・トフラーさんが、第3の波として世界を描写しました。それをまとめたのが、『第三の波』です。本書では、第1の波を「農業革命」、第2の波を「産業革命」で工業化社会になってことをとらえ、そして、次に来る第3の波として「情報革命」を予言しました。1980年代にすでに、情報化の中で、産業や人間の暮らしが大きく変わることが予想されていました。インターネットが普及する20年以上も前に、IT社会の到来を告げた、それこそ革命的な1冊でありました。
そして、今回大前研一さんは、21世紀の時代において新しい波として第4の「サイバー社会」の到来を予期します。基本はIT社会(情報革命)の延長線上ではありますが、全てがスマホベースになり、AIが実用化され、さらに、無から有を生むアイデアを中心とした経済圏が主役になる社会としています。
大テーマは「21世紀の新しい経済学」である。なえz今、日本経済はうまくいかないのか。世界はどういう経済に入ろうとしているのか。
わが友アルビン・トフラーの「慧眼」
現在、見えてきた新たな社会像を見つめていくと、現代の日本社会が抱える課題が見えてきます。
日本の問題点とは!?
実は、日本社会や産業は、いまだ第2の波のにとどまっていることが指摘されています。
第2の波を下支えしたのは、次の6つのアクションでした。
①規格化──製品や部品、作業工程、配送ルート、業務や管理などを統一すること。
②専門化──時間と労力の節約のために、工程が分業化され、作業の専門化が進む。
③同時化──一部の作業の遅延により工程全体が遅れることがないよう時間厳守に。
④集中化──効率重視のため、エネルギーや人口、労働、教育、企業を集中させる。
⑤極大化──より大きく、より多く、より長く生産することで高収益と高成長を実現。
⑥中央集権化──中央に情報・命令を集約する統治機構によって権力を掌握し、高能率でマネジメントする。
工場などでの大量生産と市場での大量消費を可能にして、工業化社会=第2の波の全盛期の中で、日本は経済成長を果たしました。
この6つの原則に縛られる形で、現在の日本は、変革をすることなくあえいでいます。日本が第3の波に乗れないのは、こうした原則のままに企業運営を行う仕組みを捨てきれないことにあります。
たとえば、デスクワーカーを中心とした管理体制を構築しており、また、終身雇用などの制度が相まって、なかなか人を抜本的に減らして、業務のカイゼンを図ることが困難であることなどがあげられます。業務の自動化を行えるツールが多く登場していても、これを活用して余剰人員をつくったところで、どこにあてがえばいいのかわからない・・・従業員側も、専門的な業務進行に特化したスキルセットを磨いてしまっているので、新しい仕事をしようと言われても戸惑いしかない・・・というのが現実です。
こうした現実がある限り、いくら生産性向上が課題だといっても、それは言葉だけになってしまうのです。
また、既得権益を守るように張り巡らされているかのように見えてしまう規制についても、鋭い視点が必要です。
「第4の波」のいるぐちに立つためには、一時期の中国のように、新事業にほとんど規制がかかwらない環境を整備する必要があります。
「第4の波」における雇用の未来
インドは今、規制がないんです。今後出てくるかもしれませんが、今はないから、あのように栄えているわけです。
既存の構造を頑なに守るのではなく、適切なタイミングで、社会の仕組みをポジティブに変えていく舵取りが必要になります。
もしかしたらそんなときには、抽象と具体を行き来しながら、法規制の特徴を客観視する視点というのも大切なのかも知れません。抽象と具体の行き来については、こちらの1冊「【企業は“ストック”!?】フローとストック 世界の先が読める「思考」と「知識」の法則|細谷功」もぜひご覧ください。
波を読む!?
これまで社会や会社の強固なしくみの中で、学ばなくても済んでいた私たち、一人ひとりの社会の構成員についても変革が期待されています。先の事例のようにすでに人が行わなくても良い仕事がまだまだ会社の中には内在しています。ブルシット・ジョブとまではいかないものの、意味を疑いたくなるような仕事に貴重な時間を使っていることに安住してはならないのです。
ちなみにブルシット・ジョブについてはこちらの1冊「【あなたは、レンガを積んでいるか?それとも聖堂を建てているか?】ブルシット・ジョブと現代思想|大澤真幸,千葉雅也」も大変刺激的です。おすすめです。
これからの社会では、新しい知識を習得し、これまでの自らが作ってきた常識的なものを棚卸しするアンラーニングを積極的に取り入れることが大切です。さらに、こうした機会は、人生の中でなんどでも訪れるものになるでしょう。
また、大前研一さんは、第4の波である「サイバー社会」において、特に重要なのは、「考える教育」であると説きます。すなわち、答えは他人に教えられて覚えるものではなく、自ら考えて見つけるものであるということを知り、そのために、問題から発見して取り組む姿勢を持つということです。
こうした根本的な人間の考える力を幼少期から養っていくことです。そのうえで、個性を活かして社会と積極的に関わっていくことが可能な、人材をみなで育むことが大切です。
実は、日本の文化を見ていくと、非常に豊かな環境が花開いていることに気づきます。そしてそれらはすべて「学習指導要領」の外側にあります。スポーツ、芸術、ゲーム、漫画、アニメ、あるいは、外食産業などなど、日本が世界に誇れる分野は非常に多岐にわたります。そして、これらの分野は一朝一夕には、構築することができないのも特徴です。
というのも、これらを熟達するには、優れた人のもとに弟子入りをして伝統的な見習いを経ていくことが大切だからです。コンピューターは、標準化することに長けていますが、これらのカルチャーには、創造性「0から1を生む」視点が欠かせません。こうした充実さをいかに育て、そして触れていくかもキーになるでしょう。
「波」をいち早く捉えた者が勝つ
日本が取るべき選択肢
中長期的な波を事前に捉えながら、自らの舵取りを積極的に行っていくことで、よりよい社会を作るアクションを共にする仲間を見つけながら、充実感と幸福が感じられる人生を目指したいものです。
まとめ
- 4つの波とは!?――社会の革命に照らして、農業・産業・情報そして、サイバーの波を指します。
- 日本の問題点とは!?――いまだ、第2の波の遺産を引きずっていることです。
- 波を読む!?――波を読むことで中長期的な視点に立ち、身の振り方を見極められます。