【遊びとルールがキー!?】未来のイノベーターはどう育つのか――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの|トニー・ワグナー,藤原朝子

未来のイノベーターはどう育つのか――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの
  • 社会変革を進めるイノベーター育てることはできるのでしょうか!?
  • 実は、幼児期の教育にヒントがあるかも知れません。
  • なぜなら、一生を決める重要なスキルセット・マインドセットが培われる時期だからです。
  • 本書は、イノベーターという切り口で、子どもの可能性を見つめる1冊です。
  • 本書を通じて、何が人の創造性を開花させるのかヒントを得られます。

イノベーターとは!?

どのような人がイノベーターと呼ばれる人でしょうか。まず、考えられるのが、創造性の高い人です。これまでにないような切り口で社会の問題を指摘し、それを解決するための独自のソリューションを開発できる人です。

さらに、それらを達成するためには、チームが必要です。つまりリーダーシップを発揮して、周囲を巻き込みフォロワーからの信頼を集めることです。人からリードしてもらうのではなく、自分も人もリードできるビジョナリーであることが、イノベーターに欠かせないもうひとつの素質です。

イノベーターは常に活動を続けます。完璧はないものだと思いながら、プロトタイプを続けるからです。だからこそ、イノベーションをもたらすことができるのです。「どうすればもっとよくなるだろう」と自問自答しながら、新しい挑戦を続けていくそんな姿が想像されます。

著者のトニー・ワグナーさんは、イノベーターの素質を次のように列挙します。

  • 好奇心・・いい質問をするクセ、もっと深く理解したいという欲求。
  • コラボレーション・・自分とは非常に異なる見解や専門知識を持つ人の話に耳を傾ける。
  • 関連付け・統合思考・・人と人をつなぐ力、情報と情報をつなぎ、コンテキストとして描き出す力。
  • 行動志向と実験志向・・試してみて、常に行動を止めない力。

これまでイノベーターは偶然の産物でした。過去50年でもっとも独創的なイノベーターとされる3人、つまり、エドウィン・ランド(ポラロイドカメラの発明者)、ビル・ゲイツ(マイクロソフト)、マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック)は、自分のアイデアを実現するために、ハーバード大学を中退しました。

スティーブ・ジョブズ(アップル)、マイケル・デル(デル・コンピュータ)、ラリー・エリソン(オラクル)、ディーン・ケーメン(発明家)も大学を中退しています。

これらを見ているだけでも、大学という教育機関が何を果たしているかも、わからなくなります。さらに、子どもが成長する過程で通る道は、何も大学だけではありません。もっとも大きな影響を受ける家庭環境というファクターの影響度も多分にイノベーター創出のためには、考慮されるべきです。

大学や教育、あるいは、家庭環境をどのようにコントロールすることが、イノベーターを育成することにつながっていくのでしょうか。

実は、イノベーターを育てる鍵は、3つあります。

  • 専門性・・知識(技術的知識、手続き的知識、知的知識)
  • クリエーティブな思考力・・問題に柔軟かつ創造力豊かにアプローチできるスタンス。
  • モチベーション・・諦めずに行動を続けるだけのやる気。

これらの結節点において、創造性つまりイノベーションを起こす力をもたらします。

研究によれば、人間は新しい可能性を探り、実験し、想像する欲求、つまりイノベーションを起こす内的欲求を持って生まれる。

遊び

人はすでに生まれながら想像する力を持っていると言います。ごく幼少期の子どもであってもすでに可能性を検討し、それを現実と区別し、その可能性をもとに世界を変えていることが研究されています。子どもは今と違う未来の世界を想像することができ、そこから、過去の可能性を考えることができます。

だからこそ、想像の世界を思い描いたり、作り話を思いついて、時に「驚くフリ」をすることだってできるのです。

子供の脳は世界について簡単な理論をつくり、世界がどう動いているかを把握する。
またその理論によって、新たな可能性を思い描き、異なる世界を創造し存在するふりをする。

遊び

イノベーションの源泉となるモチベーションや想像力はすでに内発的に備えているものなのです。これを育むのは、実は「遊び」です。子どものときの遊びが、10代の情熱に繋がり、さらには、大人になってからの目的意識へと連続していくことで、イノベーションを見出す視点を養っていきます。

子どもにとって重要なことは!?

子どもの遊びを自由に認め、子どもの自主性を重んじる教育や家庭環境が大切です。ただし、無法地帯にするのではなく、家庭でのルールを設定したうえで自制心を働かせることも大切です。自由と自制のバランスを自ら取れるようにできるには、基本的なルールの存在を早くから認識することが大切です。

同じ論点を説くのは、こちらの1冊「【親の言葉は、最も価値あるもの!?】「非認知能力」の育て方:心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育|ボーク重子」のボーク重子さんです。ボーク重子さんも、自身の子育ての経験とコーチングの経験、両側面から見て、家庭環境について、「ルール設定」の重要性を説きます。そのうえで、遊びも重要であると言います。

1)家庭のルールづくり(世の中にはルールがあることを教え、守らせる)
2)豊かな対話とコミュニケーション(表現する力と自信を養う)
3)思う存分、遊ばせる(遊びの中から問題解決能力を伸ばす)

ボーク重子さんの掲げる上記3つの子育て視点が、本書『未来のイノベーターはどう育つのか――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの』のイノベーターを育む視点とリンクします。

さらに、自制と遊びを両立しながら、子どもが社会とどのように関わっていくかを伝えてコミュニケーションしていくこともキーです。子どもが社会にどうやって関わり、そして「恩返し」していくかについても、考えることを促すのです。本書に登場するイノベーター、カーク・フェルプス(アップルでiPhoneの開発に携わるキーパーソン)とシャナ・テラーマン(3Dデザインのウェブプラットフォームの創設者でありアーティスト)の2人とも、そのように親とのコミュニケーションを積み重ねててきました。いずれも経済的には典型的な中流家庭でしたが、「恩返し」という基本的な価値観を備えていました。それが、社会との積極的な関係性を育むマインドセットを紡いでいくことになりました。

赤ん坊は潜在的イノベーターの脂質を多く持って生まれる。しかしその脂質が伸ばされることはめったにない。

型破りなメンター

しかし、親が子どもの内的モチベーション(好奇心、想像力、自分の周りの世界に対する関心)を育むことで、その潜在的な力を発揮する環境を整えることが可能なのです。

子育てで重要なことは!?

「伝統的な教育」が、子どものやる気ややりがいを阻害してしまう可能性もあります。多くの場合、子どもは丸暗記によって情報を伝達するプロセスに過ぎず、質問したり自分で何かを見つけたりするチャンスはほとんどないと言ってもよいでしょう。その結果、子どもが本来持っている好奇心を阻害してしまう可能性があるのです。

すべての領域をカバーすることを想定すると、膨大な量の情報を子どもに提供することになります。こうした情報の過剰刺激が、学習する意欲を損なわせてしまう可能性もあります。その一方で、培われるのは「試験にパスする」能力です・・。

21世紀には、自分が何を知っているかよりも、自分が知っていることで何をやれるのかのほうがずっと重要になる。

21世紀に求められる教育

子どもが培っていることが望ましいのは、新しい問題を解決するために、新しい知識に関心を持ち、新しい知識を作り出す能力だと考えられます。「その場その場で」学び、その知識を新しい方法に応用する能力が求められます。

横断的な知識を柔軟に得ていくことも大切でしょう。例えば、こちらの1冊「【幅こそ、力!?】RANGE(レンジ)|デイビッド・エプスタイン,東方雅美,中室牧子」でも早期に知識の幅を絞り込んでしまうのではなく、むしろ幅を重視することで、ものごとの熟達をよりよくする効果が語られています。

重要なのは、外的なインセンティブ(例えば、テストの点数やご褒美など)だけではなく、内的モチベーション(自分でものごとを突き詰めて考えたい意識など)を大切にすることで、個性に応じた知識の習得と、その活用を考えることができます。

親としていちばん重要なことは、子どもの意見を尊重して耳を傾け続けることです。しかし、自由にさせすぎないことも重要であり、限界、境界線、秩序は必要です。ただし、(これが難しいところなのですが)これが多すぎると子どもの自主性を阻害してしまいます。難しいのは、経緯と建設的な関与や建設的な反抗のバランスを取ることです。強くなることを教えながら、超えてはいけない壁を与えることです。

イノベーションは不服従と切り離せませんが、イノベーターになって銀行強盗をしていたらはじまらない

遊び

まとめ

  • イノベーターとは!?――専門性、クリエーティブな思考力、モチベーションを統合できる人です。
  • 子どもにとって重要なことは!?――遊びとルールです。
  • 子育てで重要なことは!?――遊びとルールのバランスです。
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