【「食べる」は、文化と経済と自然の身近な接点!?】食べる経済学|下川哲

食べる経済学
  • 食に関する課題や、世界観を捉える時に大切なことは何でしょうか!?
  • 実は、消費だけではなく、生産も含めてトータルで考える力です。
  • なぜなら、食はバリューチェーンが非常に長く、複雑だからです。
  • 本書は、食料を経済学で捉える1冊です。
  • 本書を通じて、食にまつわる世界の課題点を知ることができます。
下川哲
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食の課題を俯瞰するには!?

食を経済学で、見ていくと、これからの課題が見えてきます。食料を、「作る(生産)」、「売買する(市場)」、「食べる(消費)」という3フェーズで奥行きを持って知ることから、全体のバリューチェーンがどのようになっていて、それぞれのフェーズでどのような問題と課題が内在しているのかを知る視点を得られます。

私たちに身近な食ですが、「食べる(消費)」フェーズが身近なため、そのように感じています。しかし、作るや売買する過程で何が行われているのかについて、詳しく知る人はどれだけいるでしょうか!?

きっと、その仕事に従事している人くらい?ではないでしょうか。

「食べる」側だけから捉える世界と、「食べる」と「食料生産」を表裏一体として捉える世界とでは、世界の見え方が違ってきます。

1章 「食べる」と「食料生産」

所得が増えても1日に食べる総エネルギー量はそれほど、変わりません。先進国と途上国の間で比較しても1日に食べる総エネルギー量の差は2倍以下しかありませんでした。

しかし、そのエネルギーを生産するのに要した自然資源(水や飼料等)を比較すると。大きな差が見出されます。例えば、牛肉や豚肉からのエネルギー摂取割合が増えると、必要な自然資源が膨大に増えるのです。

このように、「食べる」だけではなく、食料を生産から捉えることで、課題の本質に迫ることが可能です。

食は経済の基本!?

日本において、食料生産をしている人、食料生産に関する仕事に従事している人は、ほんの数%しかいません。よって、90%以上の人が「食べる」側の視点しか基本的には持っていないということになりそうです。

そのために食料市場も「食べる」側の視点に偏った仕組みになりがちです。これからの時代は、経済合理性だけでは、行き詰まる世界観になってきました。効率的によりよいものだけを作っているだけでは、すでに人間の満足度の上限に達していて、さらなる多幸感を覚えることはむずかしくなってきています。

大切なのは、自然資源と経済をともに結び統合する考え方を持つことです。これを文化資本として提唱しているのがこちらの1冊「【文明の次は、文化!?】文化資本の経営:これからの時代、企業と経営者が考えなければならないこと|福原義春,文化資本研究会」です。食についても、大いに触れる部分がありますので、ぜひご覧ください!

未来を考えてみましょう。例えば、食料生産による自然環境への負担を無視した市場では、現在の「食べる」のために自然資源全体の7割を浪費して、100年後の「食べる」ために全体の3割しか残さないのであれば、不公平な分配となってしまいます。

「社会にとって最も望ましい『食べる』」の意味合いは、社会を構成する人々の立場や視点によって変わります。

3章 食料市場の限界

私たちが作った食料市場は私たちの視野と欲望が反映されたものです。一人ひとりが全体俯瞰を持つことによって、新しい世界線を拓くきっかけを得られます。私たちがどんな世界を望むのか、何を良しとするかによって、将来の社会のあり方が変わってくると言ってもよいのです。それが端的に現れるのが、食という分野なのかも知れません。

というのも、上述の文化資本の経営でも述べられるように、人間の活動は、経済・文化・自然の統合へと向かう時、食はそれらの結節点として非常に身近なものだからです。

事実、食は自然と密接に関わっています。自然の摂理に起因して発生する問題は、多くの場合、人の力では制御不能で避けられない問題になります。たとえば、食料生産は自然条件に大きく影響されるため、年によって収穫量が変動することが避けられないからです。そして、食べる側の人も実は限界があります。また、必要エネルギーの下限もあることが特徴でしょう。

これまで人間は、食を自然から切り離して経済の対象とすることに注力してきました。画一的な生産方法と自然の影響を極力排除する環境設定によって、全国に同等の品質の食料を分配してきました。そうした過程で、無理無駄や別の問題を生み出してきたことも事実でしょう。

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これからの課題設定に向けて!?

世界人口が膨れ上がる中で、食の生産の問題は待ったなしの課題になっています。海外に食料を依存する日本にとっても看過できない問題です。食料の調達を考えた場合、大切なのは、人間と地球、双方の健康を考えることです。このことが結果的に人間と地球の「持続可能な関係」を養うことに役立っていきます。

人間と地球、より健康的な食生活を実現するためには、次の3のアクションを検討してみましょう。

1)食べ過ぎを減らす
先進国などでの食べ過ぎ問題を減らせば、自ずと食料生産全体に必要な自然資産を節約することができます。

2)動物性食品よりも植物性食品を増やす
植物性食品の割合を増やし、動物性食品の割合を大幅に減らすことも大切です。結果的に畜産による温室効果ガス排出量の軽減や水質汚染を減らすことができます。

3)加工食品や添加糖類などを減らす
高度に加工された食品や添加物の消費を減らすことも推奨されます。複雑な加工工程で発生する食品ロスを減らすことができるからです。

未来の視座から考える

12章 これからの「食べる」について

未来の視座には、大きく分けて2種類あります。

①「自分自身もしくは現世代の未来」・・中長期的な視座で、健康改善や「時間的非整合性」と関係すること。
②「将来世代の未来」・・数世代先の超長期的な視座で、まだこの世に存在していない世代の視座によるもの。

未来の視点をもって、かつ、食料生産のフェーズから自分たちの食を検証することで、自らの健康と地球の健康もそれぞれを守る思考やアクションに繋がりやすくなります。

まとめ

  • 食の課題を俯瞰するには!?――食料生産の現場からトータルの視点を身に着けましょう。
  • 食は経済の基本!?――経済・文化・自然が絡み合います。
  • これからの課題設定に向けて!?――食のバリューチェーン全体をケアし、自分にとっても、地球にとっても健康な食を追求しましょう。
下川哲
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