【顧客の状況を見よ!?】バリュー・プロポジションのつくり方|前田俊幸,安達淳

バリュー・プロポジションのつくり方
  • どうしたら、よい製品・サービスを社会に展開することができるでしょうか。
  • 実は、顧客の状況を見ることが大切かもしれません。
  • なぜなら、価値(バリュー)は、提供者(企業等)ではなく、顧客が決めるからです。
  • 本書は、バリューの生み出し方に関する1冊です。
  • 本書を通じて、顧客志向にヒントを得ることができます。

バリューのために大切なことは!?

どうしたら顧客に、企業やそこから生み出されるプロダクト、サービスの価値が提供することができるでしょうか。大切なのは、自分たちが価値を作っていると思わないことです。

真実は、いつも顧客側にあります。すなわち、顧客が感じて初めて、価値が生まれるのです。

すると、価値を作る時になにが必要か、自ずとわかってきます。

それは、顧客を知ることです。

顧客の置かれた「状況」という目線で対象をとらえた場合、事業者がデザインしようとしているのは、顧客の環境(またはその一部)といえるかもしれません。

はじめに

事業とは、「顧客の状況を進歩させるもの」ととらえられます。主役は、常に顧客です。

本書は、価値についての解像度を上げなながら、顧客志向をいかに実現するか、について説かれた1冊です。

本書にとって価値(バリュー)とは顧客が認識する価値であり、顧客が「これいいな」と思ったポジティブな情動を指します。

バリュー・プロポジションが規定するもの

顧客にとっての価値の作られ方は、以下です。

1)価値を選ぶ(顧客にとっての価値を特定する)
2)価値をつくる(その価値を生む仕組みをつくる)
3)価値を伝える(顧客に価値を認識してもらう)

最初の「価値を選ぶ」という行程が非常に重要です。

状況に左右される価値について、事例で考えてみましょう。

水道水の価値について検討してみます。たとえば、あなたがシティで暮らしている時に、水道水はありふれたものであり、特段便利だと感じることはないでしょう。しかし、ひとたび山登りやハイキングへ行く時に、その価値は様変わりします。水道水には塩素が含まれるため、普通の水よりも腐りにくい特性があり、常温で3日くらいは長持ちします。また、傷口を消毒する際にもつかえます。数日間のあいだ衛生的な水へのアクセスがなくなるような状況では、水道水は極めてローコストで保存のきく飲料水や洗浄水としての価値を持ちます。

このように状況に応じて揺れ動く価値を想定し、事前に検討しておくことが、マーケティングの出発点であるはずです。

バリュー・プロポジションとは!?

顧客のペインとそれが解決されたときの快情動(「これいいな」と思う気持ち)にフォーカスしましょう。

価値を快情動だとすると、価値のある・なしとはプロダクト・サービスの特徴や属性そのものに依存するのではなく、使い手や検討主体である顧客の脳の中での反応だと解釈することができます。

価値の知覚について

顧客にとっての価値とは、おおむね次の3つに分類することができます。

1)機能的な動機によるもの
ある目的を達成するためのプロセスの煩雑さを解消するものなど。たとえばSNSに写真を投稿する際に、アップロードに毎回30秒かかるとイライラします。これをとても短い時間に短縮できるような機能価値です。

2)感情的な動機によるもの
あるプロセスを遂行する際に生じている気持ち、内面的な感情で、希望やおそれと言ったものです。たとえば、ある異資格試験に合格したいと勉強している際、高い得点を得たいという動機だけではなく、実は家族によりよい生活をもたらすことを願っているかもしれません。

3)社会的な動機によるもの
他者(または自分自身)が、自分をどうおもっているかといった、人と人との関係における尊厳や承認欲求と言ったものです。資格試験に合格することで、知人や家族が自分を誇りに思ってくれるかもしれません。

最初のステップである、「価値を選ぶ」という行程において、参考にしてみましょう。

本書の主題である、バリュー・プロポジションとは、顧客に価値を感じてもらうべく、「どのような状況」で、「どのような体験」を提供したいかの方向性を示すこと=「体験のコンセプト」として定義されます。

顧客志向のステップとは!?

「顧客体験のコンセプト」=バリュー・プロポジションを見いだすには、次のような考え方を用いましょう。

事例として、LIONさんがクリニカKID’Sとして展開するIoT技術を活用した子どもの歯磨き習慣育成サービスで当てはめて考えてみましょう。

①理想状態(ビジョン)の定義

企業の想いとしてのビジョンを定義します。ビジネスとして世の中にどんなシフトチェンジを起こしたいのかに対する答えを壮大に描ききります。もちろん、長期的な目標で構いません。

クリニカKID’Sの場合は、「虫歯ゼロで、生涯にわたり、健康な人生を毎日を作り出す」として仮置きしてみましょう。ちなみに、LIONさんの企業全体のパーパスはこちらです。ちなみに、LIONさんもフィロソフィの中の信念の1つ目に、「価値は顧客が決める」と定義しています。

②機能

状況を変革しうる自分たちが調達可能なアセット、資源、リソースです。
クリニカKID’Sでは、LIONさんの基盤技術である、歯ブラシ等のプロダクト開発力・製造力・流通力、ブランド力などや、IoT技術の新開発、関係各社との連携などが含まれるでしょう。

機能を考える時、最初からパーフェクトな機能を考えなくてOKです。まずは手持ちの機能を洗い出して、できることを考えながら追加していきましょう。この点について、本書の著者である前田俊幸さん、安達淳さんは、エフェクチュエーション的なプロジェクト進行を支持されています。

エフェクチュエーションについては、こちらの投稿「【「手中の鳥」を探せ!?】エフェクチュエーション|吉田満梨,中村龍太」をぜひご覧ください。

機能とは、端的にいうと企業が「できること」を表します。

問題空間と解決空間

③現在の状況(状況A)

実際の現実に存在する、顧客がコンフリクトを感じている状況を機会として発見し、ターゲットとします。

クリニカKID’Sでは、「歯磨きを嫌う子どもと、その子どもになんとかして歯磨きの習慣を身に着けさせたいけれど、いやいやされてジレンマを抱える親御さん」を想定しましょう。

④目指したい状況(状況B)

顧客のコンフリクトが生じている状況Aに対して、プロダクト・サービスを提供して実現解として生み出せそうな状況Bを定義します。

クリニカKID’Sでは、「子どもが、自分で、楽しんで、歯磨きを、正しくしていること」を現実に起こしたい状況Bとして定義されるでしょう。

状況Bは、必ずしもAの裏返しではなく、機能や理想状態を考える中で、洞察されるものであることに注意しましょう。さらには、実際に顧客にプロダクト・サービスを提供する中で、微調整されていくものであるということも、エフェクチュエーションのマインドセットとともに意識することがポイントです。

⑤体験コンセプト

上記の情報を検討しながら、思考を回していき、バリュー・プロポジションとなる、「体験コンセプト」を導き出します。

クリニカKID’Sでは、「できた!が明日につながる。頑張ったね!でもっと上手くなる。」を約束する「アプリ連動のはみがきお稽古のインタラクション・コンテンツ及びプロダクト」となるでしょう。

次回の投稿では、さらに、バリュー・プロポジションを構築するために必要な、顧客の新たなペルソナ記述の方法論と、これからのマーケティングステップについて触れたいと思います。

まとめ

  • バリューのために大切なことは!?――顧客の状況から始めることです。
  • バリュー・プロポジションとは!?――顧客に価値を見出してもらう「体験コンセプト」です。
  • 顧客志向のステップとは!?――①~⑤のステップを使い、「体験コンセプト」を見出しましょう。
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