- 事業をより良くしていくためには、何が必要でしょうか!?
- 実は、倉本長治さんの言葉に触れることがよいヒントになるかも。
- 倉本長治さんは、明治~昭和において商人道を説いたレジェンド的存在です。
- 本書は、そんな倉本長治さんの言葉をふんだんに紹介してくれる1冊です。
- 本書を通じて、現代にも通じる正しい商人の心を知ることができるでしょう。
なぜ、価格に違いが出るのか!?
倉本長治さんが説くのは、特に、小売業に関しての心構えが中心です。特に、具体的なものを販売することにかけては、非常に多くの含蓄ある言葉を残されています。小売業の方に対して多くの気づきをもたらしてくれるものですが、私は、サービスを提供する、価値をもたらす、すべての事業に通じる考え方であると思います。なぜなら、仮に提供する商品に形がなかったり、店舗がなかったりしても、店員と顧客の関係性というのは常に存在し、このやり取り・交換というのは、普遍的な行為だからです。それは、人が人であるからには、常に存在する愛や信頼、誠意などのやりとりなのです。倉本長治さんの言葉から、商業だけにとどまらない、人のあり方についても触れ、自分の生きる指針に磨きをかけていきたいと思います。
たとえば、価格について非常に興味深い視点を遺してくださっています。
小売店が同じ品を同じ価格で、同じような店舗で、同じ風な売り方をしているのにも拘わらず、ある店はよく客から支持され、問題にならぬほど圧倒的にモノを売っている。
11 計算できないモノ
こうしたことはよくあることです。同じものでも、価格が違う。そして、売れ続けている、条件が一緒なのに・・。なぜでしょう。この「計算できないこと」、あるいは、「みえないもの」に大切なことが隠されていると、倉本長治さんは指摘します。
善悪とはなにか!?
それこそが、店の善悪です。
善い店、悪い店の区別は、その店が非情に経営されているか愛情ゆたかであるかで行われる。
23 愛と憎しみ
愛があれば、真実をまとい、真実があれば、信頼に繋がり、そして結果として、店が繁盛し続ける。ひとりひとりのお客様が継続して購入してくださるため、無理に拡販をせずとも、店が成り立っていくのです。そこには、互いの信頼関係があるからこそです。
人間の愛情というものは必ず相互に照射し合うものだからである。
23 愛と憎しみ
まず、顧客を愛し、愛される関係性を作れるか、それが事業の根幹でもあり、これはひいては、そもそも人としてどうなのか、という問いを自らに投げるものではないでしょうか。
存続のために大切なこととは!?
「共存」というキーワードを倉本長治さんは、使います。
これは、顧客と店員(従業員や店)との関係性に言えることです。
しばしば、戦略という言葉の名のもとに、競合打破という勇ましい店舗計画や、マーケティングが語られることがあります。でも、戦略という概念をなにも考えずに商売に持ち込んで本当に善いのでしょうか。
誰かを打ち負かすために、商売を行っている人はそうそういないのでは?
商売の目的は、幸せになることです。それもひとりひとりの幸せを常に考えることです。これは、顧客だけではなく、当社の従業員や店員の幸せも含まれる、大きな愛の活動のはずです。
だから、盲目的に、戦争の言葉を採用し、打ち負かすスタンスを持ち続けることに、そろそろマーケティングの世界も改める姿勢が必要なのではないでしょうか。
たとえば、名著「年輪経営」の伊那工業食品の塚越寛さんも次のように語ってくれます。
人は幸せな人生を送るために生きているのです。
リストラなしの「年輪経営」~いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長~|塚越寛
このために、従業員への給与はコストではなく、目的であるとおっしゃります。詳しくはこちらの投稿「【幸せのための経営とは!?】リストラなしの「年輪経営」~いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長~|塚越寛」をぜひご覧ください。
倉本長治さんも、塚越寛さんと同じように、共存共栄の道のさきに、よりよい経営や商売が成り立つのだということを繰り返し教えてくれます。
とはいえ、みんながみんなこうした共存関係を望むことは限りません。戦略ベースの言葉が語られる中では、致し方ないことです。むやみやたらに競争に巻き込まれないことも大切です。
共存とは個別化、差別化すること
49 共存とは個別化、差別化すること
自らの信念を形にして、個別化・差別化に磨きをかけることで、結果的に、さまざまな変化のある環境でも、共存できる状況をつくっていきましょう。一見、矛盾するようなことにものごとの本質が潜んでいるものです。
矛盾の効用については、「【「考える」の軸ができる!?】使える弁証法―ヘーゲルが分かればIT社会の未来が見える|田坂広志」の投稿をぜひご覧ください。
倉本長治さんの言葉については、こちらの投稿「【商いの本質とは!?】店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる――倉本長治の商人学|笹井清範,柳井正」もぜひご覧ください。ことあるたびに、繰り返し触れたい、人としての心構えを知ります。
まとめ
- なぜ、価格に違いが出るのか!?――ものごと・人へのスタンスによるものです。
- 善悪とはなにか!?――愛情豊かであることを極めましょう。
- 存続のために大切なこととは!?――共存のために、個別化・差別化を志向しましょう。