- 何が、コミュ力の源泉でしょうか!?
- 実は、まず、ちゃんと、聴くことかも。
- なぜなら、人間は誰しも聞いてもらいたいものだからです。
- 本書は、コミュニケーションの本質に迫る1冊です。
- 本書を通じて、他者との関係性をより良くするヒントを得られます。
聞くと聴くの違いとは!?
聞くと、聴くとでは、おおきく異なります。この点に着目しながら、今回の1冊を読んでいくことにしましょう。
まず、聞くとは、自分なりの解釈をするため、同意する・反対する、従う・従わないという反応になります。一方で、聴くとは受け取る、寄り添うという反応になります。ジャッジを入れることはなく、「あなたは、そう考えているのですね」という受け取ることを言います。
聞く | 聴く | |
関心 | 相手(もしくは、自分の関心事) | 相手の関心事 |
思考 | この人はどんな人なんだろう? なんでこういうふうに考えるんだろう? | 何が見えているのだろう? 何を感じているのだろう? |
問いの種類 | なぜ? | なに? |
問いの対象 | 既知の自分にアクセスしやすい すでに気づいている思考/感情など | 未知の自分にアクセスしやすい 自分でも気づいていない思考/感情など |
視点 | 自分視点(解釈しながら) | 相手視点(解釈を脇に置いて) |
反応 | 同意する/反対する、従う/従わない | 寄り添う、受け取る |
共感 | 「私もそう思う!」 自分と同じ意見・考え方には共感可能 | 「あなたはそう思っているのですね」 自分と異なる意見・考え方にも共感可能 |
関係 | 上下関係になりやすい | 横の関係になりやすい |
本書では「自分の解釈を入れることなく、意識的に耳を傾ける行為」を聴くと定義する。
第1章 まず、ちゃんと聴く。
横並びで同じ景色を見に行くスタンスを取るのが、聴くです。大切なのは、聞くだけの世界観ではなく、聴くも含めて、他者とのつながりを検討することを意識してみることです。人は放っておくと、どうしても聞くだけに陥りがちです。
でも、なんででしょう・・もしかしたらバイアスがそうさせているのかもしれません。生存本能のために、より少ない情報で、判断をして次の行動を検討する必要があります。認知バイアスとは、人々が情報を処理し、意思決定を行う際に生じる思考の偏りや誤りのことです。これらのバイアスは、情報を不完全に解釈したり、特定の情報に偏った注意を払うことで、客観的な判断を歪める可能性があります。
社会で生きていく(生存していく)ためには、まず相手がどんな人かを見極める必要があります。その先入観を頼りに自分の行動を決めていかなくてはならない、という思いが先行し続けるためどうしても、相手そのものをジャッジする聞くになりがちなのかもしれません。
過去の投稿「【カルチャーは、バリューによる?】GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織のつくりかた|千田和央」でも、この点は指摘されていました。組織へのカルチャーフィットはその人のパーソナリティを判断しますが、これでは、新たな人材のジョインやケイパビリティの柔軟性が担保されづらくなってしまいます。むしろカルチャーは、バリューの提供(成功体験)によって作られるものであると定義するのであれば、バリューフィットを検討するべきと説かれていました。
つまり関心の観点で言えば、聞く「相手(もしくは、自分の関心事)」と聴く「相手の関心事」について、類似の視点を見いだすことが可能になります。つまり聞く「相手(もしくは、自分の関心事)」=カルチャーフィット、聴く「相手の関心事」=バリューフィットです。
「肯定的意図」とは!?
ちゃんと聴けているかどうかを決めるのは、「やり方」ではなく「あり方」
第1章 まず、ちゃんと聴く。
ここで大切になるのが、「肯定的意図」でものごとを見続けるというスタンスです。
この「肯定的意図」とは、たとえば、昔から付き合いのある親友など親しい人が、何か社会的に望ましくない行為を舌としたら、多くが「おそらく何か理由があったに違いない」と考えるでしょう。このものごとの見方のことです。
その行動をした背景には、そうせざるを得なかった事情や意図があったのではないかと考えること、これが「肯定的意図」を信じて関わるということです。
肯定的意図とは、「脳と心の取扱説明書」とも言われる N LP( Neuro Linguistic Programming)で大切にされている原則です。 NLPの主要な開発者の1人であるロバート・ディルツさんによれば「全ての振る舞いは肯定的意図を持っている」といいます。
- 「攻撃」の行動の背景には、「保護」。
- 「恐怖」の行動の背景には、「安全」。
- 「怒り」の行動の背景には、「境界を維持する」。
- 「憎悪」の行動の背景には、人に行動を起こさせる「動機づけ」。
などがあるかもしれません。同じ視点で、身体的な症状の背景には、何かがバランスを崩していることを、人に知らせるという身体的な意図があります。
肯定的な意図が厄介なのは、常に意識されるとは限らないということです。意識下にあるといってもいい・・そうすると、行動や症状について別の説明が施されてしまう可能性があるのです。
さらに相対のコミュニケーションでは、自分が意識あるいは共感できるところにフォーカスをしてしまって、その考えで、解釈が曲がってしまうことだってあるのです。自分はもしかしたら、自分が共感できうるところだけに、肯定的な意図を持っているかもしれないと自分自身を内省してみることも大切です。
肯定的意図という信念を持つということは、つまり異なる「意見」をぶつけあう前に、お互いの「意図」を交換し合おうという意志を持つことだ。これは対話で大切になるあり方そのものだろう。
第2章 ちゃんと聴くを分解する
そして、これは他者に対しても大切な視点ですが、何より自分に対しても大切です。
自分の中にある多面性を認め、いくつかの人格が内在し、それぞれが肯定的意図を持っている可能性を信じることが、まず、自分という中の肯定的意図を矛盾なく捉える第一歩となります。
この点についてあわせて読みたいのがこちらの投稿「【本当のあなたの「個性」はどこにある!?】私とは何か「個人」から「分人」へ|平野啓一郎」です。
自分の中の分人を意識して、それぞれの意図をちゃんと聴くこと。そうすると、自分の違いを活かし合い、補い合うことができるのです。
自分の中にいる複数の自分の肯定的意図を扱えるようになると、聴く技術が格段に高まるからだ。
第2章 ちゃんと聴くを分解する
相手の中のいくつかの人格の肯定的意図を汲みながら、話を聴くことによって、格段にコミュニケーションが良化するのです。
「AもBも大事って言ってるけど、結局どっちが大事なの?」としか捉えられなかったことが、「Aも大事ですよね。でもBも大事なのですよね。それぞれについてもう少し聴かせてもらってよいですか?」という関わり方ができるようになっていくのである。
第2章 ちゃんと聴くを分解する
聴き方とは!?
あの人のことを、まず、ちゃんと聴く前に、あなたがあなたのことを、まず、ちゃんと聴く。
おわりに
自分を大切にして、その上で、相手を大切にすることができます。
そのためには、聴き方について、いくつかの視点を知ることも大切です。
1)展開・・ほかには?というふうに質問して、話を広げるイメージです。
2)具体化・・言葉や場面をより具体的にしていく質問です。
3)抽象化・・つまりそれって・・と解釈をうながすことです。話を抽象的にまとめるイメージです。
4)俯瞰・・主観的な世界に入り込んでいたところから抜け出して、外から眺める時に使います。
本書は、「LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる|ケイト・マーフィ」の監訳を受けられた篠田真貴子さんが「刊行に寄せて」を書かれています。こちらの1冊も本書に流れる聴くという大切なテーマを取り扱ってくれています。ぜひお手にとってみてください。
まとめ
- 聞くと聴くの違いとは!?――相手にフォーカスするか、相手の関心事にフォーカスするかの違いです。
- 「肯定的意図」とは!?――表出するものごとのすべてには肯定的意図があるはずだと見立てましょう。
- 聴き方とは!?――聴く技術も含めて、意識してみましょう。