【50年前のオムロンの未来予測がスゴイ!!】SINIC理論 過去半世紀を言い当て、来たる半世紀を予測するオムロンの未来学|中間真一

SINIC理論 過去半世紀を言い当て、来たる半世紀を予測するオムロンの未来学
  • SINIC理論をご存知でしょうか。50年前にオムロンの創設者立石一真さんが打ち立てた未来予測です。
  • 実は、これがいまにわかに脚光を浴びています。
  • なぜなら、現代に至る過程をまさに言い当てたものだからです。
  • 本書は、そんなSINIC理論の内容や予測手法を事細かにレビューした貴重な1冊です。
  • これまでと、これからの社会を見渡すことができます。

SINIC理論とは何か!?

SINIC理論、サイニック理論と読みます。これは、オムロンが1970年代から現在に至るまで、経営の羅針盤としてきた未来予測です。50年以上前に現在進行中の大転換時代である「最適化社会」の到来を予測していたという、高い予測精度が今、あらためて注目されています。

オムロンの創設者、立石一真さんは、「適者生存の法則」を大切にしていたといいます。これはつまり、変化に適応したものだけが、この地球環境の中で生き残ってきたという法則であり、ビジネスの世界にも多分に応用されている考え方です。

そして、変化をしていくためには、羅針盤が必要です。この羅針盤を自ら創り上げてしまったのが、オムロンなのです。

できるだけ早く、社会の大きな変化、潮流、ニーズをとらえることが最も大事なことになる。

経営とは未来を考えること

まさに、オムロンにとって、未来の潮流を探ることは、経営課題であったのです。

SINIC理論の予測する現代と未来とは!?

SINIC理論は、3つの予測視点を活用していますが、そのご紹介の前に、予測の内容を見てみたいと思います。

  • 「原始社会」から「集住社会へ」:GNP/人=100米ドル以下
  • 「農業社会」から中世へ:GNP/人=100~170米ドル
  • 「手工業社会」からルネッサンスへ:GNP/人=約300米ドル程度
  • 産業革命が拓いた「工業化社会」:GNP/人=300~700米ドル
  • 第2次産業革命で開花した「機械化社会」:GNP/人=700~2500米ドル
  • 「自動化社会」の到来:GNP/人=2500~5000米ドル

このように、一人あたりのGDPが社会の発展と関係し、GNP4万ドル/人に至ると成熟社会を迎えることを視野にタイムラインの骨子としています。

「自動化社会」のその先は以下のような予測が立てられました。まさに、オムロンがSINIC理論を立てたその先、つまり未来予測の部分です。

システムとして社会や機能をとらえる、「情報化社会」の到来
1974年~2004年 GNP/人:5000~1万5000米ドル

製品やサービスの規模や範囲が大きくなって、処理するべきデータも大量かつ複雑化する時代です。システムとして社会や機能を捉えて、人の身体的な動作の自動化だけでなく、情報の処理や判断も自動化する動きがとくに、1970年代に入ってから活発化します。

再び人間視点への揺り戻しが始まる、パラダイム・シフトの「最適化社会」
2005年~2024年 GNP/人:1万5000~4万米ドル

この社会では、男女の個人及び社会の要求が変化し、これを満たすための最善の方法を見つける機能が開発されます。最適な情報のための選択的機能が増大し、個々の能力に従って最も適した快適な仕事を見つけることが可能になります。そして、これは、社会全体を最適化するという動きにつながっていきます。

最適化の大変化を経た先の「自律社会」
2025年~2032年 GNP/人:4万米ドル以上

この社会は、共同時代で始まった意識的な管理の社会から、管理のない自然社会への移行を示唆します。この社会に生きる人は、本当の変化を経験する必要があります。そうでなければ、困難のない、秩序あるこの社会では、人々が弱体化してしまうおそれがあるのです。なぜなら、人類はその長い歴史の中で、3つの闘争(B・ラッセルによって示された自然との闘争、他の人間との闘争、自分自身との闘争)に直面した際に現れた抵抗力が、進歩に大きく役立っていたためです。

私たちは、永続的に豊かなレジャー社会が実現された中で、何をモチベーションに生きていくことができるのでしょうか!?

そして、その先のハイパー原始社会としての「自然社会」に2033年以降突入していく未来が予測されています。自然社会といっても、かつての原始的な生活のそれではなく、あくまで、心や価値観は当時のものに回帰していくものもあるという考えで、衰退ではありません。

SINIC理論を支える3つの予測視点とは!?

これほどまでの予言をするSINIC理論ですが、3つの予測視点を実装しています。

1)科学技術社会論;
これは、科学、技術、社会のそれぞれは連関しあって、相互関係の中で発展していくというものです。

2)社会発展指標とプロセス理論;
これは、社会の発展度は、一人あたりのGNP(国民総生産)で測れるというものです。
なお、一人あたりのGNPが4万ドルになると、成熟社会となります。*現代が、ちょうど、4万ドルだそうです。

3)社会進化の価値観の理論;
進歩は、「心と集団中心」と「物と個人中心」を行ったり来たりしながら、達成されていきます。

いま、まさに、SINIC理論でも説かれた、大転換時代を迎えています。私たちが、全く新しい課題にチャレンジしている感覚を持つのはそのためでしょう。これに際して、SINIC理論の考えを見ながら、自らの行き方、心構えの持ちようを鍛えようと、著者である中間真一さんは言ってくれているようです。

VUCAの時代だからと言って嘆き、立ち止まっている場合ではない。SINIC理論は、進むべき方向を指し示している。大転換の時代の今だからこそ、SINIC理論の価値を存分に活かせる好機なのだ。

新旧社会OSがぶつかり合う、非連続な大転換時代

あなたは、SINIC理論が提示するこの先の未来像に、どんな期待と不安を持ったでしょうか!?そして、今を生きるための動機にどんなフィードバックができそうですか?

短期的な視点もあわせ持つことで、さらに問いの精度を上げられるかもしれません。こちらの投稿「【本当に起きるか?ではなく、起きた時どうするか?】BCGが読む経営の論点2022|ボストン・コンサルティング・グループ」もぜひご一読ください。私は、この本の中の「本当に起きるか?ではなく、起きた時どうするか?を考えること」が、大切という一節が特に好きです。

まとめ

  • SINIC理論とは何か!?――オムロンとその創設者である立石一真さんが打ち立てた未来像です。これをオムロン社は、経営戦略の根幹に据え舵取りをしてきました。
  • SINIC理論の予測する現代と未来とは!?――2022年現在は「自律社会」そして、その後「自然社会」が予測されています。
  • SINIC理論を支える3つの予測視点とは!?――科学技術社会論、社会発展指標とプロセス理論、社会進化の価値観の理論によって、フォアキャスティング、バックキャスティングされています。
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