- 会社の舵取りについて、どんな指標を見つめることが重要でしょうか!?
- 実は、1つの目安としてWACCが重要かもしれません。
- なぜなら、WACCとは社会からの資金調達コスト総体だからです。
- 本書は、ファイナンスの概論に触れ、さらにWACCを通じて、社会との接点をより良くするスタンスを説いてくれます。
- 本書を通して、企業経営とファイナンスの全体感をつかむことができるでしょう。

前回の投稿「【ファイナンスってなんだ!?】ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~|石野雄一」に続き、今回の本書を取り上げさせていただきたいと思います。
WACCってなんだ!?
WACCは、企業の資金調達コストのことです。つまり、この会社が投資家からいくらで資金を調達できているか?ということを表現できるものです。この場合の投資家とは、株主だけではなく債権者(銀行とか売掛先とか)も含まれます。
多くの場合、金融機関からの利息(たとえば5%など)はよく意識されるでしょう。これは契約で明示されていますし。しかし、資金調達のコストはこれだけではありません。特に現在から未来の時間軸を取り扱うファイナンスでは、株主コストも含めて評価を行います。
・債権者へのコスト(負債コスト)は、過去から現在に至るもの。
・株主コスト(株主資本コスト)は、現在から未来に至るもの。
として、見立てることができます。
WACCは、負債コストと株主資本コストを加重平均して求めます。
WACCの求め方は、負債(D)と株主資本Eの、それぞれの時価ベースでの額の按分でコストを算出するのが基本形です。
WACCの求め方
もうひとつ意識しておく必要があるのが、負債コストには節税メリットがあるということです。前回の投稿「【ファイナンスってなんだ!?】ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~|石野雄一」でも見たように、税引前の所得を利息は低下させるので、その分、国へ納めるお金を低減させることが可能です。
しかも、金融機関から融資を受けているということであれば、一定の信用も付与されます。
このようにPLの全体像をつかむには、WACCや節税メリットなどのバランスを考えるための知識とセンスが重要となるのです。文字通り、絶妙の舵取りが必要です。
WACCはどうしたらいい!?
「WACCを下げる」ことこそが、IR(Investor Relation=「投資家を対象にした」企業広報活動)のミッションなのです。
第2章 ファイナンス、基本のキ
WACCは、低いほうがよいです。
なるべく低下させてたいです。この時、考えるたいのは、投資家のリスク認識を下げるということ。投資家がこの企業は、大丈夫!と思ってくれれば、短期でのリターンを過剰にもとめることはなくなり、結果的にWACCが低下するでしょう。でも、この会社、長期的に怪しいな?となれば、なるべく短期的にリターンを求め、WACCが上昇してしまうでしょう。
IRとは、広報等の手段を通じて、そのミッションにWACCを低下させることを帯びていると認識するのがポイントです。

企業価値を上げるには!?
企業価値とは、実はWACC周りで説明することも可能です。
企業価値を上げるためには、ROICとWACCの差(=EVAスプレッド)を拡げることがたいせつです。
第2章 ファイナンス、基本のキ
ROICとは、こちらの投稿「【事業別の収益性管理の重要性とは!?】P/Lだけじゃない事業ポートフォリオ改革 ROIC超入門|松永博樹,伊藤学」もぜひご覧ください。当貸本に対する税引き後利益のことで、事業の収益性(投資に対するリターン率)を見るための指標です。

多くの経営者の関心事は、トップラインを上げること、利益を確保することですが、大切なのは、その効率性。まずはROICで自社の事業の収益性を見つめることが大切です。
その上で、その投資の原資にあたる資金調達についてどれだけのコストがかかってしまっているのかもWACCで把握しながら、これらのバランスをEVAスプレッドで取っていく舵取りが重要なのです。
すべてはバランス指標であることが認識されるでしょう。
ですから、経営者は必ずROICとWACCの両方に目を凝らしていなければならないのです。
第2章 ファイナンス、基本のキ
まとめ
- WACCってなんだ!?――負債コストと株主資本コストの按分です。
- WACCはどうしたらいい!?――下げましょう、IRはそのための方策です。
- 企業価値を上げるには!?――ROICとWACCの差分が企業価値です。
