- 仕事をする上で、発想とはなんでしょうか!?
- 実は、編集かもしれません。
- なぜなら、生命の出現とともに情報は編集され続け、いまの生命や社会が成り立っているからです。
- 本書は、編集工学研究所所属の安藤昭子さんが、編集工学の全体像を語ってくれます。
- 本書を通じて、発想、思索、表現を行うための考えのヒントを得られるでしょう。
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世界は、編集でできている!?
生命の出現とともに、情報は編集されてきた。
編集的自由の会得のために 松岡正剛
情報工学研究所の松岡正剛さんは、このように語ります。最初に情報をRNA、DNAとして編集し、生命が誕生しました。その後、現在に至るまで、情報は編集され続けてきた。文字どおり、情報化社会で、編集はますます重要になっています。イノベーションも、新結合と日本語に訳されます。まさに、情報と情報を掛け合わせることで誕生するのです。
情報工学研究所は、この情報編集をさまざまな学問を横断しながら、思考や思索をもたらすひとつの共通手法として研究しています。自分やわたしというバイアスを取り除きながら、世界を編集する術をもたらすことを志向している。
編集工学研究所の松岡正剛さんの書籍は、こちらもおすすめです!過去の投稿「【日本人は”世界線”がお好き!?】花鳥風月の科学|松岡正剛」をぜひご覧ください。
「モード」と「コード」とは!?
編集によって発想や思索や表現が進捗することを、さまざまなコードやモードをフルにいかして支援する。
編集的自由の会得のために 松岡正剛
「コード」は、情報の構造やルールやスペックのことです。ソースコードといえば、プログラミングの手続きのことであり、ドレスコードといえば、TPOに合わせて何を着るか?を定義します。
一方で、「モード」は少し複雑です。必ずしも言葉や絵にできないものです。訳すならば、印象だったり、様式や様相あるいは、英語では、スタイル、モダリティという言葉になるでしょう。目には見えない雰囲気やニュアンスとしてたち現れるものです。
手に取れる情報も、目にも見えず感じる情報も含めて、編集工学では対象にする強みがあります。
編集工学のコアエンジン「3A」とはなにか!?
本書の中では表題『才能をひらく編集工学 世界の見方を変える10 の思考法』にもある通り、10の思考が語られます。さらに、この10の思考を体感するエクササイズも用意されています。すべてを見るには、本書を手にとって頂くとして、今回の投稿では、安藤昭子さんが研究所で特に重要視する3つの思考法について、触れたいと思います。これらを頭文字をとって3Aが、それぞれ連鎖して、編集力を向上させるといいます。
関係発見の原動力となる「アナロジー(Analogy)」
連想は、次々と関連のある事柄を追い、イマジネーションを拡張していくことです。りんご→青森→青函トンネル→東洋初→銀座線、などのように、連想ゲームを進めていくように思考の幅を拡張していきます。
人の連想力は凄まじいものがあります。ぼーっとしている時に、あーきょうこんなことしないとな、そういえばあれどうなっているかな、こんなことしちゃったな前に、とかいろいろ考えているときって、案外、何らかの外部刺激に応じて連想していることが、多々あります。こうした思考は、「まだみぬこと」や「わからないもの」を推定するのに欠かせません。
アナロジーの思考が成り立つとき、3つのステップが機能しています。
1)何かと何かが「似ている」と思う
2)(似ているものの構造を)「借りてくる」
3)(借りてきた構造を)「当てはめる」
こうすると、複雑なものや見えないものも、その正体を類推したりすることが出来ます。
たとえば、目に見える「水」で「電気」をイメージするように。例)水源→電源、水流→電流、etc。
あるいは、じゃんけんが、はさみ、石、紙であるように。
私たちの生活の中に、じつは「類推」は溢れています。他のものごとへのたとえを活用すれば、まだみえてないことに対して、結論を導き出すことの可能性が見えてきます。
思い切った仮説にジャンプする「アブダプション(Abdoption)」
当てずっぽうの力を借りることです。上記のアナロジーは、論理的に統制されています。何となにかが似ているとするのには、明確な理由があるはずです。でも、アブダクションは、それを用いないのです。演繹とも帰納ともことなる第三の思考です。
アブダクションは、「ある現象の内に潜む仮説理論を引き出して提示すること」
第三の推論「アブダクション」の威力
たとえば、「あの見知らぬ動物は鮭を食べている」(しげしげとした観察)→「クマは鮭を食べる」→「もしかして、あの動物はクマの仲間では?」(大胆な仮説)と、新たな仮説を導きます。演繹は証明し、帰納は正当化し、アブダクションは発見します。
- 常識、思い込み、前例主義は、固定観念が「驚くべき事実」を見逃します。
- 正解追求主義を追求するあまり、試行錯誤を許容しないと思いきった仮説を出せなくなります。
- 整合性至上主義を追求するあまり、目に見える整合性だけでは、背後にある大きな法則が闇に隠れます。
ダイナミックな飛躍も歓迎してみましょう。
世界と自分の関係を柔らかく捉え直す「アフォーダンス(Afordance)」
いまここにあることやものから文脈を感じることです。ピクニックに訪れて出会った岩は、時にピクニックをする人にとって椅子になるし、アリにとって餌場となるし、犬にとってはトイレになる・・世界にはさまざまなものの見方とそれに応じた文脈があるのです。環境の中に発見されるまでは現れてこない、行為のみに宿る創造性を信じましょう。
本書では、フォン・ユクスキュルの「環世界」についても触れられています。これは生物によって、世界は異なるように見られると説いた考え方です。たとえば、マダニは哺乳類に吸血するというマダニの生涯でもっとも決定的なイベントを待つために、「哺乳類の体温」「哺乳類の出す匂い」「振動」のみの世界で生きているといいます。世界は、受け取り方によって異なるのです。
環境によって見出される必然のアイデアがあるのです、環境を頼りに考えを連想してみることも大切かもしれません。
「環世界」については、過去の投稿「【パンだけでなく、バラのある生活?】暇と退屈の倫理学|國分功一郎」でも取り上げられていました。こちらも特におすすめの書籍です。
まとめ
- 世界は、編集でできている!?――生命が生まれてから、ずーっと、情報の編集が基軸になっています。
- 「モード」と「コード」とは!?――コードは見える情報、モードは見えない雰囲気のような情報です。両方を横断的に取り扱うことができるのが、編集工学です。
- 編集工学のコアエンジン「3A」とはなにか!?――アナロジー、アダプション、アフォーダンスです。これらを連携して思考を深めていくことがポイントです。