- より良い企画とは、何でしょうか!?
- 実は、違和感にヒントがあるかも。
- なぜなら、その違和感を共有することができるか否かは、企画の広がりを考えるキーになるから。
- 本書は、元NHKプロデューサーであり、多くの社会課題を共有するプロジェクトを創設する小国士朗さんによる企画論です。
- 本書を通じて、小国士朗さんの企画の視点を知り、自らにフィードバックすることできます。
よい企画とは!?
本書は、元NHKのプロデューサーで『プロフェッショナル仕事の流儀』『クローズアップ現代』などのドキュメンタリー番組を中心に手掛けた後、番組のプロモーション、ブランディング、デジタル施策を中心に企画する部署でディレクターまでつとめ、まるで「一人広告代理店」のような活動をし続け、いまは独立した、小国士朗さんの企画術とその心構えにまつわる1冊です。
近年話題を呼んだ、「注文をまちがえる料理店」「delete Cプロジェクト」「丸の内15丁目プロジェクト」などは、小国士朗さんによる企画です。
社会問題を、軽やかに笑える企画として、みんなで共有できる形にするところに小国士朗さんの企画の特徴があります。本書もその名の通り『笑える革命 ――笑えない「社会課題」の見え方が、ぐるりと変わるプロジェクト全解説』です。
小国士朗さんは、NHKの出自もあり、世の中で起こっていること、問題になっていることを取り上げ、それを人に伝えることがパーパスになっています。
そして、現実というのはたいていおもしろくなくて、厳しくて、時には目をそむけたくなるようなこともあるわけです。
はじめに
そんな現実に対して、小国士朗さんは、「ふふふ」と笑ってしまったり、「えっ、なにこれ!?」と思わず手を伸ばして触れてしまうエッセンスを見つけ出して、それを拡大企画していくところに、キーがあります。
小国士朗さんの言葉を借りれば、「キラリと光る理想の風景」を現実の中に見つけてあげることです。
例えば、「注文をまちがえる料理店」であれば、オーダーが間違って通ってしまって、オムライスが餃子になってしまったけど、そのまま食べてしまえば、なんだか美味しかった・・そして、むしろ餃子を食べたかったような気もしてしまう・・、間違いってなんだか笑えてしまう・・のようなそんな風景です。笑える瞬間を作ることで、みんなが、怖い!とか、不安!とか、とっつきにくい!と思っている、認知症という問題が、なんだか、身近に感じられて、人と人の間につたわっていく形になります。
プロデュースの5つのキーとは!?
小国士朗さんが、プロデュースする際に、気をつけていることは、5つあります。「企画」「表現」「着地」「流通」「姿勢」です。
「企画」というのは、伝えたいメッセージがあったとしても、必ずしも伝わりづらい内容をアイデアやコンセプトで伝えやすくするということです。また、「表現」というのは、企画をどうしたら相手に届く形にできるかということです。表現一つで、伝えられる企画も伝わらなくなります。さらに「着地」は、実現性のこと。この「着地」を考える際には、仲間の存在が不可欠になります。「流通」は自分たちが作ったものを、どんなルートで届けることができるか、を考えること。そして、全体の企画から流通までを一気通貫する「姿勢」を問います。
自分たちが大切にしたい「姿勢」を定めることで、プロジェクトは確信をもって前に進めていくことができます。
序章「大切なことが伝わらない」葛藤と向き合った10年間
特にスタートラインに立つための「企画」については4つのマインドセットを大切にしてみることです。
1)素人の違和感
2)「すっげー」より「ずっけー(ずるい)」を目指すこと
3)この指とまれの「指」を磨く
4)「今、なぜ、これを伝えるのか?」を突き詰める
大切なことは、自分の感覚を大切にして、ちょっとした工夫の中で、仲間を見つけること。そして何よりのポイントは、社会で今何が論点担っているかという接点を広く持てるか、という視点です。
企画は、独りよがりではなりません。みんなと共有し実現し、さらにそのことで、多くの人に触れて、みんなで考えるきっかけになります。だからこそ、誰か特定の悩みや疑問、あるいは、その拡大としての世界全体・社会全体が困っていることや、モヤモヤと考えている違和感につなげていく活動が、企画のキーなのかも知れません。
社会に生きている仲間の1人として、誰もが共感しうる「違和感」にアンテナを立てて、それをどうしたら注目してもらえるのか?あるいは、手に取ってもらえるのか?という、「加工」を仲間とともにしていく過程こそが、企画でありプロデュースなのである、と、思われます。
企画をする人がかならず見つけなければならないのは、「自分が伝えたいメッセージ」と「今、なぜその企画を発信する必要があるのか」という「社会的な文脈」とが交わる接点です。これは、企画を作るうえで僕が強く意識していることのひとつです。
第1章 企画――あなたの「立てた指」に何人がとまる?
企画の視点、とはなにか!?
「企画」は、「1枚の絵」であると小国士朗さんはいいます。
その「1枚の絵」は、多くの人に見せたい絵です。山形県にある「フラワー長井線」という地元のローカル列車が存続の危機に陥っていました。長井工業高校の生徒が廃線を防ぐために立ち上がり、プロモーションムービーを作ったり、駅舎を作ったりし始めました。
小国士朗さんは、こうした動きに何かの良い意味の「違和感」を感じ、追いかけていました。そしていよいよなにか企画にできそうだと追い続けていた時、フラワー長井線の運転士が、発車時刻に遅れそうで必死に走ってきている高校生を、発車時刻を過ぎても「待っている」場面に遭遇します。
フラワー長井線は、超ローカル線のため、1本乗り遅れてしまうと、次の列車がくるまで30分とか1時間とかまたなくてはならないのです。常識で考えれば、電車は「時刻表通りに運行すること」が何よりも大切で、運転士が乗客を待つことはありえないです。しかし、そのあり得ない景色が、フラワー長井線にはあった・・・。
その風景を見た瞬間、僕は衝撃を受けました。そして「この風景を多くの人に伝えたい」と思ったと同時に、「今だからこそ伝えるべき風景だ」と思いました。
第1章 企画――あなたの「立てた指」に何人がとまる?
これは2005年のこと。JR福知山線の大規模な脱線事故が起きて間もない時期のことでした。
突き詰めて言えば、僕が番組で描きたかったのは、ディーゼル列車のミラーに映る高校生の姿をじっと見つめる運転士の姿だけでした。
第1章 企画――あなたの「立てた指」に何人がとまる?
現実の中には、目を凝らしてみれば、理想の風景があるはずです。現実はたいしても面白くないかもしれない、辛いこともたくさんあるかもしれない、でも本当によく見てみれば、きらりと光るような、あるいは「あはは」と笑いたくなるような風景があるはずなのです。
そこに気付くことができるか、社会の問題にエッジを立てながら、常に気を配っていくことができるか・・ここに企画のキーがあります。
ですから、一人ひとりの感覚を大切に、問題と解決の視点・・というか、そこまで言わなくても素敵な感覚を覚える景色を見つけることが、実は企画には大切なんですね。
まとめ
- よい企画とは!?――現実の中に小さな理想を見出すことです。
- プロデュースの5つのキーとは!?――「企画」「表現」「着地」「流通」「姿勢」です。
- 企画の視点、とはなにか!?――社会の問題と、「見たい景色」の接点を見出すことです。