【2】2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ|ピーター・ディアマンディス,スティーブン・コトラー

2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ

進化するテクノロジー同士の掛け合わせで、社会変化が加速度的に起こっていきます。すでに今後20~30年先まで続くいくつかのビジネスモデルが立ち上がっています。変化を恐れるのではなく、受け入れながら柔軟に対応していく心構えで行きましょう。

ピーター・ディアマンディス,スティーブン・コトラー
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新しいビジネスモデルの潮流とは?

今後20~30年の産業界に大きな影響を与えそうな新たなビジネスモデルが現時点で7つ見えている。

第4章 加速が「加速」する

テクノロジーが掛け合わされることで、指数関数的(エクスポネンシャル)に社会が変わっていく速度が上がっていきます。この変化に抗うことはできません。そして、正確に予測することも困難です。

私たちが未来を予測しようとすると、奇妙な減少が起きることが明らかになっている。内側前頭前皮質が動作を停止するのだ。

第1章 「コンバージェンス」の時代がやってくる

内側前頭前皮質は、自分自身のことを考えるときに活性化する部分だそうです。未来を考えるとここの働きが弱くなるということは、つまり、未来を自分ごとのように考えられず、他人事にしてしまう傾向が人にはあるということです。より遠い未来ほど、この傾向は強まっていくでしょう。

フランスの詩人ポール・ヴァレリーが「湖に浮かべたボートを漕ぐように、人は後ろ向きに未来へ入っていく」と語ったことが科学的に証明されたとも言って良いかもしれないですね。過去(後ろ)を見ているのは、それが現実だからだけではなく、そもそも前を見ることが自然でないのですね。だから後ろ向きにオールを漕ぐボートの例えがまさに秀逸です。

頭の中の構造がそもそも将来予測に適していない人間ですが、それでも必ず未来はやってきます。著者はいくつかの変化の兆しをとらえておくことが大切だと語り、いくつかのビジネスモデルを紹介しています。

1.クラウドエコノミー:クラウド(大衆)の持つ資産を、活用するビジネスモデルです。例えば、エアービーアンドビーなどが現在有名でしょう。

2.フリー&データエコノミー:優れたサービスを無料で展開して顧客情報をあつめ、これを元でに商売をするビジネスモデルです。フェイスブックなどのSNSがそうでしょう。

3.スマートネス・エコノミー:既存のものがスマート化することで新しい機会を創造するビジネスモデルです。例えば、スマートフォン、スマートスピーカーなどでしょう。

4.閉ループ・エコノミー:限られた資源を有効的に活用するために、循環型にするビジネスです。アップサイクルと呼ばれる分野ですね。アメリカには、「プラスチック・バンク」というプラスチックを回収し、販売する企業があります。

5.分散型自律組織:組織の運営のルールを予め決めておき、自走させるビジネスモデルです。例えば、自動運転のタクシー会社などです。

6.多重世界モデル:拡張現実や仮想現実上でのビジネス展開です。フェイスブック社は、社名をMETAとして、仮想現実上のコミュニティというか、もはや社会づくりを本気で進めています。

7.トランスフォーメーション・エコノミー:経験を通じて、人生を変えるビジネスモデルです。コロナ禍で追い風を受け流行したペロトンなどのオンラインフィットネスなどもこれにあたるでしょう。

人の仕事は本当に減るの?

指摘しておくべき事実がある。エクスポネンシャル・テクノロジー(指数関数的な影響力を持つ技術)が誕生するたびに、インターネットと同じくらいとほうもない機会が生まれる。

第13章 脅威と解決策

一時期、人工知能が人の仕事を奪う!という衝撃的なニュースがトレンドになりました。しかし、著者はこうした警鐘は現実にはならないことをこれまでの事実から証明してくれています。

例えば、ATM。これが登場した1970年代の米国では銀行員が大量失業するのではないかと噂になりましたが、結果は全く逆。ATMが急速に普及したことで、銀行の運営コストが低減したことにより、拠点数が40%も増えたそうです。

あるいは、繊維業の雇用も同じく、生地を生産する仕事が自動化されたのにも関わらず、雇用は19世紀以降増加したそうです。さらに、弁護士を補佐するパラリーガルや助手もAIの登場で不要論がさけばれていましたが、AIが効率的に情報を圧倒的な量で吐き出すため、これの分析に人でがさらにかかるらしいです。

つまり、新たな技術が「既存」の雇用を奪うかもしれないが、常にそこには「新たな」雇用がセットとなって登場する。しかもその新しい雇用は既存の何倍にもなるということです。そして、AIは単体では機能しないという点にも言及します。人工知能がうまく活用されて効果を発揮できるようになるのは、人との連携がうまく行った場合です。

学び続けよう!今がスタートライン!

深呼吸して、目はそらすな。

第14章 五つの大移動がはじまる

未来を予測するときに不安な気持ちになるのは仕方がありません。人には「損失回避性」というバイアスが深化の中で根深く刻み込まれているからです。これは、現在手にしているものと引き換えに、未来に何か新しいものを手に入れるとしても、後者のほうがずっと価値が低いのではないかと疑念を抱くことです。

だからといって、確実に訪れる変化を無視していくことは、賢明ではありません。大切なことは「楽観的に未来を見よう」ということです。

水不足、気候変動、世界的な飢餓など人類には重要な問題が山積みである一方で、ウォールストリート・ジャーナル紙が指摘したように、他の何十という指標は上向いています。

ハーバード大学のスティーブン・ピンカーは著書『暴力の人類史』で、戦争や紛争はかつてないほど少なく、私たちは人類史上最も平和な時代に生きていると語っています。しかも、最も健康な時代であるとも。乳児死亡率、10代の出産率、マラリアによる死者数、飢餓による死者数、延び続ける寿命など、どの指標をとっても劇的な改善が見られています。同時に、再生可能エネルギーのコストは急激に低下し、高速デジタル接続と安価で高性能なデバイスの入手しやすさは劇的に改善しています。

私たちは、よく知らないものを恐れるようにできている。でも、それを正しく恐れるようにして、未来の可能性の側面についても同時に見ていく、努力が必要だと思いました。

そのためにも、正しい知識を学び続ける努力が、訳者である山本康正氏が解説で語ります。

テクノロジーの発展のマップを自分の頭の中に持つべきだ

解説「日本人が今、本書から学ぶべきこと」山本康正
ピーター・ディアマンディス,スティーブン・コトラー
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本書は、これから訪れるだろう未来の社会を俯瞰的に把握できる良書です。細かな論点もありますが、技術同士のつながりで社会がどのように変わっていく可能性を秘めているのか、おおよその頭の地図を描くことが可能になります。事業創造や経営に携わっていらっしゃる方が、トリの目をもっていただくきっかけにとても参考になるのではないかと思います。私も学び続けたいと思います。

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