- 職場にこんな人は、いませんか?昔話を良くする人。昔の成功手法を今でも使っている人。そして、今はパフォーマンスを上げていない人。昔輝いていたのに、いつの間にか残念になってしまうのはなんでだろう?と思ったこと、ありますよね。
- 本書が、そういう状況に陥ってしまう人について、アンラーニングという切り口で説明してくれます。
- 「Un-Learning」は、学ばないことではなく、過去を「捨てる」ことで得られる変革の学習方法です。
- 本書では、人材育成、組織論の基礎研究を元に、著者がアンラーニングとは何かをやさしく説明し、その身につけ方についても詳しく触れています。
- 本書を読み終えると、明日からアンラーニングに取り掛かるためのスキルを得ることができます。そして、いわゆる残念な人にならないための心構えスキル習得のヒントを得ることができます。
アンラーニングとは、「学びほぐし」のこと。
アンラーニングは、「熟達者」だけにもとめられるものではなく、「熟達者」になる過程においても必要
成長に欠かせない「学びほぐし」
昔は通用したけれど、今は通用しなくなった手法を使っていては、仕事のパフォーマンスは上がりません。社会や環境の変化に応じて、自分自身を常にアップデートしていくことが大切です。
しかも、そのアップデートは、スキルだけではなく、仕事に対しての信念やポリシーなどについても必要です。例えば、あなたが部下を持つようになれば、自分だけの能力研鑽だけで良かったものが、チーム全体の底上げを求められるようになるでしょう。このように、仕事をする上では、常に考え方も含めた変革が、実は求められているのです。
著者は、このアンラーニングを「学びほぐし」であると意訳します。硬直した知識・スキルをほぐして、新しく組み直すこと。これを定期的に行ってこそ、変化に対応し、価値を生み出し続けることが可能なのです。
特に「熟達者」は、自分の得意領域でのみ勝負をするようになってしまう傾向があり、アンラーニングは特に重要な心構え・スキルです。ただ、熟達者だけではなく、熟達者になろうとする過程でも非常に効果を発揮します。
つまり、全てのビジネスパーソンが考慮しておきたいノウハウです。アンラーニングをしなければ「成長」が止まってしまいます。アンラーニングとは、学ばないことではなく、不必要になった心構えやスキルを置いて、新たな心構えとスキルを習得することです。
アンラーニングには、4つのステップがある。
何かを学ぶときに大切になるのは、初めに「全体の見渡し」を持ち、それから「細かい点」を考えることだと言われています。
アンラーニングの全体プロセス
1.きっかけとしての「昇進・移動・上司・研修」
アンラーニングは、外的な刺激をきっかけにして発動します。過去の調査によると、「仕事経験が7割」「他者の関与が2割」「研修・読書が1割」だったそうです。環境の変化によって、自分の行動を見直すときこそがアンラーニングのチャンスです。
アンラーニングの必要性を感じても、「新しいスキルを習得する難しさ、自分自身の心理的抵抗感、職場の理解不足」が阻害要因として横たわります。うまくこれらを乗り越えることで、継続した学習が可能になります。
私が面白いと思ったのが、著者の引用する調査では、新しいスキルを習得する難しさは58.5%で、半数以上だったそうです。しかし、今では、オンライン学習等の新サービスも多々拡充されており、こうしたハードルは工夫次第で解消できるのではないかな?と、思いました。実際に、私の会社では、オンラインのマーケティング学習を全社的に取り入れており、10分程度の講座を80単元に分けて、スキマ時間で勉強できる環境を整えてくれています。
2.原動力としての「学習志向」
学習志向とは、成長を重視するその人の考えです。学習志向は、次のステップの「内省、批判的内省、自己変革スキル」を活性化させ、アンラーニングを支援します。
3.自分の型やスタイルに気づくための「内省」と「批判的内省」
自分の当たり前に気づくことができなければ、自己変革は難しいです。あたりまえを積み下ろすことがアンラーニングなので、この過程は非常に重要です。普段の業務の中で、同僚と仕事ぶりを会話してみたり、帰り道に自分の仕事ぶりを思い出してみて振り返ったり、そうした工夫が必要でしょう。
4.手法としての「自己変革スキル」
自分の中で変える必要があることを見極める「変革の準備」、自分を変えるための「計画性」、変革にあたり他者からの支援を求める「資源の活用」、成長の機会を逃さない「意図的行動」を意識することで、貴重な機会を有効活用し、アンラーニングをうまく発動することができます。
アンラーニングは、業績を上げる。
「学び続ける人間」になるには、「コンピテンシー・トラップ(有能さの罠)」を避け、意識的にアンラーニングをしなければなりません。
終章 仕事のアンラーニング・プロセス
著者は18のアンラーニングの事例を大別し、3つのアンラーニングで得られる効果をまとめました。
①自己完結型な働き方から、ネットワーク志向の働き方へ
自分の力で仕事をすることに固執しすぎず、上司、周囲のメンバー、多様な人々と協力しながら業務を進めることもアンラーニングで見られました。
②保守的な働き方から、顧客志向の働き方へ
正確性、安全性、前例「のみ」を重視する考え方をやめ、顧客という受け手の側からも考える顧客志向へ移行するタイプのアンラーニングも確認されました。
③定型的・受動的な働き方から、革新的・能動的な働き方へ
指示待ちから脱却して、主体的、積極的に改善提案する姿勢を身につけたアンラーニングもありました。
そして、組織における役割が変化すると「意思決定」、「対人」、「情報」に関するマネジメント・スキルもアップデートする必要が出てきます。これにもアンラーニングが有効でしょう。
これらが、ひとりひとりのアンラーニングを組織全体が支援する形で行われたときに、働きがいを感じ、他者との信頼関係が結ばれ、そして、業績が向上するのです。
まとめ
- アンラーニングとは、「学びほぐし」のこと。――過去からずっと持っているスキルや心構えでは変化する時代を乗り切れません。アンラーニングによって学びを止めないことが解決策です。
- アンラーニングには、4つのステップがある。――外的環境の変化を敏感に感じ取れる学習志向を常に保っていることがアンラーニングを開始するきっかけになります。自分を変革するという意志も重要です。
- アンラーニングは、業績を上げる。――ネットワーク志向、顧客志向、革新的・能動的な働き方を身につけることで、働きがい、信頼関係の構築、そして、組織全体の業績向上を実現します。
変化が大きな時代だからこそ、働く私たちも変わっていく必要がありそうです。これまでと同じことをしていては、成長なし!この気持ちを大切に、アンラーニングによって、新しい自分に出会えそうなそんな予感がします。ぜひ、手にとって働きがいのある毎日に向けた行動に移されてはいかがでしょう。