- よりよく仕事をしていく時に、忘れてはいけないことって何でしょうか!?
- 実は、身体を通じて感じた違和感かも。
- なぜなら、ごまかし続けられるものではないからです。
- 本書は、ひとりという小さな単位で商いを考えるための1冊です。
- 島田さんの仕事を通じて、本来的な人の生き方について考えるきっかけがえられるように思います。
夏葉社とは!?
本書は、ひとり出版社を立ち上げた島田潤一郎さんによる、仕事を考える1冊です。いろんな仕事のありかたが存在するこれからの時代において、1つの仕事の意味や意義を共に考えさせてくれる1冊です。
島田潤一郎さんは、76年生まれ。いわゆる就職氷河期をご経験した年代ど真ん中です。就職がうまくいかず、アルバイトや派遣社員をしながら、小説家を目指したもののうまくいきませんでした。
30代に入り、それまで兄弟のように仲良くしていた従兄を事故でうしなったことで、その父母のために1つの詩を中心に編集した本を残そうと思い立ちます。
出版社の知り合いに相談するも、うまくいかず、自ら夏葉社という出版社を立ち上げ、出版に至ります。
当社の事業計画書はA41枚。事業目的は、「何度も読み返される、定番といわれるような本を、一冊々々妥協せずにつくることによって、長期的な利益を確保する。そのために、会社を応援してくれる本屋さんを全国に100店舗開拓し、それらの店を重点的に営業していく」というものでした。
浅く広くではなく、狭く深く、市場にも、ひとの心にも残る編集と出版を志したものです。
一回読んだだけではわからないけれど、ずっと心に残る本。友人に話したくなるけど、上手く伝えられなくて、「とにかく読んでみてよ」としかいえない本。ぼくの孤独な時代を支えてくれた大切な本。ぼくが死んだあとも残る、物としての本。
事業計画書
そういう本をぼくはつくりたかったし、もし、つくることができたら、ぼくの仕事はずっと続いていくはずなのだ、と信じた。
たとえ、本屋さんにおいてもらえなくても、最後は1人1人に手売りをしようとも考えていたそうです。
島田さんが違和感を感じていたことは何だったのでしょうか。
小さな違和感を大切に!?
ものも、本も、短距離走を走っているようだった、と、島田さんはとらえます。
1週間、1ヶ月でどんなに長くても1年で結果を出さなければ、市場から消えてしまう。本だけでなく、市場に流通する商品も同じです。新しいものが作られては消えてく、そういした刹那的な状況に、物悲しさを覚えない人はいないはずですが、市場の原理からして、どうしてもそれが維持される仕組みにあります。
島田さんが、見出したのは、絶版になっている本にもう一度、息を吹き込むという「事業の起点」です。“いまを生きる作家”の本は、既存の出版社が作っている。夏葉社は、絶版担っている本をもう一度、自分の手を通じて世の中に出していくことを志したのです。
数十年前の作家と編集者が魂を削ってつくった本に、もう一度あらたな息吹を吹き込んでみたかった。魂のリサイクル。
復刊という選択
誰もが従わずにいられない資本主義の原理の中で、どうしたら自らの違和感を無視せずに、志を絶やさずに、仕事をしていくことができるかを、突き詰めた中での起点だったと思います。
島田さんの本づくりのスタンスは、とても小さな、そして一人単位を重視するものです。お客さんを万単位ではなく、ひとりとして捉えて、仕事のやり方を抜本的に変えていきます。万単位で捉えるならば、多くの人に知ってもらうために宣伝をしていかなければならないので、テレビや雑誌、新聞などのマスメディアでの露出と論調を基軸にものごとを設計することから逃れられないでしょう。より早く、より広範囲に、よりダイレクトに。
けれど一方で、そういう社会を生きにくいと思っている人たちがいる。
大きな声、小さな声
自分のペースでものごとを考えて、仕事はできるだけコツコツとやりたい・・。島田さんは、自分のことや友人のことであると捉えますが、実は、多くの人にとって、どこか共通の気持ちのような気もします。多かれ少なかれ、社会に対する疲弊感のようなものが、蓄積されているように感じます。
島田さんの大切にする視点と同じようなものに、気付かないふりをしてはいけないのかもしれないと思います。
彼らに、もっと会議で発言して下さい、とか、あたらしいイノベーションを起こすための企画を考えて下さい、とかいう人たちの気が知れない。彼らには彼らの個性があり、持ち分がある。
大きな声、小さな声
そういうものを低く見積もったり、残ったり、壊したりするような風潮があるのだとすれば、そういう流れに抗う存在として、本はあると、島田さんは説きます。
小さな仕事とは!?
意志があれば、続くというのではない。けれど、意志がなければ、いつの間にか遠くへと流されてしまう。
あたらしいもの
小さな声に寄り添うということは、手間暇がかかり、しかもコツコツとした毎日の連続です。それは、華々しい気持ちなどから程遠いかも知れないですが、たしかに人として大切にしたい「生き方」が仕事になっているような、そんな感覚の日常の積み重ねがあります。小さな声に応えていくというのは、そういうことなのであると、島田さんは言います。
島田さんの編集には、自分自身が本に救われてきた経験を通じた、思想があるし、また、社会に対する違和感に対する見立てがあるし、そして、何より意志があるのだと思います。
小さく商いを始め、確実に生きること、こうしたことが幸せの実感を得るための秘訣なのかもと感じます。
はじめる勇気、待つ勇気 たいせつなのは、待つことだ。
はじめる勇気、待つ勇気
待つことができるのは、それが「ひとり」だからだ、といいます。お客さんを待つにしても、人と待っていたら、迷惑をかけてしまいます。そうではなく、自分ひとりが引き受けられる範囲のことを行っていれば、待つことできる。待ったものごと、つまり時間がかけられたものというのは、今後も永く残っていく可能性があるものになるはずです。
小さな仕事は、小さなきっかけからはじまる。
人と人のあいだに
市場に転がっているネタや、業界内の特別なコネクションではなく、小さな仕事というのは、人と人の間の小さなきっかけからはじまります。誰かの一言から、あるいは、誰かの思い出から。そうした手触りのある「仕事」の起点を私たちは、もっと大切にして、自分の心に素直になってみてもいいのかも知れません。
小さな仕事を考える時、こちらの1冊「【おかねとは、何か!?】山の上のパン屋に人が集まるわけ|平田はる香」の商いも思い出されました。自らの商売の心構えをどのように俯瞰して捉えるか、大切な視点をいただけます。
まとめ
- 夏葉社とは!?――島田潤一郎さんによって設立された小さな出版社です。
- 小さな違和感を大切に!?――“生きづらさ”に蓋をして生きなくてもよいのではないでしょうか。
- 小さな仕事とは!?――人と人の間の小さなきっかけから生まれるものです。