【日本人の心の旅路は、チベットにある!?】精神の考古学|中沢新一

精神の考古学
  • 私たちはいかに、世界を認識することを磨いてきたのでしょうか!?
  • 実は、チベットの「ゾクチェン」という信仰にヒントがあるかも。
  • なぜなら、古代から秘密裏に伝えられてきた心のあり方に関する教えです。
  • 本書は、「ゾクチェン」を自ら体験した中沢新一さんによる回顧録です。
  • 本書を通じて、心のあり方、世界の捉え方について、野生の信仰から学べます。
中沢新一
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ゾクチェンとは!?

ゾクチェンは、チベットの仏教徒によって守られてきた信仰です。仏教の教えの一形態として捉えられることがありますが、実は仏教よりも古い歴史を持ち、実際には、チベット古来の知恵の集積であることがわかります。古代の人々が、もしかしたら洞窟に暮らしていた時代に、自分たちが住む世界と、心の問題について、深く考え、伝承していた知識と知恵の体系とも捉えられます。

そんなゾクチェンの存在を知り、実際にゾクチェンのカルチャーに触れ、修行の中から、その真相に迫ったのが中沢新一さんです。

人間の精神(心)の深い地層にまで潜って行くと、しだいに言語的思考の影響力が弱まり、消えていくようになる。

まえがき

中沢新一さんがゾクチェンを目指したのは、1990年代のこと。当時はバブル崩壊後の閉塞感の中、日本中に悲壮感が漂っていた時代でした。絶対的な地位にあると見られた大手企業が、倒産し、有価証券が一夜にして、紙切れとなりました。

現代社会の上澄みを深掘りして、精神の別の地層へと向かうことをおのずから志向し、そして、ゾクチェンを目指しました。

そもそも、人間の精神とは、文明の発展とともに展開されてきました。「新石器革命」と呼ばれる出来事が大きなインパクトを与えています。それまで自然の中で、狩猟採集をしてきた人は、農業を営むようになりました。小麦や大麦の種子を品種改良して、収穫量の多い栽培種に作り替えながら、いま・ここだけではなく、将来を期待したり予測したりする精神性を持つことができました。

それまで固定化した像を持たない流動体のようなものだった精神が、テラコッタの像に表現され、儀礼や崇拝の対象になったり、象徴化された神々としても表現され、信仰のあり方も極めて「自然的なもの」に対するものから、「シンボル」に対して行われるようになったのです。

人は創造性という叡智を手に入れたのです。これによって文明の発展が加速度的に上がり、私たちは物質的に豊かな生活を送ることができるようになりました。しかし、その弊害も大きく、想像力が豊かであるということにより、いま・ここに集中できないシーンも増え、それらが生む「幻想」に苦しめられることも増えました。

現代社会を俯瞰してみると!?

農業では「自然からの贈与」として思考されてきた増殖性が、資本制においては「余剰価値」へと姿をかえて、社会の見えない下部構造に組み込んである。

1 旅立ちまで

この状態を中沢新一さんは、「新石器革命」に始まる段階の末期にあたるとしています。増殖的成長の限界がはっきりとして見えていて、この先は、異なる思想や信仰によってしか、新たな発展は見られないからと言うことです。循環型社会や、サーキュレーションエコノミーなどの視点が注目される昨今とリンクします。

この段階からの脱出は極めて困難です。というのも、私たちの心が「増殖すること」に常に囚われているからです。増えたり、大きくなったり、多くなったりすることに常に慣れており、これを一義的に「よし」とするカルチャーに振れ続けている結果、別の何かを信じることが難しくなっています。

社会は人と人の繋がりであるため、一人が別の何かを目指したとしても、結局は日常によって引き戻されてしまうのです。よっぽど、山籠りでもしない限りは。

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ゾクチェンは光!?

ゾクチェンは、自らの心を光としてポジティブに捉えます。煩悩に流されるままに妄想的な世界観を生きてきた人々は、自らの心の中の光を忘れてしまっています。心の本性は光であるにも関わらず、むしろそれが自分にはどうしようもない暗黒の力だと、思い込んでいます。

ゾクチェンを信仰する人は、この本来の心の光を見るために、朝日を浴びながらヨーガをします。身体の内部の深いところにある光を、心の本性の跳躍する動きを通して、実際に見ます。

心の中の光を見つめることができれば、とても幸福な気持ちになります。

(太陽の)光で闇を払っているのではなく、太陽の光で心の内面の光が外に出てくる様子を見て、幸福な気持ちになっているのです

6 太陽を見つけるヨーガ

自らを肯定的に見るスタンスをゾクチェンは、精神世界の考え方から見極めることを進めてくれます。人はそもそも生存本能からネガティブ・バイアスを持ってしまっています。だからこそ、ものごとに触れてもネガティブなマインドセットに移ってしまう可能性が多分にあります。

でもそうした状態に気づきを得ることができれば、自らの中にある光を見て素直に応える事が可能です。

精神性については、こちらの1冊「【自己対話が「直感」を導く!?】直観を磨く 深く考える七つの技法|田坂広志」も刺激的な視点を提供してくれます。ぜひご覧ください。

まとめ

  • ゾクチェンとは!?――仏教が生まれる以前からチベットで培われてきた叡智です。
  • 現代社会を俯瞰してみると!?――外部の増殖のみを信仰し、自らの内面を見つめる機会を失っています。
  • ゾクチェンは光!?――人間の心には常に光があります。
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