- どうしたら、深い思考を自らすることができるでしょうか。
- そのためには、自らの天才性を引き出すことがポイントです。
- 単に「自己限定」しているだけで、わたしたちはみな天才の可能性を秘めているのです。
- 本書は、そんな深く考える方法を説く1冊です。
- 本書を通じて、改めて何を・どうやって考えればいいのか、そもそも考えるとは何なのかを検討することが可能になります。
前回の投稿「【「直感」へ至るには!?】直観を磨く 深く考える七つの技法|田坂広志」では、「論理」と「直感」を繋ぐ思考法として7つのうち初級の3つをご紹介しました。今回の投稿では、残り4つのご紹介をしながら、田坂広志さんが語る究極の賢明な自己との対話について解き明かしていきたいと思います。
7つの思考法はこちらです。
1)直線理論だけで考えない「循環論理」の思考法
2)二項対立構造で考えない「対立止揚」の思考法
3)個別問題だけを考えない「課題回帰」の思考法
4)狭い視野の中で考えない「水平知性」の思考法
5)文献知識だけで考えない「体験知性」の思考法
6)自己視点だけで考えない「多重人格」の思考法
7)直感のちからを用いて考える「自己対話」の思考法
重要な問いとは!?
前回の投稿に続き、4つめの思考法から進めたいと思います。4つめの思考法は、4)狭い視野の中で考えない「水平知性」の思考法です。
水平知性に対して、垂直知性とは、専門性のことです。ひとつの分野を深掘りしていく知性のことです。一方で、水平知性とは、様々な専門分野を横断的、水平的に結びつけていく知的能力のことです。この能力を磨くには、心のなかで「深く大きな問い」を常に抱えていることが賢明です。
それは、人間の存在であったり、ものごとの関係性であったり、そうした存在意義的なものを検討する問いです。
垂直知性では、「自分の専門性」でどうにか答えを出すことができるか?と考えるのに対して、
水平知性では、「私の持っている専門知識」はどのように役立つのか?と考えることができます。
このように思考のアプローチが異なります。
さらに、「深く大きな問い」を持っていること自体が、日々の思考にも影響を与えます。例えば読書をするときにおいても問いのありなしは異なるアプローチを取ることができます。「この著者が言いたいことは何か?」ではなく、「この本の中に、自分の深く大きな問いに対する答えがあるか」を心にいだけるようになります。
5つめは、5)文献知識だけで考えない「体験知性」の思考法です。これは、どれだけ経験を踏まえて「暗黙知」を得ることができるか、ということです。
体験知を獲得するためには、自ら積極的に行動する必要があります。
現在の我が国の教育制度は、生徒や学生に「文献知」の学び方は教えているが、「体験知」の摑み方を教えていないからである。
第5話 「体験知性」の思考法 本で読んだ知識ではなく、体験から摑んだ知恵で考える
誰も教えてくれない大切なことに、人生や仕事を拓くヒントがあります。
そう考えると、1軸)大切なこと↔そうではないこと と 2軸)教えてもらえること ↔ 教えてもらえないこと の4象限の中にヒントがあるのかもしれないですね。「なぜ大切なことにも関わらず、教えてもらえないのか」、もっと言えば、教えるシステムが整っていないのかが、ヒントなのかもしれません。
大切でない | 大切なこと | |
教えてくれること | ? | 学校教育 |
教えてくれないこと | ? | ココ |
賢明なもうひとりの自分!?
人の視点を用いて考えることを身につけることも大切です。「自分視点」ではなく「他者視点」でいかに考えることができるか!?つまり「多重人格視点」で考えることが大切です。
なぜ、「自分視点」だけに陥りがちなのか。
それは、次の2つが足かせとなるからです。
1)「エゴ」の強さ
2)「経験」の不足
他人と同じような深い経験をすることで、他人と同じ気持ちになることができます。つまり、「多重人格視点」を得るためには、やはり「行動」が必要になります。苦労をしてみて、他人と同じ感情に浸る。そのことで、いつしか、その時抱いた気持ちを引き出して、使うことが可能です。
最終的に、物事を考える際に、自分で考えるのではなく、「もうひとりの賢明な自分」と一緒に考えるスタンスを身につけることです。
「賢明なもう一人の自分」と対話する。
第7話 「自己対話」の思考法 心の奥の「賢明なもう一人の自分」と対話しながら考える
大切なのは、思考法1~6で鍛えた、「直感力」を味方につけることです。もう一つ大切なことは、自分の中に、まだ見ぬ大いなる力が眠っていることを常に信じることです。
自分はこんなものだ、と自己限定をしてしまうと自分を想像以上に萎縮させてしまいます。限界を作るのは、常に自分自身です。
どうしたら自己限定をせずに済むのか・・それは、「天才」はなぜ天才と言われるのかを考えると、自ずと答えが見えてきます。
本当の天才とは!?
大いなる何かに導かれるとき、人は自身の他者も想像しえない力を発揮することができます。「自分は大いなる何かに導かれている」や「自分は大いなる何かと繋がっている」という感覚を持ち、「必要な叡智はすべて与えられる」という感覚を持つからです。
「天才の秘密」を知ることである。
終話 あなたは、自分の中に「天才」がいることに気がついているか
つまり、ここでいうところの「天才」とは、自分には他者にはない特別な力が備わっている!などという小さなエゴの叫びをあげるような人ではなく、「人間は、誰の中にも、想像を超えた素晴らしい才能な能力、そして可能性が眠っている」という意味を知る人なのです。
例えば、iPod、iPhone、iPadなどの開発によって情報技術の分野で劇的な変革をもたらしたアップル・コンピュータの創業者、スティーブ・ジョブズ。誰もが「天才」と認めるジョブズは、「現実歪曲空間」(Reality Distortion Field:RDF)を生み出す能力があると言われていた。
第8話 「天才」の思考法 必要な叡智は自然に降りてくると信じて考える
ジョブズが一つの製品の開発を提案するとき、最初は、周りのスタッフの誰もが「現実的に見てそれは不可能だ」と思うコンセプトを提示するのですが、それらのスタッフがジョブズと熱い議論をしていると、段々と、それが実現できそうな気がしてくるのです・・。これを、周りのスタッフが尊敬の念を込めて「現実歪曲空間」を生み出すカリスマ的能力と呼んだというわけです。もし、ジョブズが「天才」であるならば、それは、何よりも、彼が「自己限定」をしない人物であったからなのです。
こうした「自己限定」の意識を持たないという特長は、ジョブズだけでなく、現代の天才的起業家と呼ばれているイーロン・マスクが、堂々と、二〇二〇年代に「火星移住計画」の第一段階をスタートすると宣言している姿も同様です。
古くは、天才的発明家エジソンが、数千回の材料実験に失敗したとき、「素晴らしい成果を挙げた。これらの実験を通じて数千種類の材料が役に立たないことを発見したからだ」と述べたことにも象徴されています。
そして、天才が「自己限定」の意識を持たないという事例の極めつけは、軍事的な天才と呼ばれたナポレオン・ボナパルトが、「吾輩の辞書に不可能という文字は無い」という言葉を残していることです。
もとより、「天才」と呼ばれる人々の特長は、これ以外にも、人並外れた努力をすることや、強い信念を持つことなどがあるが、最も重要な共通項は、「自己限定」をしないということです。
- 人間の可能性を信じることができるか!?
- 天才の本質に触れることができるか!?
- 自分との対話を実践することができるか!?
これらの実践を通じて、自分の中の可能性を信じ、解放していくことが理想です。
あなたの中には、想像を超えた素晴らしい何かが、眠っている。
終話 あなたは、自分の中に「天才」がいることに気がついているか
大いなる何か、については、こちらの投稿「【大きな何かよ、導きたまえ!?】運気を磨く~心を浄化する三つの技法~|田坂広志」もぜひご覧ください。
まとめ
- 重要な問いとは!?――常に深く大きな問いを抱えることです。
- 賢明なもうひとりの自分!?――自分の可能性を信じることで見出しましょう。
- 本当の天才とは!?――大きな何かを信じ、自己限定しない人です。