- どうしたら資本の搾取の重力から脱し、自由を得られるでしょうか。
- 実は、リスクを適度に取ることがキーです。
- なぜなら、資本の側に回ることが大切だからです。
- 本書は、経済評論家の山崎元さんが後進に伝える経済を俯瞰する1冊です。
- 本書を通じて、お金との上手な付き合い方を知り、人生観のアップデートできます。
経済を俯瞰せよ!?
本書は、山崎元さんが死の床にあるとき、大学にこれから進学するご子息のために残されたメッセージを書籍化したものです。今の時代の見立て、これからの時代の生き方について、経済評論家として、父として、さまざまな視点でものごとを語ってくれています。
子どもたちも含めて、読者には、お金を効率よく稼いで、正しく増やし、気持ち良く使ってほしい。そのための考え方と具体的な方法を伝えることが本書の目的だ。
まえがき
まえがきから、山崎元さんの筆致は、鋭く厳しさをはらんだものになっています。毎年のように繰り返されるリクルートスーツに身を包んだ若者について次のように語ります。
彼らの大半が、経済の「不利な側」に回って、企業に利益を吸われて効率の悪い一生を送る。
まえがき
昭和の時代から思想をアップデートするべきです。昭和の時代のサラリーマンであれば、「できるだけ大手の安定した会社に入り」「失敗を避けながら人事評価上の競争を勝ち抜いて」「なるべく偉くなること」が職業人生としての目標でした。当時としては、順当な考え方であったと思います。この結果、勝ち抜けさえすれば、相対的には一定程度のお金持ちになることができました。
また、別の働き方として、医師や弁護士のような専門職になって「高い時間単価」を得ることも手段の一つです。長年「収入が良く、社会的なステータスが高く、安定していて、良い商売だ」とされていました。ただし、これらの専門職も「自分の時間を売ってお金を得る」時間売のビジネスもであるであることには変わりありません。
既存の働き方にそのままハマっていくのではなく、自分なりの考え方で、特別な道を選択してみましょう。「新しい働き方」を目指すのです。新しい働き方は、効率性と自由を求めます。
新しい働き方の定義を次のようにしてみましょう。
1)「時間の切り売り」では達成できない効率性を求めて、
なるべく若い時点で効率よく財産を作ることをめざします 。
2)働き方の「自由」の範囲をかつてよりも、もっと大きく拡げます。
これらのベクトルはそれぞれが支え合い、相乗効果を発揮します。そのために必要なことは、
1)常に適度な「リスク」をとること。
2)他人と異なることを恐れずにむしろそのために「工夫する」こと。
このマインドセットを持つ訓練をするべきです。
そうすれば、「自分を磨き、リスクを抑えて、確実に稼ぐ」ことを目指す古いパターンよりも、「自分に投資すことは同じだが、失敗しても致命的でない程度のリスクを積極的に取って、リスクの対価も受け取る」働き方を実現することができます。
資本主義において資本家が莫大な収入を得られるのも、一定のリスクを取っているからです。自分の資産を投じて事業を興す。もしかしたら失敗するかもしれないし、成功するかもしれない。そんなある種の賭けをしているからこそ、リターンを得られる。リスクを取らずして、効率性を追求することは、世の中の経済の仕組み上、難しいのです。
ちなみに、資本主義については、こちらの1冊「【経済は、必ず一巡する!?】マルクスる?世界一簡単なマルクス経済学の本|木暮太一」でぜひ俯瞰してみてください。
4つのリスクの取り方とは!?
1)自分で起業する
2)早い段階で起業に参加する
3)報酬の大きな部分を自社株ないし自社株のストックオプションで支払ってくれる会社で働く
4)起業の初期段階で出資させてもらう
これらを意識して、「株式市場」におけるレバレッジを検討しましょう。株式性の報酬には複数の魅力が伴うからです。
①規模拡大による利益の掛け算が見込めます(面的な拡大)
会社というものは、一旦うまくいくと、商品・店舗を増やすカタチでビジネスを拡大します。成功した会社の株式を持つことによってこの利益拡大の一部を得ることが可能です。
②勝利利益が今評価されている時間方向の掛け算になる(時間方向の拡大)
株価とは、大まかには一株あたりの将来の予想利益を現在価値で評価したものです。つまり、今年の利益だけでなく、来年、再来年、・・・さらに将来稼ぐであろう利益を成長率に対する予想も織り込んで評価したものを「今の価値」として評価して取引します。事業が軌道にのった会社の株式は、「面的な拡大」×「時間方向の拡大」の両方向から掛け算が働き評価されるのです。
③成功報酬は評価が甘くなり勝ちになる
- 「一定額(比率)の手数料の下に頑張ります」・・・固定手数料 と、
- 「利益を獲得したらその○○%をもらいます」・・・成功報酬手数料 を、比べてみましょう。
これらを金融論的に、成功報酬の価値を固定手数料に換算して評価すると、固定手数料の何倍にもなっていることがわかります。成功報酬の実質的価値は、リスクを大きくすることで意図的に拡大できる場合もあります。成果主義では、無難をめざすよりも、リスクを大きく取る方が有利なのです。
④株式の報酬はキャッシュの報酬よりも甘くなりがちである
株式性の報酬は、キャッシュで提供される報酬よりも甘くなる可能性があります。というのも、企業にとって今支払うべきお金を一定程度確保しておくことは、投資体力の観点やよりよい人材確保の観点などで、優先したい事項だからです。資本がなくては、新たな収益を得るリスクを取ることもできません。だから、今払わなくて良い現金性のなのない株式であれば、インセンティブの支払に甘くなりがちになります。
⑤株式のリターンは賃金上昇率よりも大きい
株式のリターンは賃金の上昇率よりも大きくなりがちです。株式性の報酬はもらった瞬間には換金できない場合が多いですが、その間にもリターンを稼いでくれる公算が大きいものです。
労働者の数は相当数あります。多くの労働者が、取り替え可能であると言って良いです。ポイントはここです。たとえ、労働者の一人が、資本家と交渉して賃金を上げてほしいとしても、資本家の多くは、その労働者が提供しているスキルが十分に高くなければ、賃金交渉に応じないでしょう。そもそも労働者として働いているのであるから、そのスキルは取り替え可能であるとも捉えることができそうです。
取り替え可能な労働者の立場は、弱いのです。
また、給料の本当の意味を知れば、株式のように成果報酬的な支払は難しいことがそもそも理解できます。給料とは、その労働者が明日も会社のために働くに必要な経費なのです。疲れを癒やさなければならないし、食事も取らなくてはならない、あるいは、その労働者が家族を持っていれば、その家族を養わなくてはならない。こうして必要経費としてその労働者が必要な分だけが、会社から支払われています。
こうした労働と給料の事実を知ることによって、自身の考え方や行動を検討するヒントを得られます。こちらの1冊「【自分の「価値」を俯瞰し、鍛錬し続けよ!?】超入門 資本論|木暮太一」もぜひご覧ください。
お金運用の基本とは!?
1)生活費の3~6ヶ月分を普通預金で取り分けます。
2)残りを「運用資産」として「全世界株式のインデックス・ファンド」に投資します。
3)運用資金に回せるお金が生まれたら、追加投資します。
4)一方、お金が必要になったら、必要分だけを解約します。
まず、この基本的なサイクルを構築しましょう。いち早い活動が効果を発揮します。
このようにして資産形成の基本を作っておいて、あとは稼いだお金をしっかりおおらかに使っていくことをおすすめします。使い方としては次のような視点を持っておくと良いでしょう。
1)知識
2)スキル
3)経験
4)人間関係
5)時間
人生の途中でお金が足りないと思ったら、節約よりも先に「もっと稼ぐ方法はないか」と考えるようであってほしい。
お金は、シンプルに管理して、おおらかに使う
この点のとくに人間関係や経験については、山口周さんもこちらの1冊「【オープンと挑戦がキー!?】仕事選びのアートとサイエンス~不確実な時代の天職探し|山口周」で指摘していました。ぜひ合わせてご覧ください。
マネーな話が続いた後、山崎元さんは、こんなことをあとがきに記してくださっています。
さて、最後に「幸福」に関して父が見つけた「秘訣」をお知らせしましょう。
おわりに
それは、幸福感は一時のもので「人生は通算成績で計れるものではない」ということです。
「本人」は、最後まで幸福感を感じることができます。一方、「通算成績」を最後の最後まで持ってくことはできない。
つまり、幸福のための努力は最後までできる。しかし、通算成績は「他人」にしか見えないし、これを持って行くことはできません。こちらについては、将来のあれこれが見られないことが純粋に「残念」ではありますが、「希望」もまた捨てる必要がありません。
つまり、「幸福」と「希望」の両方に対して、それぞれに誠実に向き合うといいのです。君への手紙の最後を、「父がやりたいこと」で終えたのは、そういう意味でした。
息子本人と、すべての読者の幸せを祈ります。
私たちは、いかに生きるのかについて、考え行動するきっかけをくださるすばらしい1冊だと思います。ぜひお手にとって、ご覧ください。
まとめ
- 経済を俯瞰せよ!?――搾取される側から、リスクを取り、一歩外で出てみましょう。
- 4つのリスクの取り方とは!?――株式市場でのレバレッジを検討しましょう。
- お金運用の基本とは!?――シンプルに管理して、おおらかに使いましょう。