- 新時代で事業を興していくポイントは、どこにあるでしょうか!?
- 実は、デザイン思考がキーになるかもしれません。
- なぜなら、デザイン思考は作りながら見直すスタンスを大切にするからです。
- 本書は、変化の時代において、大切にしたいデザイン思考を俯瞰する1冊です。
- 本書を通じて、これからの時代において創造性を発揮するヒントを得ることができます。
今はどんな社会か!?
もし君が、未踏峰連山世界初登頂を目指すならば、今すぐ快適温室空間に別れを告げ、世界で最も過酷な競創空間に身を投ぜよ。
石井裕(MIT Media Lab教授)
さらに石井裕さんは、扉ページにて、次のように続けます。
そして徹底的な批判=建設思考・他流試合/異種格闘技を通して、3つの知性:哲学・技術・社会的知性を磨け。戦い抜く3力=出杭量・道程力・造山力を鍛えよ。
石井裕(MIT Media Lab教授)
今は、変化の時代です。「目の前で本業のある市場が消えていく」「新たな新規事業を作らないと生き残れない」そんな会話が日常的に社会の中で聞こえてくると思います。
コロナ禍を経て、人の働き方も変化しました。いまでは、リモート導入は当たり前で、多くのビジネスパーソンが働き方の変化を体験して、変化できる手応えを得られたと思います。
さらに、情報環境の進展も目覚ましく、とくにこれまで情報の作り手は一定の投資体力のある企業や組織に限られていたものが、個人でも気軽に情報発信ができるようになりました。メディアを通じてだけではなく、SNSなどのプラットフォームを通じて、相互に情報をやり取りすることができます。企業・組織やブランドもまるで、消費者と同じレイヤーにあるフラットな存在として、情報をやり取りしています。
また、AIの実用化も進んでいます。これまで難しかった情報処理や検索についても機械の力を借りて、より生産性を追求できる社会になりました。一方で、人は何をするべきか、人は何をしたいのか、という問いも盛んに語られるようでもあります。
こうした変化の中で、既存事業の領域でより深堀する行為だけではなく、新たな領域へのチャンスの芽を見出し続けるためには、何が必要でしょうか。
4つの大切な着眼点を整理してみましょう。これらは、21世紀型のスキルセットです。
1)思考の方法――想像力とイノベーション、クリティカル思考と問題解決、意思決定と学習
2)仕事の方法――コミュニケーション、コラボレーション
3)仕事の道具――ICT(情報通信技術)とデジタルリテラシー
4)世界で暮らすための技能――市民性、生活と職業、個人的および社会的責任
これらの項目について、それぞれ自己を振り返り、あるいは、自分の創る・所属する組織のスタンスを明確にしておく必要があるでしょう。
デザイン思考を導入しよう!?
21世紀型のスキルセットを用いながら、忙しい毎日の中でも、少しでも探索のスタンスを持ちながら、挑戦を続けていくことがポイントです。
著者佐宗邦威さんは、デザイン思考にそれを求めます。デザインのアプローチにくっきりとした輪郭をもたらすために、ビジネスとデザインについて比べてみましょう。
デザインのアプローチ
- 作りながら考える
- 形にして議論する
- プロセスはゆるく設定し、柔軟に変える
- 良い点を見つけて強める
ビジネスのアプローチ
- 何を作るか考えてから作る
- 前提条件をしっかり定義し、論理的正しさから結論を合意する
- プロセスは全員が明確にわかるように構造化する
- 悪い点を潰していく
デザインのアプローチ(デザイン思考)を別の角度で理解して見るには、こちらの1冊「【「手中の鳥」を探せ!?】エフェクチュエーション|吉田満梨,中村龍太」もぜひご覧ください。
忙しい日常においても、デザイン思考を求めていくために、実践するコツを参照しましょう。スタンフォード大学 d.schoolとIDEOの創業者でもあるデイビッド・ケリーさんは、「長年企業と働いていた経験のなかで、周囲の環境が“クリエイティビティを殺してしまう”環境である場合に役立つデザイン思考の実践方法を9つの視点であげてくれています。
1)自分が想像力を持っっていることを信じ続けることを強く決意する
2)日々、旅人のような気持ちで、周りの世界から新しい発見を探そうとする
3)常にリラックスし、周囲にオープンな雰囲気を作り出す
4)ユーザーに寄り添い、共感しようとする
5)まず、現場に行って観察しようとする
6)「なぜ」を繰り返す
7)目の前で問題が見えていても、視点をズレした、本質的課題に置き換える
8)自分の想像力を応援してくれるネットワークをつくる
9)偶然の出会いを大事にする
希望となりえるのが「デザイン思考」だと、私は考えています。
序文 入山章栄(早稲田大学ビジネススクール准教授)
Hな人を目指せ!?
ひとりひとりのキャリア形成についても、新たな視点を持ってみましょう。英国の大手デザインファーム、シーモアパウエルのシニアデザイナー池田武央さんは、「H字型人材」への変化を提唱しています。これまでは、T字型人材が説かれていました。これは、1つの専門性(深掘り;Tの下に伸びる棒)と分野横断的な知識(横断;Tの横に伸びる棒)を持っている人のことを指しました。特定の分野を極め、その深い専門知識と経験・スキルの蓄積を自らの縦軸にすえつつ、さらにそれ以外の多様なジャンルについても幅広い知見を持っているという意味合いです。
これに対して人材開発の世界では、2つの専門性を持ち、視点を切り替えて考えることができる人材の重要性が指摘されるようになり、「T」に対して「H」的人材の必要性と重要性が語られています。
みずからのキャリアを振り返りながら、これからの未来キャリアを考えるためのヒントになる考え方です。
ものごとをいちから作っていくためには、3つの視点が欠かせません。
1)デザイン:人間の生活にとって理想的な姿を描く力(What to do)
2)エンジニアリング:理想的な姿への解決策を実現させる力(How to make)
3)ビジネス:解決策のインパクトを持続可能に最大化する仕組みを作り、人を動かしていく力(How to maximize)
過去にはこの3つの機能は分業で行われていましたが、少人数のチームで協業できる人材を育成する方向に向かっているのです。
越境人材という道
ものごとの横断をしながら、概念と組織を繋げられる人材が活躍する時代と言ってもいいかもしれません。これまでのやり方に固執するのではなく、あたらしい方法を検討しながら進めていくことがポイントです。
そのためには、既存の組織の中だけで活躍することではなく、外での活動も自ら作り出していくことが必要です。越境がキーです。越境人材については、ぜひこちらの1冊「【越境人材は、2度死ぬから、生きる!?】越境学習入門|石山恒貴,伊達洋駆」をご覧ください。
まとめ
- 今はどんな社会か!?――変化の続く社会の中で、トライを続けていくマインドセットがポイントです。
- デザイン思考を導入しよう!?――“現場”からヒントを探り続ける視点を大切にしましょう。
- Hな人を目指せ!?――2つ以上の専門性を行き来できるスタンスとスキルセットを持ちましょう。