【バリューを高めるには!?】GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織のつくりかた|千田和央

GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織のつくりかた
  • どうしたら従業員によりよい協働をしてもらうことができるでしょうか!?
  • 実は、カルチャーの醸成がとても重要かもしれません。
  • なぜなら、従業員同士、互いに共通認識が協働の素地となるからです。
  • 本書は、オールリモートでありながらNASDAQ上場を果たしている企業GitLabの特徴と工夫を詳細に学べる1冊です。
  • 本書を通じて、本質的DXを思考するにあたり、多くのヒントを得られます。

カルチャーアドとは!?

前回の投稿「【カルチャーは、バリューによる?】GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織のつくりかた|千田和央」に続き、今回もこちらの1冊『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた ドキュメントの活用でオフィスなしでも最大の成果を出すグローバル企業のしくみ』をレビューしていきたいと思います。

GitLabは、オールリモートでありながらNASDAQ上場を果たしている企業です。当社は世界中に点在する従業員のマインドセットを上手に取りまとめて、協働の素地を作ることに成功しています。

大切にしているは、カルチャーです。組織風土や組織文化のことです。わたしたちには、どんなミッションがあって、どんな未来像を想像しながら、現在の業務に当たっているのか、などの共通認識を一人ひとりが持つことによって、互いにコラボレーションしやすくなり、結果的に柔軟でしなやかに強い組織ができます。

GitLabに限らずグローバル企業の多くが、「カルチャーアド」という観点を重視するようになっています。カルチャーアドとは、カルチャーは変化し続けていくものだという認識のもと、カルチャーをより良く成長させられる人財かどうかという観点で採用や評価をする活動を指します。カルチャーとは人によって醸成されるという本質を考える活動です。

もともと「カルチャーマッチ」という概念も存在しました。これは、組織のカルチャーに合うかどうかで採用や配置、評価を行うものです。でもこれでは、カルチャーに合わない人の対処にこまることになります。カルチャーに合わない人財は「放置しておくと暗黙的なやり方を踏襲しないため、パフォーマンスが発揮されない」と考えるからです。

最近の研究では、この「暗黙のやり方」が必ずしも良いことではないとわかり始めています。実際にスタンフォード大学経営大学院教授チャールズ・A・オライリーさんは、『両利きの経営』において、次のようにおっしゃっています。

カルチャーは環境や戦略に合致させるため調整され続けなくてはならない

チャールズ・A・オライリー『両利きの経営』

強固なカルチャーは、その会社のビジネスで歴史的に経験してきた「勝利」をもとに醸成され続けます。しかし、固定化されてしまえば、排他的になり、また、変化やリスクに柔軟に対応することが困難になります。

そのために、マッチではなく、アド(追加)の視点で、人の新しい風を吹き込むスタンスに企業経営、組織運営の軸足が移っているのです。

両利きの経営については、こちらの投稿「両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く |チャールズ・A・オライリー,マイケル・L・タッシュマン」も合わせてご覧ください。

バリューを磨け!?

カルチャーは、人によってアド(追加)されるものであると考えてみるのが重要です。それに加えて検討したいのが、どうしたら、組織内でカルチャーを醸成してけばいいでしょうか!?ということです。

そのためには、カルチャーはいかに醸成されるのかについて、解像度を上げ感がてみることが大切です。

カルチャーを「バリューを体現した結果として歴史的に構成されていく暗黙のパターン」であると考えると、「市場環境に適応した明示的なパターン」がバリューです。

カルチャーマッチではなくバリューマッチ

つまり、市場において価値提供することができるアクション(活動)、優先順位、禁止事項などを具体的に示したもの=バリューを意識することが、カルチャー醸成に繋がると言えます。

このバリューにマッチする人財を選定することを目指せば、その人の性格や信条などに触れることなく、そのバリューを提供する意志のある人全体を雇い入れたり、ジョインしていただくことが可能となるため、価値観、文化、属性の違いを超えて、コレボレーションを作ることができます。

GitLabは、バリューを6つで規定しています。

1)コレボレーション・・メンバーの生産性を単純合計した「潜在的な生産性」から「プロセスロス」を引き、そして、「プロセスゲイン」を追加した大きさで、実際の生産性を測る必要があります。互いに思いやりを持ち、情報をシェアし、問題が起きたときにはすぐに対処し、フィードバックを効果的に用いるなどの具体的な行動や信条を持つようにします。

2)成果・・GitLabは、成果をバリューの最上位として重要視します。ステークホルダーに影響を与えられたかどうかをメンバーが互いに客観的に計測された数値をもとに、ディスカッションできる環境を作ります。

3)効率性・・規模が大きくなるにつれて生まれてくる複雑さや本質ではない仕事を抑えて、規模の拡大と効率の良さを両立させるために、効率性をバリューに加えています。とくにユニークなのは、「退屈な解決策」を選択しよう!というものがあります。これは低品質や問題の後回しという意味ではなく、すでに実績のある手堅い手法を選ぼうという意味です。確立されたポピュラーな手法を用いることができれば、全員にとって安定した体験が保証されます。

4)ダイバーシティ&インクルージョン、ビロンギング・・従業員の一人ひとりが「自分の居場所はここである」と強く感じることができるかどうかを重視します。誰もがそう強く思えることが、多様な人財の掛け算を誘発し、よりよい協働を生み出します。

5)イテレーション・・イテレーションとは、一般的にはアジャイル開発の現場で使われる言葉で、サイクルの単位のことです。組織的な学習にあてはめて、実践をしながら細かく学びを得ていくことを信条とします。

6)透明性・・情報をオープンにして、誰もがアクセスできるようにします。透明性はコラボレーションを促進させ、社外からの認知度を高めるといった組織にとってのメリットもふんだんに得られます。大切なのは、すべてのステークホルダーが情報にアクセスできる環境と素地をどれだけつくれるか?です。

心理的安全性を目指せ!?

GitLabでは、バリューによるカルチャーの醸成をもとに、7つの心理的安全性を構築しています。心理的安全性があれば、従業員同士が、互いに情報を共有しやすくなり、協働を円滑に行うことが可能になります。また、互いの信頼関係にもつながるため、働く意欲の向上やエンゲージメントのUPを実現することができます。新しい挑戦もしやすくなるため、変化する時代において大切な革新的な取り組みを組織内から生み出すこととだってできるでしょう。

1)黄金律を破る・・欧米では、「自分がしてほしい行為を、他人に対して実施せよ」という行動規範のことを、黄金律というそうです。そうではなく、「他人がしてほしいことを、自分からする」という他者視点を持つことが大切です。

2)好奇心を歓迎する・・好奇心を育むことができれば、人は創造的になり、あるいは、既存のあたりまえを疑い、新しいものごとを生み出すことも可能になります。

3)健全なコンフリクトを促進する・・心理的安全性があれば、自分の中で芽生えた違和感をそのまま、表に出して、組織的に検討していくことが可能になります。

4)従業員に発言権を与える・・意思決定者に対して現場からの意見を伝えることはとても重要です。現場のリーダーシップを取っているのは、現場であり、上層部や意思決定者ではありません。現場はおうおうにして、価値提供の最前線でもあります。現場のフィードバックを聞き続けていくことは、企業存続の重要なキーポイントになるといっても過言ではないでしょう。

5)信頼を獲得し拡大する・・心理的安全性は、信頼の土台となり、また、信頼があれば、心理的安全性が強化されます。信頼というのは、もっというと、「相手がきっとこんなことをしてくれるだろう、こういうことを思うだろう、こういうことを発言するだろう・・」というような予測ができるかどうかということです。互いに信頼関係が築いていれば、業務の生産性を向上するだけではなく、働きやすさにも繋がります。

6)効率だけでなく有効性を促進する・・効率だけを追い求める歯車のように従業員を見るのではなく、創造性をもつクリエーターとして認識してみることが大切です。心理的安全性さえあれば、人は創造性を発揮し、組織にいろいろな取り組み促進を提供します。

7)創造性について別の考え方をする・・未完成の作品やプロジェクトを積極的に従業員同士で共有して、互いに刺激をしあいながら、ともに完成を目指してみましょう。

1つのアイデアに固執せず、より良いものをみんなの力で目指すことで信頼と開放性を手にすることができます。

心理的安全性を生み出す7つの方法

まとめ

  • カルチャーアドとは!?――マッチではなく、アド(追加)を意識することが協働可能性を広げます。
  • バリューを磨け!?――バリューマッチを人に求めることが、大切です。
  • 心理的安全性を目指せ!?――信頼関係が協働を育む土壌となります。
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