- 自分たちの行動を俯瞰するにはどうしたら良いでしょうか!?
- 実は、無意識の領域に目を凝らすことが大切かも。
- なぜなら、私たちの行動は9割を無意識が司っているから。
- 本書は、脳科学者である茂木健一郎さんによる、無意識と脳の不思議な関係の1冊です。
- 本書を通じて、私たちを客観視する視点を得られます。
無意識とは!?
脳は処理しやすい情報を好むため、見慣れた顔ほど「美しい」と感じる仕組みになっている。
はじめに
私たちが、意識的に考えるとしていることは、実は、脳や意識が勝手に作っていることだとしたらどう感じるでしょうか!?私たちが、すべてロジカルに合理的にコントロールできていれば、何も悩む必要はありません。でも、現実に、私たちは、感情の波に飲まれたり、損得勘定を持ちながら長期的には損をするような行動を取りがちです。
たとえば、行動経済学の「プロスペクト理論」では、損をすることを極端に嫌うことが発見されていますし、あるいは感情も自分の意志とは反して自然に湧き上がってくるものです。
プロスペクト理論については、こちらの1冊「【踊る!「人の心理」とは!?】行動経済学の使い方|大竹文雄」もぜひご覧ください。
私たちの意思決定の多くに、無意識が関わっています。
無意識との対話を行い、無意識を「意識」し、それを耕すことで、日々の意思決定は確実に変わっていきます。創造性を高めることにもなります。日常をもっと豊かにするためには、自分を自分で俯瞰し、「無意識」の領域までを含めて自己理解をしていくことが大切です。
脳の発達は経験がキー!?
無意識、特に感情をコントロールするには、大脳新皮質の中でも、前頭前野の機能が極めて重要になります。この前頭前野の発達具合によるところが大きい。
前頭前野の発達は、単純に裕福な家庭に育ったからよくなるということではなく、大切なのは、その人が幼い頃から積み重ねてきた経験の量と質が大切です。これは多くの先行研究で明らかになっています。
こうした経験の豊富さは、言いかえれば、パターン学習の豊富さでもある。
起こりやすさは経験の乏しさに比例する
世の中には、多種多様な人がいて、人生はさまざまなことがおこります。人にこういう行動をした時、あるいはされた時、自分はこういう気持ちになるのだ、というパターンを多く知っていることで、それだけの場面に対応することができます。
経験を通じて、これらのパターンを記憶してくれるのが、前頭前野です。前頭前野が把握していることであれば、いちいち気を立てることなく、やり過ごすことができます。ここで大切なのは、無意識を意識化するには、自分の経験の量と質ということです。
実際の経験だけではなく、本や映画、音楽を通じて芸術的な教養を身につけることもよいでしょう。感受性を高めるだけではなく、アンガーマネージメントにも有効です。
無意識的な感情のひとつに、「シャーデンフロイデ」と呼ばれるものがあります。日本語でライトに言えば、「めしうま」という感情です。人の不幸を喜ぶような感情ですが、これは、私たち人類が長年のコミュニティ生活の中で、染み付いてしまった無意識の感情にほかなりません。
閉鎖的なコミュニティで生きていた時代、個人の幸福は極めて相対的なものになります。人や物や情報の交換がダイナミックに行われていないため、どうしても身近なところでの比較になってしまうのです。だから、「めしうま」な感情を持っていることで、相対的にでも自分の幸福度を高めることができたのだと思います。
でも現代は、コミュニティの数の莫大に広がりました。リアルも仮想現実も、すべてがコミュニティ化しているといっていい。そんな時代において、「めしうま」感情を持ち続けていると、どうなるか・・。
他人の不幸を喜ぶ心理は、言い換えれば人の幸せを「妬む」ということでもあります。しかし、ネットワークが強化された今、他人の不幸は自分の不幸になりえることがままあることに気づきます。例えば、会社の従業員ひとりの行動が、ネットにさらされて多くの人が被害を被ることもあるかも知れませんし、あるいは、アルバイトが就業時間中にモラルに反した行動をして、会社全体あるいは、産業全体が被害を受けることもあります。
社会は一蓮托生の様相を強めているのです。こうした中、むしろ「めしうま」、「シャーデンフロイデ」を発動するのではなく、共により良くなることを望み、人の幸福を共に喜ぶことで、つながりを強めることの方が、よりよい人生戦略になりうるのです。
「他人の幸福=自分の幸福」になるケースの方が圧倒的に多いのだ。
誰もが持っている、「メシウマ心理」の正体
個性を見出すには!?
あるがままの自分を認めることも、幸福につながります。無意識の側面に意識的になりながら、自分すべてを認めてあげられるようになりましょう。そのことが結果的に自分の「個性」を活かしながら、生きていくことに繋がります。
もう 30年以上前になるだろうか。僕が初めて養老孟司さんにお会いしたとき、養老さんはこんなことを言っていた。
個性は発揮するものではなく身についているもの
「茂木くん、個性っていうのは、無意識の中で生まれるものなんだよ。例えば、古典芸能なんかで、踊りのお師匠さんがいるでしょう。弟子たちは師匠の踊りを一生懸命マネしようとするんだけど、どうしても完璧にコピーできなくて、自分のクセのようなものが出てしまう。それこそが、個性なんだと思う」
自分がコントロールできる範囲外のものに「個性」の源があるのですね、これはたいへん興味深い。
何か自分で強情にコントロールしようとするのではなく、全体を柔軟に俯瞰して、自然体を意識しながら考えていることが大切なのだと思います。自分がどんなことに心を動かされているのかにアンテナを立ててみましょう。
脳内には、「デフォルト・モード・ネットワーク」という、少し変わった神経回路があります。上記の前頭前野などの各部位を束ねる役割を持っています。ここは、面白くて無目的で何も考えていない時に、一生懸命機能するネットワークなのです。情報の整理をしたり、自分自身を丁寧に振り返ったりしています。私たちがぼーっとしている時に、反省会のようなものがひらかれているんですね。
この機能によって、脳がスッキリすることで、新しい活力を見出すことができます。
自分自身の時間を上手にコントロールして、あえてぼーっとしてみる時間を持つことも大切です。
まとめ
- 無意識とは!?――私たちの考え・行動の9割を司ります。
- 脳の発達は経験がキー!?――パターンを知れば、感情に振り回されなくなります。
- 個性を見出すには!?――無意識も含め理解し、自然体でいることです。