- 人間らしい、意味のわからない行動をとってしまうことってありますよね。
- 実は、人間の行動は自分でも制御できないOSで動いているのです。
- なぜなら、考える以前の深層意識を発達させて効率的に行動しようとしているシステムだからです。
- 本書は、そんな人間の性(さが)にふれる1冊です。
- 本書を通じて、自分や人を客観視して対策するヒントを得ることができます。
私たちは何も知らない!?
本書の著者であるダン・アリエリーさんは、軍に入隊している時に、全身やけどの大きな事故にあってしまいます。その治療の過程で、看護師たちが経験則を元に治療にあたっているさまを見て、人間の行動原理について興味が湧き、多くの研究を進め、行動心理学を深堀りしました。
わたしたちがみんなどんなふうに不合理化を追求しようというのがこの本の目的だ。この問題を扱えるようにしてくれる学問分野は、「行動経済学」、あるいは「判断・意思決定科学」という。
1章 相対性の真相
ダン・アリエリーさんの考えでは、私たちは、「不合理」である行動を取りがちということです。すでに行動経済学や判断・意思決定科学によって、予想されているにも関わらず、私たちはその場その場で、まんまと「不合理」な選択をしてしまう生き物です。
本書を通じてそうした「不合理」を見つめるだけで、そうした行動や判断を完全には払拭することができないものの、客観的に知る機会をより多く作ることができるかも知れません。
わたしたちがいかに予想どおりに不合理かを知ることは、よりよい決断をしたり、生活をカイゼンしたりするための出発点となる。
1章 相対性の真相
基本的なことをおさえることから始めてみましょう。
大変の人は、自分の求めているものがなにかわからずにいて、状況と絡めてみた時、はじめてそれが何なのかを知るということです。
たとえば、自分がどんな競技用の自転車をほしいのか、ツール・ド・フランスの優勝者があるモデルに乗ってギアを切り替えている姿を見て初めて分かるというようなシーンを想像してみましょう。
私たちは、暗闇のなかで飛行機を着陸させるパイロットと同じで、車輪を接地できる場所まで誘導してくれる滑走路の両側の明かりが必要なのだ。
1章 相対性の真相
私たちの選択と行動には、ガイドが必要なのです。
比べることで操作されている!?
例えば、レストランにおいて、値の張るメイン料理をメニューに載せると、たとえそれを注文する人がいないとしても、レストラン全体の収益が向上します。
これはどういうことでしょうか。
上述のガイドの視点に照らしてみるとよく分かります。レストランを訪れた顧客は、メニュー全体を見て、値の張るメイン料理という一つの指標をもとに、他の料理の価格水準をおしはかります。例えば、メインが1万円で、他のメニューが、5,000円や3,000円であれば、割安に感じます。しかし、一方で、5,000円、3,000円、1,000円という並びを見るだけでは、5,000円がとても高く感じてしまうのです。
これをアンカリング効果と呼びますが、まず私たちは、なにか基準がない限りものごとをはかることはできないということなのです。
想定性は(相対的に)理解しやすい。
1章 相対性の真相
そして、相対性の落とし穴というのは、比べやすいものは比べるが、比べにくいものからは、目を背けるというのが不合理な真実としてあります。
たとえば、芸術作品の値段を検討することを想像すればよくわかると想います。そうした自分が比較が上手にできないものを比べていくことについて、人はなんらガイドを持つことができません。相対性を意識することなく、私たちは思考停止に陥ります。
決断が習慣をつくる!?
はじめて、スターバックスに行ったときのことを思い出してみましょう。コーヒーはおそらく、ぎょっとするほど高かったのではないでしょうか!?他のチェーン店に比べれば、倍ちかいコーヒーの値段に、なぜこんなにも高いのだ・・と驚きつつも、もう店内に入ってしまったし、みんな頼んでいる様子だし、なにか飲んでみよう!という気持ちで、小さなコーヒーを注文したのでは。
その後、あなたはまたスターバックスの前を通りがかります。
理想的な意思決定をするためには、あなたはコーヒーの品質(スターバックス vs 他の割安のチェーン*本書の中では、ダンキンドーナツですが、身近にないので割安のコーヒーチェーンということにしましょう。)、ふたつのコーヒーの価格、少し歩いて他の割安のチェーンに行く手間を考慮すべきです。
しかし、これは非常に複雑な計算になります。上述の通り、複雑で理解しがたいものを人は、不合理にも比べようとしません。そこで、簡単な決定方法に頼ることになります。
つまり、「まえにもスターバックスに入って、気持ちよくコーヒーを楽しんだのだから、これはわたしにとっていい判断にちがいない」ということです。
そして、店内にはいって、また小さなコーヒーを注文するに至ります。他の割安のチェーンよりもおよそ2倍の価格であっても。
過去に自分がくだした決断をはっきり覚えていて、今度もそれに従って行動する。
2章 需要と供給の誤謬
話はこの後も続くのです・・・(!)
少し高いコーヒーの価格を受容したあなたは、他の商品を判断するガイドについてもだいぶ寛容になっているのです。だから、大きなサイズのコーヒーや、割高な食事も、スターバックスではついついしてしまうモードを取り入れてしまっているということになります。
スターバックスのコーヒー代をこれからも出費し続けるのだろうか・・と、あなたは考慮するでしょうか。きっとしないのでは。過去に何度も決断をしてきたのだから、これこそ自分の望むお金の使い道だと思い込んで、これからもスターバックスを愛用することでしょう。
ほかとかけ離れた経験にすることで、わたしたちがダンキンドーナツの価格をアンカーに使わずに、かわりにスターバックスが用意した新しいアンカーをすんなり受けいれるように全力をつくだいしたのだ。これがスターバックスの成功におおいに貢献している。
2章 需要と供給の誤謬
こうしてみてみると、「最初の決断」は一時限りのものではないということが分かります。そして、私たちがよく考えるべきなのは、マーケティングにおいて、初めての顧客に対して、より良い経験をしていただくこと、そしてその顧客に対して(当社としてはアンカーを活用いただきながら)、より多くの経験を当社でしていただく仕掛けを提供し続けることに、ポイントがあるのだとおわかりいただけると思います。
操作する方と、される方というふうに一方的に考えて悲観することはありません。私たちは、こうしたアンカリングやバイアスについて、自覚的になることで一定程度、よりよい判断や決断をすることができます。
まずは、自らの弱点を把握することです。まずは習慣について疑問を持ってみると良いかも知れません。いつものグルメコーヒーを継続的に購入していることを皮切りに、あなたが何に対してお金や時間を使っているのかを、自問してみるのです。そこに多分な意味が見出せていないのであれば、それはあなたにとって最良の決断や判断ではない可能性があります。
自分自身の感覚を取り戻すことによって、不合理な決断を塗り替えて、理想を目指すヒントを得ることが可能になるかも知れません。
行動経済学については、過去の投稿「【人は操作できるの!?】教養としての行動経済学入門|エヴァ・ファン・デン・ブルック,ティム・デン・ハイヤー」や「【踊る!「人の心理」とは!?】行動経済学の使い方|大竹文雄」もぜひご覧下さい。自分自信について客観的な視点を得ることができます。
まとめ
- 私たちは何も知らない!?――自分が何を求めているかも、「ガイド」がなければわかりません。
- 比べることで操作されている!?――アンカリング効果は絶大です。
- 決断が習慣をつくる!?――決断を無意識に肯定することで、長続きさせる習慣となります。