- かわいい!って、週に何回感じますか!?
- 実は、「かわいい」感情を上手に使うと、ブランドづくり(ブランディング)に役立ちます。
- なぜなら、かわいいとは、人をOPENにさせる感情だからです。
- 本書は、「かわいい」研究第一人者の入戸野宏さんによる、「かわいい」概念の全体像をまとめた1冊です。
- 本書を通じて、私たちが当たり前に使っている「かわいい」の真価を感じることができます。
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2つの「かわいい」とは!?
「かわいい」の語源は、「かわはゆし」=顔映ゆしで、顔がポッとして(鮮やかに赤らむ)はずかしいという意味でした。少しネガティブな要素を含む言葉だったのです。ここから転じて、中世(鎌倉時代から安土桃山時代)には、「見るに忍びない」の意味から、気の毒で不憫というニュアンスになり、そして、中世後半に女性や子どもなど弱者への憐れみの気持ちから発した情愛の意味合いとして派生していきました。
いずれにしても、かわいいというのはもともと、自分の感情を表すことでした。
「かわいい」はもともと感情形容詞でしたが、対象の属性を表しても使われるようになりました。だから、「かわいくないけど、かわいい」という矛盾した表現ができるのです。
言葉の歴史
近世(江戸時代)の後半になると不憫の意味がなくなって、愛らしいの意味になって、かつ、「愛すべき小さいさま」という形容詞的な用法も出現しました。
「(世間の標準では/見た目では)かわいくないけど、(自分にとっては)かわいい」という意味あいも持たせることができるようになりました。
ちょっと余談なのですが、この世間と自分のGAPを捉えるのって、コピーを考えたり、伝える文章を作る時に重要な気がしています。言葉は、人によって感じ方が違うので、あまりに言葉に頼ると、誤解・齟齬を生んでしまう可能性があるというのを忘れずにすむからです。それよりも、情報を提供する側と受け取る側が、共通の「風景」を見られることを考えていくことが大切なのかも知れません。過去の投稿「【こんなにも孤独な人生で】会って、話すこと。|田中泰延」や「【1行で、新しい世界を魅せられるか!?】企画書は1行|野地秩嘉」では、この「風景」を見ることの大切さが、描かれていました。「かわいい」とは少し異なる文脈ではありますが、せっかくの機会ですので、ぜひお手にとってみてください。


「かわいい」の感情効果とは!?
今回取り上げさせていただいた本書『「かわいい」のちから:実験で探るその心理』では、上記2つのかわいいを区別しています。対象の「かわいさ」は、客観的側面。対象を見て感じる「かわいい」という気持ちは、主観的側面とも言えそうです。
このうち、とくに主観的側面についてどのような効果があるのかを見ていきます。
対象や、状況に遭遇した時、その中に含まれる特徴(属性)に注目が及び、知覚します。
- 属性「ベビースキーマ(触発メカニズム)」→知覚「キュート」
- 属性「笑顔」→知覚「親しみやすい」
- 属性「丸み」→知覚「害がない」
- 属性「色」→知覚「きれい」
という具合です。
さらにここから、反射的に心の評価が生まれます。それが下記です。
かわいい・・ポジティブである、脅威を感じない、適度に覚醒的、接近動機づけがある、社会的交流を求める
「かわいい」感情のモデル
この感情が、前向きでさらに社会的にOPENであるということは、注目に値します。たとえば、人の幸福を考える時に、人とのつながりを重視する要素が含まれたり、ブランドの浸透を目指す時に接触回数や濃度を高めることを考えたりもします。つまり、「かわいい」要素というのは、思いの外、人の生活やマーケティングの中でも、重要なヒントになるのです。
このモデルによると、かわいさという手がかりの主な機能は、見る人がその対象と社会的に関わるように動機づけることです。そのなかで養育や保護という行動が起こることもあるものの、それが目的ではないと考えています。
社会性仮説
「かわいい」の具体的な効果とは!?
「かわいい」という感情が生み出す効果は、さまざまあります。入戸野宏さんが、国内外の研究からいくつかの効果を紹介してくれています。
- 注意を引きつける:マーケティングの3B(美人、動物、赤ちゃん)のように、多くの人の感情に訴え注目を集めます。
- 長く見つめられる:長く見ていられる、あるいは、一緒にいられるのもかわいさのポイントです。
- 笑顔になる:笑顔の活動筋が反射的に動いて、思わず、笑顔になれます。
- 気分がよくなる:自然と笑みがこぼれれば、気持ちがポジティブに動くことも必然です。
- 丁寧に行動するようになる:特定のタイプの人は、かわいいものを見ると丁寧な作業をすることが報告されています。
- 細部に注目しやすくなる:手先の器用さを必要とする課題の成績が上がります。
- 握りしめたくなる:かわいいものは、ギュッと握りしめたくなります。
- 擬人化するようになる:相手と社会的に関わろうとする目標が作られ、メンタライジング(相手に心があると認め、その心を理解しようとする心の働きのこと)が起こります。
- 世話したくなる:見た目が、関与度に影響します。
- 手助けしたくなる:「弱いロボット(TWEENBOTS)」の実験では、思わず多くの人が手を差し伸べました。
などなど、さまざまな研究成果があります。日常生活や、マーケティング活動に応用できる視点も多分に含まれそうです!
この安心感(脅威のなさ)が、かわいいの特長です。美しさや権力には、容赦ない上下関係があります。力の強いものが弱いものに勝ち、金持ちが貧乏人に勝ち、美しいものが美しないものに勝つという一元的な世界です。それでも私たちには、弱いもの、貧乏人、美しくないものを「かわいい」と思う余地が残されています。
第八章 「かわいい」はなぜ大切か
日本の風土が育んだ、文化のなかで、「かわいい」という概念は生まれ、育まれてきました。こうした概念が育った背景には、私たちがこれを重要視したから他ならないでしょう。世界に対して、何か新しい考え方を発信できる、そんな感覚を「かわいい」を通じて覚えました。
まとめ
- 2つの「かわいい」とは!?――主観と客観があります。
- 「かわいい」の感情効果とは!?――社会に対してOPENになれます。
- 「かわいい」の具体的な効果とは!?――さまざまな効用を本書では取り上げています。個人にとっても、マーケティングを考える時にも活用できそうです。
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