【いかに長期的に豊かな経営を目指せるか!?】経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営|中神康議

経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営
  • 本質的に豊かな経営を目指すためには、何が必要でしょうか。
  • 実は、経営者・従業員・株主みなが、三位一体で豊かになれる方針があり得るのです。
  • なぜなら、「複利」の考え方を活用すれば可能になるからです。
  • 本書は、自身も経営コンサルとしてご活躍し、その後投資家としてさまざまな企業を支援する中神康議さんによる経営の本質を追求する1冊です。
  • 本書を通じて、何を経営判断の指標とするべきか、今一度総点検をすることができるでしょう。

本書は、経営者・従業員・株主がトレードオフではなく、トレードオン、つまりみなで豊かになる方策を示した本質的な経営書の1つです。内容が多岐にわたり、いずれの論点もとても大切だと思いました。ぜひ複数回にわたり投稿を作ってみようと思います。

経営者・従業員・株主はトレードオフの関係にある!?

企業の関係者を、経営者、従業員、株主としたときに、彼らはどちらかを立てれば、どちらかが立たない、トレードオフの関係にあるように見えます。

経営者と従業員は、労働とコストで相反していますし、経営者と株主は配当と将来の軍資金で相反します。また、株主から見た従業員はコストです。

これまで、日本は高度経済成長時代において、経営者と従業員は「労使一体」を掲げて、二人三脚の経営を推進してきました。(反対に米国は、経営者と株主の結びつきが強いです。結果、手っ取り早く株価を上げる、四半期の数字をよくするために従業員をレイオフする、高値を承知で派手なM&Aを繰り返す、などの経営活動が頻発します)

日本でも現在、労働の流動性が高くなってきています。これまでのように「労使一体」の関係性を築き上げにくい状況になってきています。

事実として、著者が指摘しているように、日本の企業では営業利益率を確保するために労働分配率を抑えるという傾向が見られます。

解説「長期」の本質

対立関係が、顕著になってきてしまっては、長期的に幸せな世界観から、遠ざかってしまうように、直感します。

トレードオン(みなが豊かに)なるには、「複利の経営」がヒント!?

どうしたら、対立していがみあうのではなくて、三位一体の経営で、一緒に豊かになる経営を推進していくことができるでしょう。実は、経営を4つのタイプに分類すると、ヒントが見えてきます。

1)「額の経営」・・売上や高さを追求する経営。
2)「率の経営」・・高い利益率を追求する経営。
3)「利回りの経営」・・資本の投下という元手に対して、どれだけキャッシュフローを生み出せたか追求する経営。
そして、
4)「複利の経営」・・経営で生み出された果実を再投資していく経営。

ポイントは、4つめの「複利の経営」です。

「複利の経営」に至って、初めて経営に時間軸が入ってきます。しかも「再投資」や「複利」の定義からして、その時間軸は長ければ、長いほどよい。

解説「長期」の本質

「利回りの経営」のように単年のアウトプットで喜ぶのではなく、投下資本そのものが大きくなっていき、指数関数的に利潤を創出することを中長期的に目指していくことが本質です。

具体的な、経営の世界観としては、

経営を選びに選んで長期投資し続けた厳選投資家や、従業員持ち株会・役員持ち株会でコツコツと自社株を買い続けた人々が、最も安定的に、しかも大きく報われる経営の姿です。

解説「長期」の本質

です。

これを実現させるためには、長期投資にかなう事業であることが前提条件となります。

本業でしっかり利益を出すためには、コスト、リスク、そして「事業仮説」!?

長期投資に値する事業は、本業でしっかり利益を出せていることがマストです。そのためには、その事業の儲けの構造(事業経済性)がしっかり把握されていることがポイントです。

儲けの構造は次の4つに分類されます。

1)規模型事業・・共有コストの比重が大きく規模効果を活かすことで、利益率が向上する。(例:紳士服製造販売業)
2)特化型事業・・コストが共有化されている分野とそうでないところがある。(事例:製薬業)
3)分散型事業・・共有コストの比重が小さく、事業を大きくすると儲からなくなる。(事例:卸売業)
4)手詰型事業・・市場が成熟し供給過剰な状態では共有コスト部分の規模効果が限界に達している。(事例:製紙業)

これらの類型のどこにあてはまるかで、儲けの出方が自然と決まります。しかし、著者である中神康議さんによると、「こうした基本的な儲けの仕組みを理解しないで、及第点に達することがない企業が多くある」とのことです。これについては、次回以降の投稿で詳しく捉えさせていただきたいと思います。

さて、上記の4つの類型を正しく把握することで、自社がどのような方針を打ち立てることが大切なのかを理解できます。その上で競争優位を発揮するためには、2つのアクションと1つの視点が必要になります。

2つのアクション
業界の常識からして、
*「呆れるほどのコストをかけること」
*「腰を抜かすほどのリスクをとること」

腰を据えて何かに突っ込まなければ、競争優位を築くことなどできないのです。

ちなみに、本書中では、「差別化」と「ブランド」を米国コロンビア大学ブルース・グリーンウォルド教授の説をもとに、否定しています。これについても、次回以降の投稿で見ていきたいと思います。

1つの視点
*「事業仮説」すなわち、「どこに突っ込むのか」「なぜそこに突っ込むのか」に答えるストーリーです。

本書は、2つのアクション、1つの視点の経営事例として、ロイヤルホスト江頭匡一さん、ヤマト運輸の小倉昌男さんを取り上げています。

複雑な問題に直面したとき、凡百の経営者は物事の要因を個条書き的に列挙して解を得ようとします。しかし、小倉氏に代表される優れた経営者は、要因間の因果関係についての論理にまで踏み込み、全体が全体として作動するメカニズムを解明しようとします。ようするに「大局観」です。

解説「長期」の本質

解説の楠木建さんは、次のように補足します。

経営者にとっての事前の拠り所は何か。優れた戦略ストーリーにつきものの恐怖(「呆れるほどのコスト」「腰を抜かすほどのリスク」)を克服するうえで、何に頼ればいいのか。「論理的な確信」しかない、というのが私の結論です。

解説「長期」の本質

本書は、経営者、従業員、株主がみな豊かになれる中長期的な事業を推進する上で必要な考えかたを「複利の経営」と置き、その実現性を担保する要因として競争優位(本書の中では「障壁」)をいかに構築するかについて言及していきます。競争優位を作り出すのは、差別化でもブランドでもなく、業界において「呆れるほどのコスト」と「腰を抜かすほどのリスク」そして、それを支える「事業仮説」であり、ビジョンであると説きます。さらに、業界の”常識”をどがえしするような経営判断を行うためには、経営者の属人的な意思決定と、関係者の巻き込みの必要性に触れています。

経営とは何を目指すべきものなのか、について、長期的な視点かつ、みなが豊かになる視点を説いた本書を、次回以降も詳しく見ていきたいと思います。

解説の楠木建さんによる著書を取り上げさせていただいた「【いいことたくさん!】絶対悲観主義|楠木建」もぜひご覧ください。難しい経営の舵取り、ビジネスの推進に向け、さまざな視点で勇気をくれる1冊です。

まとめ

  • 経営者・従業員・株主はトレードオフの関係にある!?――これをトレードオンにする視点を持ってみましょう。
  • トレードオン(みなが豊かに)なるには、「複利の経営」がヒント!?――利潤を再投資して、投下資本を増やし、利益を指数関数的に増大させることを目指しましょう。
  • 本業でしっかり利益を出すためには、コスト、リスク、そして「事業仮説」!?――独自の勝ち目探しが必要です。
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