【教育が最重要!?】自然、文化、そして不平等 ―― 国際比較と歴史の視点から|トマ・ピケティ

自然、文化、そして不平等 ―― 国際比較と歴史の視点から
  • どうしたら世界が抱える気候や自然に関する問題を解決する動きが取れるでしょうか。
  • 実は、不平等の解消とそのための、教育格差の是正にヒントがあるかも。
  • なぜなら、これらは密接に関わっているからです。
  • 本書は、『21世紀の資本』で広がり続ける格差問題を提唱したトマ・ピケティさんによる講義録です。
  • 本書を通じて、いま現在私たちが抱える課題とその解決アクションについてヒントを得ます。
トマ・ピケティ,村井章子
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スウェーデンから学ぼう!?

本書は、『21世紀の資本』において、広がり続ける格差と不平等を説いたトマ・ピケティさんによる講義録です。コンパクトな1冊ですが、自然と文化と不平等の関係が深く説かれています。

この中で、スウェーデンの事例を取り扱ってくださっているのですが、これが非常に興味深いです。

スウェーデンは世界で最も平等な国の一つとみなされている。

自然の不平等というものは存在するか?平等への長い歩み

しかし、スウェーデンは、かつて長い期間、ヨーロッパでもっとも不平等な国のひとつだったのです。それが1930年代に入ってすぐ、社会民主系の政党が政権をとり、国民の政治・社会参加の枠組みが定まる中で、この状態は急速に解消していきました。

こうした経過を知ると、スウェーデンは決定論的な考え方をみごとに退けた好例だと言うことができよう。

自然の不平等というものは存在するか?平等への長い歩み

決定論的(つまり、何等か避けられない要因(自然や地理など)によって、始めから不平等の構造が決められてしまっているということ)が否定されるということは、私たちの努力、あるいは社会の仕組みで不平等は解決しうるという事実があるのです。

社会や政治の構造は、変化しうるものです。不平等を定着させ、あたかもそれが変えられないように振る舞うのですが、実は、確実に解消は可能で、そうした取組自体を人の手で作り上げることはできうるのです。

例えば、カースト制度が根強いインドだって、それが解消されないように決めつけていますが、社会の仕組みや政治のあり方次第では、変えることはできるのです。

問題は密接に関わる!?

体制の支配者である勝者は、あたかも不平等を永続的なもののように、捉えさせ、その元で相対的に豊かであるととらえられる暮らしをおくります。

だが現実は彼らが思うよりずっと流動的で、永遠に再構築を繰り返す。

自然の不平等というものは存在するか?平等への長い歩み

トマ・ピケティさんは、不平等を始めとして、さらに俯瞰した視点にたち私たちの地球が抱える課題についてふれていきます。

そして、自然、文化、不平等の間には全く別の種類の関係性が存在することを指摘します。自然破壊、生物多様性の危機、地球温暖化、二酸化炭素排出量の問題が根深く横たわっています。これらの問題を解決するには、不平等の大幅な解消と資本主義システムとは全く異なる新しい文脈から語る経済システムの出現なくして、自然と人間の共生は不可能であるといいます。

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教育格差をなくせ!?

上述のスウェーデンの問題をいかに解決したのかが、これからの時代のヒントになると思われます。スウェーデンは1865年~1910年、納税額に基づく功名な制度選挙制度が採用されていました。

第一次世界大戦までこれが続けられていました。裕福であるほど多くの票を投じられた制度で、国政選挙では100票が上限だったのですが、地方選挙では上限がなく、結果、数十の地方自治体では、たった一人の有権者が票の50%を以上を握るということが起きていました。

こうして選出され続ける有権者は、民主政治の下で、完全な独裁者になっていったのです。スウェーデンの首相はほぼ例外なく貴族階級の出身で、地盤の選挙区では、当然得票率50%以上という驚くべきスコアを握っていました。

しかし、20世紀に入ると、スウェーデンは自国内で矛盾をはらんできます。私有財産を聖域化する政治制度と、歴史や宗教など様々な理由から、他のヨーロッパ諸国より「ずっと識字率の高い労働者階級」とが共存できなくなったのです。

スウェーデンの労働組合と発足間もない社会民主系の政党は、富裕層が過度に有利になっている現状を是正し近郊を取り戻さなければならないと確信していた。

スウェーデンの例

この下で、参政権運動が強力に展開されて、1920年に普通選挙が実現します。1932年には、社会民主労働者党が政権党となり、1990年代~2000年代までほぼ切れ目なく政権を担当してきました。

改めて、この事例は、決定論的な見方を排除することに大きく寄与してくれます。私たちは、政治を通じて、よりよい社会を作ることができうるのです。

そのために大切なのは、教育です。間違いなく、内発的な問題提起の起点となったのは、支配者階級に対して、労働者階級の高い識字率(リテラシー)でした。教育の機会拡大こそが、不平等の解消に大きな効果をもたらしてくれるはずです。

しかし、現実には、当時の階級ごとの識字率の格差、教育の格差が甚だしかったため、この是正の効果が目に見えてえられたというのも事実です。現代では、世界的に見てみるとまだ教育の格差は激しく、この解消が、不平等の解消とそして、不平等が起因となっている気候問題・環境問題の解決のために、期待されるアクションの一つになります。

まとめ

  • スウェーデンから学ぼう!?――政治によってかつてよりも平等な社会を構築することができました。
  • 問題は密接に関わる!?――社会、文化、不平等と地球の問題は密接に関わっています。
  • 教育格差をなくせ!?――世界的な教育格差の是正に活路を見出しましょう。
トマ・ピケティ,村井章子
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