おいしいニッポン 投資のプロが読む2040年のビジネス|藤野英人

おいしいニッポン 投資のプロが読む2040年のビジネス
  • 「未来から情報が先取りできたら、どんなにいいことか!」と思ったことはありませんか?
  • 実は、本書がそれに答えてくれます。しかも2040年の先の未来から。
  • エンジェル投資家で数多くの起業家を見てきた藤野氏が、これからの投資の分野で注目するべき領域を紹介してくれています。
  • 本書では、さらにふんだんな企業事例からその注目領域の内容を詳しく紹介。
  • 本書を読み終えると、10~20年先の未来の市場感を身につけることができます。決して投資家や起業家の方だけではなく、働く多くの人にとって自分の今、を俯瞰する良い機会が得られます。

5年先よりも、確実に予測できる20年先の未来。

かつて、ある経営者は「5年後の予測はもっともズレやすい」と語りました。

はじめに――「おしいいニッポン」を味わうために

今から20年前を著者は振り返ります。当時の米国は、ハーバード、スタンフォード、コロンビア大学などを卒業した優秀な学生が自分で起業したり、ベンチャー企業に入ったりする時代だったそうです。一方、日本は、最優秀層は官公庁か大企業を選んでいた・・・

20年後の今、2つの国の上位時価総額企業ランキングの顔ぶれに現れています。

米国は、GAFAM。日本は、20年まえと同じ顔ぶれ・・。

でも、2022年現在の日本でも、当時の米国のような状況が見られ始めています。優秀な学生は企業やベンチャー企業を目指すことも珍しくなくなりました。テクノロジーやデジタル技術を駆使しながら新しい市場を開拓する企業の存在も目立ち始めています。また、国も支援を充実化させています。

こうした状況から予測される20年後の日本は、まだまだ捨てたものじゃありません!むしろ課題先進国として、世界標準の事業を作れる素地は整っているとも言えるのかもしれません。

大切なことは、すでに見通せる未来から逆算して、今、動き始めることです。

いますべきことは、まず自分がいる場所を確認すること。

もしも「自分の居場所は今後、衰退していく可能性が高い」と思うのであれば、ものの見方や考え方、行動などを変える努力が必要でしょう。

はじめに――「おいしいニッポン」を味わうために

未来に起きる変化を見通すことで、今、自分がいる場所を解釈するのが重要です。これからさき10~20年かけて日本の社会は激変していきます。過去の投稿の「【1】2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ|ピーター・ディアマンディス,スティーブン・コトラー」でも見たように、技術革新は四則演算を超えて指数関数(コンバージェンス)的に進んでいきます。あっという間に、違う世界が訪れるそんな気持ちになるでしょう。

これまでとは異なるスピードで変化していく社会で、重要なことは先取りだと思います。ゆっくりとした社会では過去の延長線上で十分でしたが、これから先は確実に訪れる社会からの俯瞰に意味が出ます。

なぜなら、未来は私たちが生きている間に確実に訪れるのです。著者は、「居場所次第で20年後は天国と地獄に分かれる」といいます。

4つのメガトレンドをとらえよう。

私が2040年に向けて日本のメガトレンドをどうとらえているのか、そして「20年後の日本」を幸せに生きるために投資家・起業家として具体的に今どのような行動を起こしているのかをお伝えしていきます。

はじめに――「おしいいニッポン」を味わうために

以下の4つのトレンドを著者は追いかけていると言います。

1.テクノロジーの社会実装
新しいテクノロジーにあわせて「仕組み」そのものを変革する産業や企業です。
例えば、
「スカイマティクス」社――三菱商事からMBOした企業で、空撮技術を活用し農地の色づき具合から収穫時を判定。高齢化社会による農業人口減少や耕作放棄地問題、食料自給率問題など社会課題に取り組む会社。
「しくみデザイン」社――文字を一切使用せずにプログラミングスキルを身につけられるツールを開発している会社。コーディング知識をほとんど使用しないため、教える側の負担も軽減。情報が必修科目となる新しい学習要領とともに広がる可能性を持つ。
が紹介されます。

2.アフターコロナの暮らし方・働き方
ワークとライフを区別していた時代から、公私混同する時代を実現するためにアイデアとテクノロジーを組み合わせる産業や企業のことです。
例えば、
「ADDress」社――月4万4,000円で全国どこでも住み放題のサービスを展開しながら、空き家問題や地域の関係人口減少問題も解決している会社。「家守(やもり)」という利用者と地域をつなぐコミュニティリーダーのような制度もこの会社の工夫ポイント。
「Unito(ユニット)」――長期滞在先を探している人とホテルのマッチングサービス。使っていないときは「リレンタル」という転貸を可能としている。
が紹介されます。

3.ダイバーシティ
実はダイバーシティは儲けの源泉になるといいます。テクノロジーを活用しながら、これまで以上に個別化(パーソナライズ)なものやサービスの提供がなるためです。そのためにも、ダイバーシティに対する本質的な理解と、これまで困ってきた人たちに向けた眼差しが必要だと言います。
例えば、
「ミライロ」社――全国バラバラのフォーマットだった障害者手帳を統一IDで管理し、スマートフォン等で提示できるシステムを開発している会社。
「ViXion」社――日本に180万人いる弱視「ロービジョン」の方向けの補正メガネを開発。
が紹介されます。

4.地方創生
地方ならではの魅力を活かし、むしろ日本全体を元気にする展開を行っている産業です。
例えば、
「ヤマガタデザイン」――三井不動産出身の方が山形で創業した企業。水田に囲まれたサイエンスパーク「SHONAN HOTEL SUIDEN TERRASSE」を展開。一次産業にも取り組む。
「GEN風景」――前田薬品工業のスピンオフ事業として、地元のラベンダーやヒノキ、ハーブなどを楽しみながら健康的な暮らしを目指せる複合施設「ヘルジアン・ウッド」をオープン。
が紹介されます。

まとめ

  • 5年先よりも、確実に予測できる20年先の未来。――確実にテクノロジーは進展します。そして日本にも起業家精神は生まれています。確実に変化が起きるのがこの先です。
  • いますべきことは、まず自分がいる場所を確認すること。――今ある居場所次第で、20年後の環境が全く異なります。天国と地獄を分けるかもしれません。
  • 4つのメガトレンドをとらえよう。――「テクノロジーの社会実装」「アフターコロナの暮らし方・働き方」「ダイバーシティ」「地方創生」を見ながら、根底に流れる大きな変革の兆しをとらえましょう。

日本社会が、この20年間、実は過去の延長線上にあったからだと、本書は気が付かせてくれました。そして、希望の光として、アントレプレナーシップ(起業家精神)が芽生え始めていることも米国がそうであったように、日本の20年後を想像しながらワクワクしました。20年。決して、遠くない未来です。ぜひお手にとって読んでみてください。

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