進化するテクノロジーが進化する別のテクノロジーと合わさったときに、とてつもなく早い破壊的変化が訪れます。進化するテクノロジーとは、AIや人工知能などです。これを「コンバージェンス(融合)」と呼び、本書は、未来のビジネス(小売、広告、娯楽、教育など様々な産業分野)に、どんな加速度的な変化が訪れるのかを示唆します。
テクノロジーの融合が加速度的に社会を変えていく!
「ウーバーの目標は、2020年には空飛ぶ車の性能を世に知らしめ、2023年にはダラスとロサンゼルスで空のライドシェアを完全に事業化することです」
第1章 「コンバージェンス」の時代がやってくる
著者は、テクノロジーの融合(コンバージェンス)で、空飛ぶ車という夢のような技術がいかに加速度的に実現されようとしているかを説明します。
空のライドシェアには、安全性と騒音そして価格的なハードルをクリアする必要があります。ヘリコプターのローターは高速回転するからとてつもない騒音を生みます。でも、現在でもドローンに利用されている「分散型電気推進力」の技術を使えば、大型化したとしても騒音問題をクリアできそうです。さらに、この技術をモーターの小型化、高性能バッテリーの開発など、様々な最新技術を可能にしています。技術の連鎖は、安全性も叶えます。
AI革命によって膨大なデータを取り込み、マイクロ秒単位で、乗り物がコンピュータ制御で自動で動く時代になります。もちろん空飛ぶ車にもこうした技術は転用されるでしょう。
このように、技術の融合(コンバージェンス)によって、あらゆる産業に加速度的な変化が訪れる時代をわたしたちは生きているのです。
常に変化が起こる時代へ!
「ローカルでリニアな時代」は終わる
第1章 「コンバージェンス」の時代がやってくる
これまでも人類の歴史は変化の歴史でした。新しい技術が生まれれば、常に変化は起きます。でもこれまでの技術の深化は一直線上に並ぶものでした。著者は靴下を引き合いに出します。材料革命によって植物の繊維に変わり、柔らかい織物が代替し、道具革命によって縫い針ができたから、靴下を人類は手にしました。しかし、これらの革命は本質的にリニア(直線的)であったと言うのです。
歴史の教科書を読んでみるとはっきりわかるように、人類の歴史の初期は年の刻み方がゆっくりです。教科書1ページに数万年はざらです。現代に近づけは記録されている情報が多くなるので、1ページあたりの経過年が少なくなるのは当然かも知れませんが、それでも、近世くらいまでは人の暮らしの本質は変わらなかったのかもしれないと思います。
太陽が昇れば起きて、朝餉をたべて、のんびり働いて、昼ごはん、日が傾けば、家に帰って、よるごはん、そして就寝。この繰り返し。
でも、現代人の暮らしはどうでしょう。朝も夜も、どこにいても、仕事ができて、そしてその仕事は極端なケースでは、PCの画面に1日向き合って終わります。これも立派な仕事だと言われるのが現代です。
私は、いつも不思議な気持ちになるのが、この都市にそびえる摩天楼が、ほんの数十年間で、人間の手によって作られたという事実です。どうしたらこんな途方もなく大きな、そして精緻なものを作れるようになったのか・・・。
そして、著者が語るように、これからの変化は、超高層ビルを建てるとか、そういうレベルではない社会変革を根本的にもたらすことなのであるという見解に、恐れおののく気持ちにもなります。
加速が「加速」する!
変わらないのは「変化が続く」という事実だけであり、変化は加速する一方だ。
第4章 加速が「加速」する
変化が加速するのは、次の3つの増幅要因が重なっているからだと著者は言います。
1.コンピューティング能力のエクスポネンシャルな成長
2.加速するテクノロジー同士のコンバージェンス(融合)
3.7つの推進力
さらに7つの推進力は、
①時間の節約
②潤沢な資金
③非収益化
④「天才」の発掘のしやすさ
⑤潤沢なコミュニケーション
⑥新たなビジネスモデル
⑦寿命を延ばす
としています。
非収益化とは、技術革新で、同じ仕事が圧倒的に短い時間で圧倒的に少ないコストで実現することを指します。つまり①と②の掛け合わせだととらえても良いかもしれませんね。確かに、これまで圧倒的に時間がかかる「打ち合わせ」もいまや、Zoomを使えば空間を超えて、数秒で全員を集めます。地球どこにいても・・・。
④や⑤は情報化の恩恵が大きいでしょう。誰もが、情報にリーチできる時代にあり、かつ誰もが発信者でもある。そんな時代において、個人の可能性の限界は非常に高くなっています。
⑥新たなビジネスモデルにおいては、著者は将来訪れる新たなビジネスモデルを説きます。これについては非常に興味深いので、次の投稿で詳しく紹介したいと思います。
意外なところで⑦ですが、実は不老不死の研究はさまざまな研究機関や民間企業で真剣に行われています。あのグーグルも新たなスタートアップを創設し、「死の克服」を目指しています。
スティーブ・ジョブズがあと30年生きられたら・・、人生100年時代において、人が現役で活躍できる時代も格段に延びます。その分、新しいイノベーションを起こす可能性も十分に考えられるのでしょう。ちなみに著者の一人のピーター・ディアマンディスは、長寿・医療分野のスタートアップ企業を立ち上げながらも、さまざまな異分野の組み合わせでビジネスを創造するコンバージェンスな人だそうです。
2030年という近い将来を予測した本だろうか。と気軽な気持ちで手に取りました。でも、加速が加速するその主題が非常にインパクトを覚えます。私の人生の30数年程度でも、大変な技術革新と社会変革があったはずです。でもさらにこれから先その加速が止まらなくなる・・本当についていけるのかな?と思いました。でも、その感覚さえも改めていくべきかもとも思えました。というのも、到底追いつくことなどできないからです。それよりも、技術革新は情報としてキャッチアップしながらも、そこで生まれるチャンスやニーズの穴を埋めるピースを考えることのほうが、未来の向き合い方として懸命じゃないかなと思うのです。圧倒的な加速的変化に恐れおののくのではなく、楽しみに構えていく、そんなマインドだと人生の主導権をだれかに取られずに済むかもしれないですね。