【ストレス対処がキー!?】成功する子 失敗する子――何が「その後の人生」を決めるのか|ポール・タフ

成功する子 失敗する子――何が「その後の人生」を決めるのか
  • どうしたらよりよい子育てができるでしょうか!?
  • 実は、HPA軸というストレス対応システムを上手に機能させることがポイントかも。
  • なぜなら、HPA軸が機能することで、心的外傷や慢性ストレスから自身を守り、発達を妨げないケアができるからです。
  • 本書は、子育てについていくつかの指針を提供する1冊です。
  • 本書を通じて、子育てについて盲目的に悩むのではなく、考えるヒントを得られます。

子育ては悩むもの!?

著者のポール・タフさんも子どもの親として実際に、子育てに悩みを持ちながら、模索をされていた方です。

エリントンが生まれた当時、「知能至上主義」の影響下にあって不安を感じている多くの親たち同様、わたしも心配になった。

第5章 わたしたちに何ができるのか

「知能至上主義」だけを頼りの子育てをすることは、本当により良いのかについて真剣に悩んでいました。私たちは、偏差値や学力などの定量的な能力だけではきっといけないんだろうということを暗に感じています。実際に個性や性格などの複雑な人間の性質を横目に生きているからです。

HPA軸とは!?

まず前提として大切なのは、子どもを心的外傷やストレスから守り、そして、ストレスに立ち向かっていけるようなスタンスを作ることです。そうすれば、自分で生き抜いていくための力を養う土壌を自ら作ることができます。

大切なのはHPA軸をうまく機能させることです。HPA軸と呼ばれるシステムを使って私たちはストレスに対応しています。HPAは「視床下部・下垂体・副腎系」の略で、これがあるからこそ、困難な状況への反応を脳から身体へと化学信号を流すことができます。

視床下部、つまり体温や空腹感、渇きなどの無意識におこる反応を司る脳の領域は、何らかの危険を感じ取った時に、最初に防衛にあたります。

HPA軸は脅威の種類を見分けることができないため、どんな脅威に対してもすべての防衛機制をいっぺんに活性化させる。

序章 明らかになる新事実

これが厄介なところ。あらゆる脅威に対してのべつ幕なしに、反応していては身体が持ちません。だから、子どもの頃に、十分な親子の関係を作ることで、基本的には、「この世の中は安心であふれているはずだ」という前提を養っておく必要があるのです。

そうでなければ、家庭や社会で自分自身の素直な能力を発揮することが困難になってしまいます。

生き抜く力は後天的!?

人の能力や生き抜く力は後天的でしょうか、それとも遺伝などに影響を受けるため先天的だと捉えるべきでしょうか。

人間でもラットでも乳児のうちに適切な世話を受けた者は、のちにより好奇心や自立心や自制心を持ち障害にもうまく対処できた。

序章 明らかになる新事実

実は、かなり後天的な環境によって左右されることが明らかになっています。幼少期の育児において、親からの注意深いケアが、ストレスから身を守るためのレジリエンスを育むために重要です。そして、人生にふつうに起きうる困難な事態に直面した時に、何年もあとになってからも、この能力は生きる力として機能し続けます。

人は、幼少期の影響によって、自分なりの主張を行動に移し、自信を持って前に進むことができるかどうか、否かが決まってしまいます。反対に表現すれば、幼少期の特定の時期のケアをしっかり行うことで、よりよい人生を目指しやすい人格を育てることが可能であるということです。

ドゥエック先生の有名な研究があります。こちらの1冊「【あなたは硬直型!?それとも、しなやか型!?】マインドセット:「やればできる!」の研究|キャロル・S・ドゥエック」をぜひご覧ください。本書では、人のマインドセットにより能力を柔軟に育むことができることを説いています。すなわち、「硬直マインドセット」と「しなやかマインドセット」です。硬直マインドセットにあるとき、人は能力を固定的に捉えることになり、しなやかマインドセットにあるときは、能力を可変であり、今からでも積み上げることができると信じます。しなやかマインドセットにある人の方が、より多くの学習機会を自ら創出することで、多くの経験を積みながら、成功への道を歩むことが可能であるということになります。

同じようなスタンスで、人間の能力や特徴は所与であり固定的であるというものごとの考え方に対して、アンチテーゼを打ち込んでいくことも検討してみましょう。

幼少期の体験をより良くすることで、より幸せな人生を得られやすい体質を得られます。特に「親子の関係性」が大切であると既往研究は語ります。例えば、今回の1冊『成功する子 失敗する子――何が「その後の人生」を決めるのか』の著者の別著書に関するこちらの投稿「【親子の信頼関係がキー!?】私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む|ポール・タフ」でも、親子の信頼関係が心理学のアタッチメント(愛着)を育むことで、人が本来持つしなやかな能力を開花させることが報告されていると説かれていました。

愛着理論は1950年代から1960年代にかけて、イギリスの精神分析医ジョン・ボウルビイとトロント大学の研究者メアリーエインズワースが発展させたものです。

当時、児童発育の分野では行動主義が主流でした。行動主義とは、子どもの発達は機械的に、肯定の反応を受けたのか否定の反応を受けたかによって、行動を選択すると見立てられていました。子どもの内的な世界はたいして深くないと行動主義の心理学者は考えていたのです。乳幼児が母を慕うのは栄養や快適さを求める「生物」としての必要性からで、それ以上はない・・と。

しかし上記2名の学者によって、そうではない視点がもたらされました。一連の研究によって、幼少期の愛情を込めた育児は、意味があることが示されたのです。子どもが泣いた時に親からすぐにしっかりとした「反応」を受けた乳児は、1歳になることろには泣いても無視された子どもよりも自立心が強く積極的になったといいます。

親子のより良い関係性・関係値にフォーカスすることで、よりよい人生を見出し生き抜く力を持つ子どもを育てることのヒントを得ることができます。

まとめ

  • 子育ては悩むもの!?――教育の研究者だって、悩むものです。
  • HPA軸とは!?――ストレス対処の脳を過剰に活性化させないのもキーです。
  • 生き抜く力は後天的!?――幼少期の経験がその後の人生の豊かさを左右する傾向が強いです。
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