- 教育と新しい視点で向き合うことは、可能でしょうか!?
- 実は、教育を投資と考えることかも。
- なぜなら、経済性もひとつの評価軸だからです。
- 本書は、神戸大学大学院佐野晋平先生による、教育のバリューに関する1冊です。
- 本書を通じて、教育というブラックボックスを紐解くヒントを得られます。
教育にまつわる疑問とは!?
世の中には、教育にまつわる疑問が多くあります。
はじめに
たとえば、「いい大学を出ると給料は高いのか」とか、「幼少期にどんな習い事をすると子どもは伸びるのか」「クラスサイズを小さくすることは効果があるのか」など、です。
こうした問題をひとつの視点をヒントに見出すことも可能かもしれません。その視点が、経済学です。経済学では、教育は人的資本への投資を考えます。ここがポイントです。知識やスキルなどで生産性を高め、イノベーションを促すことで、経済成長に寄与します。
人的資本への投資は、生涯を通して行われますが、学校の持つ役割は無視できません。
はじめに
学校教育による投資は、若い時に行われますが、その成果は生涯にわたっての所得の上昇を通して回収されます。教育は、教育を受けた人の恩恵を与えます。
大学の便益を考えてみると!?
大学にいった、いっていないを、比較すると教育の効果を端的に検討することができるでしょう。大卒と高卒では一般的に生涯賃金の差が生まれます。これは、大卒と高卒とでは蓄積された人的資本が異なるためだと考えられます。
価値については、こちらの1冊「【自己内利益を考え、積み上げる人生を送れ!?】人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点|木暮太一」もぜひあわせてご覧ください。経済を考えるヒントを得ながら、本書の教育投資の経済学にふれるヒントを得られます。
大学投資の意思決定を考える時、「大学の便益が、大学進学のコストを上回ると大学進学する」と見て取ることができるでしょう。その反対もしかりです。
大学進学率は、56.6%程度(2020年国勢調査)です。これは残りの43~44%の人は大学に進学しないことを意味しています。大学進学をしない人にとって、大学卒業で得られる便益がそこまで大きくないか、コストが十分に大きいか、があげられるでしょう。
ここまで考えると、大学教育の内実に踏み込みたくなりますが、一方で、人的資本を使用する側、つまり社会(企業や行政等)の視点で考えると、大学の価値に新しい視点を見出すことができます。
それが、シグナリング理論と呼ばれるもので説明できます。これは、働き手と雇い手の間に情報の非対称性がある時、大学教育を受けている・受けていないが、ひとつのシンプルな指標として対象者を選択する動機となりうるという考え方です。
そう考えれば、雇い手が大学以外に働き手を評価する別の基準や指標を得たとすれば、大学というファクターは相対的に重要視されなくなる可能性もあるということです。
人的資本理論は大学を働き手に人的資本を蓄積させる手段と考えます。
シグナリング理論からわかること
このように、大学という教育機会も、経済的視点を得ると、新しい価値として捉えることができるのです。
労働市場での教育の必要性とは!?
労働市場での労働者の成果の差は、教育そして形成されるスキルと関連しそうなことがわかります。
第2章 スキル形成のための学校と家庭の役割
教育を受けることにより、スキルが形成され、それが将来の所得向上につながる可能性が示唆されます。
人的資本を中心に教育を捉えることが大切です。労働者の身につけるスキルや知識が向上すれば、それはおのずと経済価値を生み出すパワーに繋がっていきます。高い人的資本水準を持つ個人は、多くの新たな価値を生み出し、イノベーションをもたらすことが可能になるのです。
また、新たな価値を生み出すことに対して、報酬が支払われるため、個人の所得を決める重要な要素となっていきます。人的資本は教育や訓練により蓄積されます。そのため、教育水準は、人的資本の指標の1つと考えられます。
長期的な経済成長のためには、ひとりひとりの生産性向上が欠かせません。生産性向上のためには、教育が不可欠であり、それは技術進歩と相関します。技術進歩があれば、長期的には世の中をより豊かな世界へと導きます。短期的には技術対応の問題が生じますが、それをポジティブにとらえて、いくことがキーとなります。
もしかしたら、そうした新たな技術などの変化する社会環境に対する心的ハードルを少なくする機能が、教育にはあるのかもしれません。そうした視点について刺激を得たい場合は、こちらの1冊「【HOW TO リスキル!?】リスキリングは経営課題~日本企業の「学びとキャリア」考|小林祐児」もぜひご覧ください。
今回の本書の著者である佐野晋平さんについては、こちらをご覧ください。
まとめ
- 教育にまつわる疑問とは!?――教育の価値とはそもそも何か、という疑問がつきまといます。
- 大学の便益を考えてみると!?――教育の便益を端的に捉えることが可能です。
- 労働市場での教育の必要性とは!?――教育があれば、人的資本を形成し、社会にイノベーションをもたらします。