- どうしたら現状を打破するようなイノベーティブな考え方ができるようになるでしょうか!?
- 実は、「創造性」の解釈を更新することがポイントかも。
- なぜなら、創造性とは誰もがもっと身近なものであるからです。
- 本書は、リバース・エンジニアリングの手法を知り、イノベーションを身近に感じる1冊です。
- 本書を通じて、「新しさ」とは何か?の解像度を上げることができます。
創造性をアップデートせよ!?
前回の投稿「【真似を恐れるな!?】リバース思考|ロン・フリードマン,南沢篤花」に続き今回もこちらの1冊『リバース思考 超一流に学ぶ「成功を逆算」する方法』をレビューしていきましょう。
クリエイティブな世界の専門家においてとくに、模倣や盗作に関する非難に非常に敏感です。決して悪意がなくとも、他者の作品について詳しく調べることは、自作品の制作アプローチに影響を与え、ついつい模倣になってしまうという懸念がつきまといます。
しかし、こうした見方は創造性についての考え方が間違っている。
創造性に対する誤った考え方
こうした模倣はいけないもの!独自にゼロ1で生み出さなければならない発想というのは、「理想主義」に凝り固まった考え方だと、著者のロン・フリードマンさんは指摘します。
なぜなら、創造性とはアイデアの組み合わせだからです。単独で生まれるものではありません。新しいアイデアや新鮮なものの見方に出会った時、人は想像力が高まるのです。外部の刺激を遮断して、想像力が高まることはそもそも困難であるのです。
そしてさらに重要な点として、オリジナリティ=創造性ではないということに気付けるか、ということがあげられます。そもそもオリジナリティと、創造性は異なる意味合いを持ちます。
オリジナリティとは、既存のアイデア、作品、または方法論に依存せずに、新しいか独特な方法で物事を考えたり表現したりする能力を意味します。
一方、創造性は、既存の知識や経験を新しいやり方で組み合わせたり、全く新しい概念を考え出すことによって、問題解決や新しい発見に寄与するものであると、定義できます。
つまり、必ずしもオリジナリティがなければ、創造性がないとも言い切れないのです。むしろ創造性とは、既存のものごとやアイデアの組み合わせであるのだから、さまざまなものごとをトレースして、そのポイントを知ることの重要性の方が論点になるのです。
模倣から始めよ!?
現状を打破するようなイノベーションをもたらすためには、何が必要でしょうか!?実は、「模倣」にヒントがあります。上述のように、既存の概念やアイデアを組み合わせる下地づくりが、模倣なのです。
模倣から始めることで創造性が開花する
模倣から始めることで創造性が開花する
クリエイティブなアイデアを求めて自分の内側ばかりを探っていても、大きな飛躍を遂げられることはめったにありません。自分の作品に固執して、外部の刺激を避けていると、どんどん創造性が失われていってしまいます。
心理学者は、ある問題に囚われすぎて陥ってしまう認知トラップを、「アインシュテルング効果」「知覚セット」「機能的固着」など、さまざまな名称で呼んでいる。
模倣から始めることで創造性が開花する
外部刺激を受け入れないと、考える選択肢は必然的に少なくなり、使い古されたアイデアを何度も繰り返し使うことや、過去にうまくいった解決策に落ち着くことになります。
これは、企業のイノベーションにも言えることで、これを打破するために両利きの経営をいかに組織の中に、内在させるかが経営者の腕の見せどころになるでしょう。
両利きの経営の組織づくりについては、こちらの投稿「【現実的アジャイルでいけ!?】両利きの組織をつくる|加藤雅則,チャールズ・A・オライリー,ウリケ・シェーデ」も、ぜひご覧ください。
長く愛されるアイデアを見つけるには!?
大切なことは、完全に模倣を避けることです。外部刺激としての模倣を大切にしながら、その中に公式を見出します。ときに時代のトレンドやものごとの本質かもしれません。そして、その公式を完全にトレースするのではなく、独自のひねりを加えるのです。それが、創造性に繋がります。
「何かまったく独創的なものを生み出さなくては!」というマインドセットから解放されましょう。刺激の中に身をおいて、自らが感じ方にフォーカスして、エッセンスを組み合わせたり、足したりして楽しみましょう。
長く愛される作品をつくる秘訣は、斬新さであない。実績のあるパターンを利用して、それに独自のひねりを加えることだ。
長く愛される作品をつくる秘訣は独自のひねり
たとえは、ソニーのウォークマンの開発に照らして、この組み合わせを理解してみましょう。実は、ソニーは、それまで外部のライセンスで録音と再生ができるテープレコーダーを生産していました。フィシップス社のコンパクトカセット規格でした。井深大さんは、出張時にも良い音で音楽を楽しみたいがために、当時まだまだ持ち歩きには大きかったテープレコーダーを小型化するためにレコード機能を削除し、再生機能に特化したマシンを開発しました。これがウォークマンでした。
この場合、フィリップス社のライセンス生産のテープレコーダーという外部刺激(当然ライセンス生産をしていたので、リバース・エンジニアリングが完了しています)を持っていながら、外で音楽を楽しみたいという独自のエッセンスを組み合わせることで、新たなウォークマンが誕生しています。
ちなみにこのエピソードはこちらの投稿「【「手中の鳥」を探せ!?】エフェクチュエーション|吉田満梨,中村龍太」でも取り上げさせていただいています。
クリエイティブな仕事をアウトプットしたかったら、外部刺激を絶えず受け入れることが大切です。情報は人がもたらします。プロジェクトごとにチーム編成を変えてみたり、外部の専門家にジョインしてもらったりなど、工夫をしてみましょう。
いまでは、世界的に評価されるフィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホですが、当時はまったく売れない画家でした。37年という短い生涯の中で、紆余曲折を歩みながら、ゴッホはある時、画家になることを強く志します。そこでゴッホが行ったことは創造性について、多くの示唆を与えてくれます。
ゴッホがまず行ったことは、当時評価をされていた絵画を分解して、分析し、再現できる手法を身につけることでした。その中で、絵画について広範な秘訣を見出しています。さらに、特定のジャンルにこだわることなく、この分析は続きました。幅広い画家を楽しんで研究したのです。
ゴッホはさまざまな作品の影響を取り入れることで、ジャンルの微妙な違いに敏感になり、絵に関する幅広い発想に触れて、独自の色使いを編み出して、洗練させていくのに役立てていきました。
今日、私たちがゴッホ独自のスタイルとして認識している力強く鮮やかな画風は、一気に完成したものではない。それは何年もかけて少しずつ改変され、完成していったものだ。
超一流のスキルを獲得するには収集、研究、挑戦が不可欠
スキルの習得には挑戦が不可欠です。ゴッホが安全圏で仕事をして常に挑戦を続けていなければ、彼の画家としての評価はなかったでしょう。しかし、彼は休むことなく練習し、10年のうちになんと2000点以上の絵画、素描、スケッチを描き続けました。単に多作であったわけではなく、常に彼は意識して自分の「弱点」に目を向け、常に自分の脳力の限界に挑戦していったのです。
一歩下がって自分を見つめる大切さをゴッホから学びます。自分の成長について、立ち止まって考え、思ったことを書き留めながら、自己認識を深め、そして成長へと導いていく・・その大切さを身にしみて感じます。
ゴッホが行ってきたことは、まさに模倣と言えることでした。自分がいい!と思える作品を集めて、その独創性を支えている「重要な要素」を見つけ、それを1から再現する取り組みによってもたらされたものです。
しかも、彼は単に模倣していたわけではありません。それを発展させて、複数の公式を組み合わせることで、独自のひねりを加えて、たくみにさまざまなリスクを冒しながら、多種多様な道具、画風、技法を試していったのです。
創造性、オリジナリティという既存の言葉、あるいは、無意識のうちに定義してしまった言葉に縛られる必要はありません。自分の欲望のままに外部刺激を受け入れながら、社会との関わりを一生懸命に活動として積み上げていくことの大切さを知りながら、自分なりに創造性を育んでいけば良いのです。
まとめ
- 創造性をアップデートせよ!?――ゼロ1でなければならない病から自分を解放しましょう。
- 模倣から始めよ!?――そのものごとを支える公式を見つけましょう。
- 長く愛されるアイデアを見つけるには!?――独自のひねりを加えてみましょう。