【キーは、「状況」という単位!?】バリュー・プロポジションのつくり方|前田俊幸,安達淳

バリュー・プロポジションのつくり方
  • どうしたら、顧客の価値を見いだすことができるでしょうか。
  • 実は、人という単位のターゲティングよりも、状況ターゲティングがポイントかも。
  • なぜなら、ニーズは常に状況に紐づくからです。
  • 本書は、顧客の価値を見いだすための方法論に関する1冊です。
  • 本書を通じて、顧客志向の実践について多くのヒントを得られるでしょう。

新しいペルソナが必要!?

今回の投稿では、前回の投稿「【顧客の状況を見よ!?】バリュー・プロポジションのつくり方|前田俊幸,安達淳」につづき、こちらの1冊『バリュー・プロポジションのつくり方 顧客の価値を「状況」で考えればプロダクト・サービス開発はうまくいく』についてレビューを進めてみたいと思います。

前回の投稿では、価値は、企業ではなく、顧客が決める物事であることを発見し、さらに、その価値を左右するのが、顧客のおかれた状況であることを知りました。その状況を知りながら、企業としてのビジョンを明確にして、顧客の状況を少しでも良くするために設定するコンセプトが、バリュー・プロポジションと呼ばれるものです。

そう考えると、何をターゲティング(目標)に設定するのかについても、考え方を変えていく必要があることに気が付きます。

これまでのマーケティングでは、顧客のペルソナを描きターゲット設定していました。顧客の属性ですね。

たとえば次のような情報です。

  • 東京都・世田谷区在住
  • 31歳 男性
  • 既婚 子どもはいない
  • 社会人歴9年
  • 大手製造メーカー事業企画 部長代理
  • 趣味:フットサル・料理
  • リモートワークが中心で、副業でコンサルティングも実施
  • PCはWindows、iPhoneを所有
  • 服にはこだわりがないが、バッグや財布などの小物は高級感があって機能性が高いものがいい
  • かさばるのが嫌なので、ヘッドフォンではなくイヤフォンがいい

N=1の顧客像を明らかにする上で、必要な骨子の情報がまとめられています。

今回のテーマでは、骨伝導のイヤフォンを販売する計画を立てているとしましょう。その時に、上位の情報で顧客の「状況」が手に取るようにわかるかがポイントです。少し解像度が低く感じますね。

製品のターゲットを顧客そのものではなく、顧客が置かれている状況に絞る企業が、狙い通り成功する製品を導入できる企業である。別のいい方をすれば、かぎとなる分析の単位は、顧客ではなく状況なのだ。

イノベーションへの解』――クレイトン・クリステンセン

状況ターゲティングとは!?

状況という単位で、ターゲティングをするということは、次のような情報を集めることです。

  • 週5日の勤務日がほぼリモートワークである。
  • オンラインミーティングが毎日5時間ぐらいある(2時間連続することも2日に1回ほど)
  • 手持ちのイヤフォンだと耳周辺の圧迫感が感じられて、時に痛みもあり、蒸れる感じもしてきた(これまではそんな感覚がなかった)
  • 仕事の関係者とシェアオフィスに出勤してしごとをすることが多く、メンバーのことが気にかかっており、話しかけられたらすぐに応答してあげたい。

いかがでしょうか。一般的なペルソナに比べて、ぐっと生活上の課題感の解像度が上がり、商品との接点も見え始めてきますね。大切なのは、人という単位ではなく、状況という単位とそこから見えてくる「ペイン」です。

つねに、ニーズの前に状況が存在するはずです。この点を忘れないようにしましょう。

「状況」というとらえ方は、顧客がいままさに満たされていない状況を客観的に見て、その状況を構成している要素の因果関係を十分せつめいしようとするものです。

顧客に注目する

これからの企業活動とは!?

バリュー・プロポジション的企業活動とは、上記のような状況の単位を見つけ、その上で、企業ができること=機能を試しながら当てていく作業です。

この行程に行く時に注意するべきは、完璧なものを最初から用意しよう!と思わなくてもOKだということです。エフェクチュエーション的発想を参考にしましょう。エフェクチュエーションは、こちらの投稿「【「手中の鳥」を探せ!?】エフェクチュエーション|吉田満梨,中村龍太」をご覧ください。

大切なのは、顧客の側と企業の側を行ったり来たりすることです。

バリュー・プロポジションをつくるうえでは、問題空間における「状況」と対になる、解決空間で検討べき概念を明らかにする必要があります。

問題空間と解決空間

問題空間とは、顧客のニーズやペインと言われているものです。「顧客の状況」とリンクします。一方で、解決空間とは、顧客の状況と対になる概念で、企業が提供する機能です。

機能とは、端的にいうと企業が「できること」を表します。

問題空間と解決空間

機能を仮ぎめしながら、顧客とともに検証を重ね、市場から価値を感じてもらいましょう。

価値を届ける仕組みとステップも変容します。

<伝統的な製品志向の仕組み>

  1. 製品設計
  2. プロセス設計
  3. 調達
  4. 製品製造
  5. サービス製造
  6. (マーケティング)リサーチ
  7. (マーケティング)広告
  8. (マーケティング)宣伝
  9. (マーケティング)プライシング
  10. セールス

 ↓

<顧客価値志向の仕組み>

  1. 価値の理解
  2. ターゲット選定
  3. 便益 / 価格の定義
  4. 製品・プロセス設計
  5. 調達 / 製造
  6. 流通
  7. サービス
  8. プライシング
  9. セールスメッセージ
  10. 広告
  11. 宣伝 / PR

このように企業活動のプロセス自体を変容させていく必要が、顧客志向に繋がります。

まとめ

  • 新しいペルソナが必要!?――人に加えて「状況」でもターゲティングを検討しましょう。
  • 状況ターゲティングとは!?――「状況」にこそ、ニーズのヒントがあります。
  • これからの企業活動とは!?――顧客起点のプロセスに変容させましょう。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!