- 何が、健康系食品のキーポイントになっていくでしょうか!?
- 実は、ウェルビーイング視点での「ずらし」発想がキーかも。
- なぜなら、成分だけで差別化は困難だからです。
- 本書は、インテグレート藤田康人さんによるこれからの時代の食と健康を考える1冊です。
- 本書を通じて、健康アプローチの新たな視点を獲得できます。
健康効果は、本当に評価される!?
機能性表示食品の制度がはじまってから、多くの食品が発売されてきました。SR認証が取得可能な成分も多様化し、最終生産者の商品数は増加する一方です。成分だけでは、差別化が困難な状況にすでになっています。
効果はドングリの背比べ。健康効果の現実。
効果はドングリの背比べ。健康効果の現実。
成分だけでは、なかなか自社の商品がフォーカスされづらい時代において、何が大切でしょうか。
ポイントは、顧客の不に寄り添った、解決の視点です。
セオドア・レビットさんのドリル理論をご存知でしょうか。ドリル理論(Levitt’s Diamond Model)は、経営学者セオドア・レビットさんによって提唱されたマーケティングの概念です。この理論は、製品やサービスを成功させるためには、その本質的な利点(コアプロダクト)だけでなく、追加の要素も重要であると考えます。
彼は、企業が提供する価値を4つのレベルに区分しました:
- コアプロダクト(Core Product):これは顧客が購入する製品やサービスの根本的な利益や機能です。例えば、ドリルのコアプロダクトは穴を開ける機能です。
- 実質的プロダクト(Tangible Product):これはコアプロダクトを物理的に形作る特性です。たとえば、ドリルの場合は、そのデザイン、ブランド名、品質、価格などが含まれます。
- 拡張プロダクト(Augmented Product):顧客が期待する以上の価値を提供する要素です。これには、保証、アフターサービス、製品の配送方法、利用可能な顧客サポートなどが含まれます。
- 潜在的プロダクト(Potential Product):将来の成長や進化の可能性を含む、拡張プロダクトを超えたものです。これは、製品の改良、新しい使用法の開発、追加サービスなどを通じて実現されます。
この理論は、顧客が製品を購入するときには、そのモノではなく、機能に着目することにフォーカスさせてくれます。一時期、「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」としても発展的に解釈されて、多くの人に知られていきましたね。
大切なのは、顧客は、成分ではなく、それが含まれている食品を摂って、その先の何かを解決したいということなのです。この点に着目して、商品設計、価格設計、購入体験、情報プロモートを一貫して設計する必要があります。
ウェルビーイングが争点に!?
顧客が求めることの次元がUPしています。
これまでは、Health・・・健康を求めていました。身体が健康であるという“状態”のことです。
現在は、Wellness・・・ウエルネスを求めています。これは、身体と心が健康であるという“状態”です。
そしてこれからは、Well-being・・・ウェルビーイングを求めます。身体、心、社会的立場(つながり)が健康であるうえでの“生き方”です。
状態から生き方へ、視点が拡張されていることがポイントです。
ウェルビーイングな生き方は、幸福を感じられるという研究もあります。過去の投稿「わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために その思想、実践、技術|渡邊淳司,ドミニク・チェン他」もぜひあわせてご覧ください。
上位概念のウェルビーイングを高めるアプローチが4Pを串刺ししたり、あるいは、企業の経営戦略レイヤーで顧客を俯瞰するときにとても重要な視点となります。理由は、LTVに関わってくるためです。
ウェルビーイングの生き方を追求していくためには、”生き方”であるように、生涯を通じて考えていく必要のあることです。なので、ウェルビーイングを追求することにはゴールが無いため、顧客とは自ずと長い付き合いになるのです。結果的にLTVという恩恵を互いが享受して、より良い関係性を育む着眼点としてウェルビーイングは機能する可能性があります。
また、下記に表されるような病気・疾病以前の状況についても、長い目線で見極めることが大切です。
病気・疾病 | コンディショニング | 未病 | |
定義 | 生活習慣病を発症、または発症リスクが高い状態だと自覚している人。 | 病気・疾病ではないが、現在の身体・心の状態に何らかの不具合、または課題意識を持っている人。 | 病気・疾病ではなく、不具合が顕在化しておらず、おおむね健康であるが、その状態から離れつつある人。 |
インサイト | 回復/リスク回避を求めている | 今より「より良い状態」を求めている | 漠然とした健康観をもっている |
ウェルビーイングな“生き方”を提案していくためには、病気・疾病だけにとどまらない、助走期間的に顧客のライフスタイルに寄り添う着眼点を大切にしてみましょう。
キーは、ずらし!?
藤田康人さんのキシリトールプロジェクトの事例は、単純にフィンランドから成分を輸入したプロジェクトではありませんでした。キシリトールガムの成功の裏には、デンタルクリニックと協力して、虫歯菌検査器具を置いてもらって、虫歯菌が検出された人にガムを配布していったのです。
虫歯になってから歯医者におとずれてつらい治療にたえるのではなく、虫歯になる前に予防の習慣を作るずらしがポイントでした。
ここに、生活者のライフスタイルに寄り添うための本質的な課題解決の視点があります。
また、ファンケルの「えんきん」という目の機能を向上させるサプリメントの開発にあたっては、競合商品がひしめく中、「目の調子がよくなる」といった漠然とした価値を提供することを避けました。生活者が本当に感じている目の疲れや老眼の進行、細かい手元作業のしにくさに着目して、「ピント調節力」に焦点をあてたのです。
このずらしによって、既存のアイケア商品との差別化に成功しています。
たとえば、これらのずらしによって、4Pを貫くコンセプトを1から考えるアプローチで、顧客のウェルビーイングな”生き方”追求に応えていくのがこれからのニュートリションマーケティングでさらに必要なことになります。
ソリューションの相乗効果により、「健康×食×ウェルビーイング」のマーケットが広がっていくのだと感じています。
ウェルビーイングは、人の心に立ち戻ることで見えてくる
まとめ
- 健康効果は、本当に評価される!?――顧客が本当に求めるのは、成分ではありません。
- ウェルビーイングが争点に!?――より拡大解釈した”生き方”の提案が求められています。
- キーは、ずらし!?――顧客が本当に求めていることに寄り添う改革が必要です。