【あなたが見ている世界は存在するのか?】未来は決まっており、自分の意志など存在しない。|妹尾武治

未来は決まっており、自分の意志など存在しない。
  • SF映画を見たり、ふとした時に、本当にこの世界は存在しているのか?だったり、私の意識というのはどこにあるのか?みたいな不思議な感覚(というか妄想)を覚えたことはありませんか?
  • 実は、著者が指摘する心理学的決定論からすると、そうやって疑問を持つことさえ既に決定していることなのかもしれません。
  • なぜなら、この論拠に立つと、わたしたちは自分の意志のちからでは生きられず、脳と環境の相互作用によって自動的に身体を動かされるという反射を繰り返しているだけだからです。
  • 本書では、著者の巧みでユニークな論述によって、心理学的決定論が展開されていきます。
  • 本書を読み終えると、わたしたちの意志や意識とはなにか?というそもそもの疑問を持つことの面白さに触れることができるでしょう。

自由意志と決定論とは?

意志が生じるよりも先に脳が動いているのだ。

第1章 自由意志と決定論と

哲学の分野で、決定論とは全てのできごとは事前に決められているという前提に立つ考えです。そこに、心理学をかけ合わせたのが本書の主題です。

繰り返しテーマとなるのが、自分の自由な意志を人は持つのか?それによって、自分自身をコントロール本当にできているのか?ということです。

著者はさまざまな学説から、これを強く繰り返し否定します。

そもそも、意識の前に、脳が動いていて、その前に、身体が反応しているそうなのです。

心理学の実験では、意識よりも脳よりも前に、手に汗を文字通り握る実証実験があるのだそうです。

そう考えてみると、「反射」の連続が、わたしたちの日常なのだ、という仮説に立てます。

情報さえあれば、未来は固まる?

我々は意志の力では生きていない。脳と環境の相互作用によって、自動的に体を動かされ、全て事前に決まっているプログラム通りに反射を繰り返しているだけだ。意志で作っているように見えても、全ての行動は環境からの刺激に対する、反射なのである。

第1章 自由意志と決定論と

意識の前にリアクション(「反射」)があるので、そもそもわたしたちは、環境(あるいはすでにある情報)に動かされて生きているということになります。

それは、たとえば3次元の影が、2次元のように、別の外部がすべてを支配している感覚です。

私たちはオートマチックに生きているのです。

そして、そうして捉えたあたらしい受動的な「意識」という言葉は、万物にあるのだ。ということを著者は語ります。

つまり今、木からはらりと落ちた枯れ葉にも、「意識」はあるのだと言うことになります。

人や動物が特別なのではなく、この世の中に存在しているものは、環境からの影響によって動かされているのです!

暴走する脳は自分の意志で止められない!

我々は自主的に生きているのではなく、環境からの作用によって「生かされている」のだ。

第2章 暴走する脳は自分の意志では止められない

このような論拠に立つと、私たちが別の大きななにかから突き動かされているだけのちっぽけな存在であるようにも感じてきます。

脳科学では、ニューロンひとつひとつの挙動は解明できても、それが連鎖しているさまは、現代科学をもってしても解明できていないそうです。

そうしたブラックボックス的な機構に支配されながら、私たちは自由意志などなく、ひたすらに環境の影響を受けながら暮らしているのです・・・。

意識とは情報であり、生命とはその情報を増やすために配置された「なにがしか」(存在)である。

第13章 Cutting Edgeな時代に生きる

著者は、これらの論述のあとに、独白をしています。苦しい幼少期、と自死を選び、死の淵をさまよった経験・・壮絶な話とともに、この「心理学的決定論」を展開した理由を話してくれます。

この「心理学的決定論」を、読み物として楽しい、あるいはアイデアとしてワクワクするというような心持ちで読んでもらって、たとえば、自死寸前の人にとっては少しでも気持ちを楽になるヒントであってほしいと。

「トンデモ本」と、著者が自ら言うように、その読後感は不思議なものがあります。でもどこか、著者の力強い問いかけに、気持ちが動かされる不思議な魅力があります。

まとめ

  • 自由意志と決定論とは?――自由意志はなく、私たちは環境(情報)の影響を受けながら、すべて事前にコントロールされているという考えが、心理学的決定論です。
  • 情報さえあれば、未来は固まる?――心理学的決定論の立場に立つと、万物はすべて環境(情報)にコントロールされています。その点からすると万物すべてに「意識」があるとも言えるのです。
  • 暴走する脳は自分の意志で止められない!――自由意志はない私たちという仮説を前提に、どう感じるかはあなた次第。

これまた、著者が自分で「トンデモ本」と言っていますが、本当に不思議な本でした・・。でも、誰もが考えたことのある、意識は本当にあるのか?という問いに向き合う刺激的な時間を過ごすことができました。

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