- 21世紀の経営思想は、どのような軸をもって語られるのがよいでしょうか?
- 実は、資本主義と社会主義・共産主義のいいとこどりを考えることかも。
- なぜなら、それぞれすばらしい要素を含んでいるからです。
- 本書は、出光興産創業者出光佐三さんによる、経営思想の1冊です。
- 本書を通じて、旧来の主義によらない独自の思想(軸)を持つことの大切さを知ります。
理想の世界とは!?
世界の人びとが求めている福祉とはお互いに仲よく助けあうことですから、人間の働く意味がそこに出てきます。
序 働く人の資本主義とはなにか
人間は働かなくてはいけません。また、お互いのために働かなくてはいけません。自分のためのみでなく、人のために働くこと。これを原点にものごとを考えていくと、所与の社会や会社の定義に疑問をもたらします。
資本主義は成功しました。能率を上げつづけて、イノベーションを起こすという点については。能率・効率を上げるということについては、資本主義の得意分野ということが私たちは知ったのです。しかし、ひとりひとりの幸福が置いてきぼりになる可能性があることが見えてきました。格差も助長させます。資本家の搾取もあります。
一方で、社会主義・共産主義は、働く人の尊重は良いかも知れませんが、非能率的であることが何点です。社会を全て操作できるという視点に立つことも、複雑系の世界に対して、だいぶムリがあります。
出光佐三さんが、理想とするのは、資本主義と社会主義・共産主義のいいところを取った、「働く人の資本主義」です。互いのために働くことをひとりひとりが見出し、そのために、効率化・能率化を効かせていく、そんな自発的な社会のあり方を出光佐三さんは、追い求めました。
金の限界とは!?
私は「金の力には限度がある」「金の力に限度あらしめよ」と言いたいんです。なにか金の力が無限の力を発揮するように錯覚しているところに大きな誤りがあるように思いますね。
序 働く人の資本主義とはなにか
たしかに、金には一定の力があります。労働や仕事の証を、蓄え、交換し、殖やすための力です。でも金の力を認めつつも、金だけではどうにもならないことが多くあることを知る必要があります。
出光佐三さんは、金の力を「金利程度」と言います。だから、それ以上に配当することについては、疑問を呈する。つまり、金利以上の配当をすることは、労働者のためにならず、資本家に利のある世界を助長させるということを言います。
人件費、金利、配当と、企業の利潤はいろんなところに配置することができますが、この配置にこそ、思想が必要であるということを、出光佐三さんはおっしゃりたいのかなと、思います。
そういった点では、伊那食品工業塚越寛さんの人件費はコストではなく、目的であるという言葉にふれる点でもあります。ぜひこちらの投稿「【利益は、うんち!?】「いい会社」ってどんな会社ですか?|塚越寛」をご覧いただきたいです。
経営思想に必要なのは、ものごとに正しい主従を与えることなのかも知れないと、思います。
ちなみに、金利について考えていただくにはこちらの1冊「【金利市場は、3京円!?】教養としての「金利」|田渕直也」がおすすめです。
現代の産業、最大の問題とは!?
仕事のなかにどうして楽しみを見いだすのかということは、現代の産業社会のいちばんの問題だと思います。
4 働く人の資本主義と能率
一般に労働は苦しいものだという観念があります。苦役という言葉があるとおりです。しかし、労働を単に苦しいものとして捉えていくことの先に、幸せはあるのでしょうか。ともすると、盲目的に労働はつらいものだということに、落ち着けてしまいがちですが、この当たり前を打ち破る視点をひとりひとりが持つことに、突破口がありそうです。
そもそも労働と仕事は、意味が異なります。
労働(ろうどう)と仕事(しごと)は、日常の言葉としては同じような意味で使われることが多いですが、厳密には違う意味を持っています。
- 労働 (ろうどう):
- 体力や知力を使って行う活動のことを指します。
- 物質的な報酬や対価を得るために行われることが多いです。
- 労働法などの文脈では、雇用関係における作業を指すことが多いです。
- 仕事 (しごと):
- 一般的には、何らかの成果を得るための活動やタスクを指します。
- 労働以外にも、家庭の中での家事やボランティア活動など、報酬を得られない活動も含めて「仕事」と言うことができます。
- もっと広義には、人が社会の中で果たす役割や職務全般を指すこともあります。
要するに、労働は報酬を目的とした作業を指すことが多く、仕事はより広い範囲の活動や役割を指すことが多いです。仕事は誰かのために働くことと定義してもいいかも知れません。そこには、必ずしも報酬が伴わない。そんな仕事が増えていく中で、出光佐三さんが理想とする真の福祉国家がなし得るのかも知れません。
出光佐三さんは、出光興産という会社をつぎのように形容します。
出光は試験管のなかにいるというのはそれですよ。
4 働く人の資本主義と能率
出光興産という会社自体が、社会に対して新しい視点と活動を提示するまさに実験体であると・・。出光興産では、多くの社員が自発的に、仲良く、楽しく、働くさまが見られていると言います。だから、上意下達だけではなく、現場からのボトムアップの変革も多いとのこと。大切なのは、人や社会を見つめる視野視座、視点なのだと思い知ります。
自発的に働くには、仕事に対する使命感みたいのものが必要
4 働く人の資本主義と能率
当たり前に提示されている社会や会社の構造や仕組みを疑って、でもそれだけじゃなくて、自分で動いてみて、小さな成功と仲間集めをしていきながら、変化の動きを広げていくような取り組みが、「しごと」に繋がっていくのかも知れないと思いました。
まとめ
- 理想の世界とは!?――ひとりひとりが互いのために仕事を進んでする世界観です。
- 金の限界とは!?――金の力は金利程度のものです。これを超えるのは人の力です。
- 現代の産業、最大の問題とは!?――仕事の「楽しみ」が覚えづらい構造にあります。