【リンに着目せよ!?】腎臓が寿命を決める 老化加速物質リンを最速で排出する|黒尾誠

腎臓が寿命を決める 老化加速物質リンを最速で排出する
  • どうしたら、老化を食い止めることができるでしょうか!?
  • 実は、腎臓とリンの関係を知ることが私たちの老化という定めと向き合うことになるかもしれません。
  • なぜなら、生物が海から地上へ上がる時に、すでにリスクという背骨を背負っていたからです。
  • 本書は、腎臓とリン排出と、老化との関係性を説いた1冊です。
  • 本書を通じて、健康の新たなスタンダードを知ることができます。

リンが寿命を左右している!?

通常、一般論として身体の小さな動物ほど短寿命で、大きな動物ほど長寿命であることが言われています。

実は、この通説に当てはまらない例外的生き物がいるのです。

例えば、ハダカデバネズミ。このネズミは身体が小さいにも関わらず、平均寿命が28年です。また、コウモリも身体が小さい割には、なかには30年も生きるものがあります。

身近な例(?)としては、ヒトです。

何が異なるのでしょうか!?

生体内の「ある成分」がこれらの動物の寿命の長さに関係しているのではないかと取り沙汰されているのです。

はじめに

それが、「リン」です。

血中リン濃度が高い動物から低い動物へと並べていった場合、
「ネズミ3年→うさぎ10年→ヒツジ20年→ハダカデバネズミ28年→コウモリ30年→ゾウ70年→ヒト・・」という順番になります。

不可欠なリンが悪さをするとき!?

リンが、悪者のようですが、実は身体に不可欠な物質です。

大変興味深いのが、こちらの表です。

順位  海水    人体  
水素水素
酸素酸素
ナトリウム炭素
塩素窒素
マグネシウムナトリウム
硫黄カルシウム
カリウムリン
カルシウム硫黄
炭素カリウム
10窒素塩素
海水と人体の10大元素

人体の組成は当然のように海水に近いのですが、1点異なることがあります。マグネシウム、リン、ここがことなるのです。

この事実は、生物の進化の過程のどこかの時点で、われわれの遠い祖先が体にリンを積極的に蓄えるようになったことを意味します。

動物はなぜリンを骨に蓄えるようになったのか

身体にリンを大量に蓄えるようになった最初の生物は、「硬骨魚類」です。約4億年前に進化しました。それまでの生物は、キチンというやわらかい物質で骨をつくっていたのですが、「硬骨魚類」の登場で地球上で硬い骨を持つ生物が初めて登場し、その後の地上生活への足がかりを持つのです。「硬骨魚類」の骨は、リン酸カルシウムで作られています。

しかし、これが諸刃の剣でした。骨は常時、溶かしては作り続けているのです。疲労骨折などを防ぐため、常に新しい骨に更新していく必要があるためです。リンとカルシウムの組み合わせは溶けやすいので、骨の作り替えにうってつけでした。骨でリンが検出されている場合は、悪さをしないのですが、リンの血中濃度が高くなり、リン酸カルシウムが血液に溶け出した場合、危険物質になります。

健康被害を引き起こしている”実行犯”なのです。

リンとカルシウムは「いつでも固められる工事用セメント

リンの血中濃度が過剰に高い状態を避けるべきですが、これを支援してくれているのが、「濾過機能」の臓器である腎臓です。

腎臓の「濾過機能」は消耗品で、加齢とともに減少していきます。60~70代になると、ネフロンという濾過機能を持つ器官がなんと20代の半分になってしまうのです。

もちろん、濾過機能ネフロンは、生まれもって非常に潤沢に予備がつくられているので、半分になっても問題はないのです。しかし、長年積み重ねられた悪い生活習慣によっては、腎臓にダメージが積み重なり、健康を害する原因にもなります。

ネフロンとは、「糸球体」と「尿細管」に分かれています。糸球体とは、大きなものを残して小さなものを通過させる「ざる」のような機能を持ち、粗く濾された液体を原尿といいます。原尿は続いて、尿細管に向かいます。尿細管とは有用成分を身体の中に戻し、その他と詳しく分ける機能を持ちます。これらの機能によってなんと、ヒトは180リットルの原尿を生産し、そこから、さらに10%の1.8リットルを尿として排出しているのです。

腎臓スゴイし、身体の循環スゴイ・・!

でも、ライフスタイルによっては、この腎臓の機能が低下する悪循環に陥る可能性があります・・。

腎臓とリンによる老化メカニズムとは!?

老化のメカニズムは、次の負のスパイラルで悪循環に陥っていきます。

加齢によってネフロンの数が減ってくる。
 ↓
にもかかわらず、若い頃と同じような食生活を続けていると、リンの摂取量は変わらないので、ネフロン 1本当たりのリン排泄量が増える。また、リン排泄量を増やす必要に迫られ、 FGF 23の値が上昇する。
 ↓
FGF 23は、尿細管におけるリンの再吸収を抑制するので、ネフロン 1本当たりのリン排泄量が増える。
 ↓
その結果、原尿中のリン濃度が上昇し、CPPが発生。 CPPによって尿細管が障害を受けるようになる。
 ↓
尿細管障害を起こしたネフロンが死に、さらにネフロン数の減少が加速するようになる。

*CPPとは、リン酸カルシウムの粒子のことです。
*FGF23とは、リンを排出する必要を腎臓に知らせる機能です。

大切なのは、悪循環の引き金となるリンを過剰摂取しないようにすることです。リンが多く含まれる食品は次のとおりです。

  • 有機リン──肉類、魚介類、卵、乳製品、野菜、穀物などに広く含まれているリン。食品中の有機リン含有量はたんぱく質含有量に比例することが多く、このため、肉、魚、牛乳やチーズなどのたんぱく質食品に多い傾向がある。ただし、体内への吸収率は 20 ~ 60%と食品によってかなり違いがある。
  • 無機リン──食品添加物として使用されているリン。ソーセージやハム、ベーコンなどの加工肉、干物や練り物、スナック菓子、インスタント麵、ファストフードなど、ほとんどの加工食品に含まれている。体内への吸収率は 90%以上で、口から入った添加物の無機リンはすべて吸収されてしまうと思ったほうがいい。

これらは単純にリンの多さだけで選ばれたリストであって、それぞれの食品の体内への「吸収率」がまったく無視されてしまっているからです。

じつは、有機リンには「吸収されやすいタイプのリン」と「吸収されないタイプのリン」とがあります。一般に、肉や乳製品などの動物由来の有機リンは吸収されやすく、野菜などに含まれる植物由来の有機リンは吸収されにくい傾向があるのです。

「吸収されやすいタイプのリン」と「九州されないタイプのリン」

なかでも、とくに覚えておいていただきたいのは、「リンが多いとされている食べ物」であっても、人の体にはまったく吸収されないタイプの食品があるという点です。

その「吸収されないリン食品」が「大豆」です。大豆の有機リンは「フィチン酸」というかたちで含まれていて、このフィチン酸は人間の腸からは吸収されません。たくさん摂ったとしても、吸収されないまま便と一緒に排泄されていくことになります。

つまり、「吸収されないタイプのリン」なら、別に食べても構わないということ。前のページの表の中では大豆は「リンが多い食べ物」とされているのですが、これは「食べてもいいリン」だということになります。

肉や牛乳、プロセスチーズをたくさん摂ってしまう人は、取り方を工夫する必要があります。また、添加物などにもリンが含まれているケースがあるので、添加物が多量に含まれている食品を基本的に避けることが望ましいでしょう。

現代では普通の食生活を送っている人でも必要量の3倍相当のリンを摂取してしまっています。

自分の中に「リンを抑えるブレーキ」を持とう

今後、塩分、カロリー、コレステロールなどと同じようなポジションとして、リンが参加してくる可能性が高いです。未来の健康指標のひとつとして、今後注目してくのが理想かもしれませんね。

著者黒尾誠さんが指摘するのは、健康と寿命は、最後は「動くこと」と「食べること」に尽きるとのこと。自分の生活を見直してみる機会を本書を通じて見つけてみるのはいかがでしょうか。

また、身体の循環、悪循環・好循環を考える視点としてシステム思考が、参考になると思われます。こちらの投稿「【システム思考×対話がポイント!?】ダイアローグ 価値を生み出す組織に変わる対話の技術|熊平美香」がおすすめです。

まとめ

  • リンが寿命を左右している!?――血中リン濃度の高低が、寿命に逆相関しています。
  • 不可欠なリンが悪さをするとき!?――リンの血中濃度が高いことに起因し、老化への悪循環が生まれます。
  • 腎臓とリンによる老化メカニズムとは!?――リンの摂りすぎに注意して食生活を再考しましょう。
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