【企業とは何かを、再定義せよ!?】組織の意味を再定義する時 企業は創造性と生産性を両立できるか|琴坂将広

組織の意味を再定義する時 企業は創造性と生産性を両立できるか
  • 企業は、創造性と生産性という、相反する活動を内包できるでしょうか。
  • 実は、オープンイノベーションにひとつの解があるかもしれません。
  • なぜなら、社内外の知の統合が、創造性・生産性向上いずれにも効果的だからです。
  • 本書は、創造性と生産性をトレードオフにしない方策を考える1冊です。
  • 本書を通じて、経営者として具備したい戦略視点を得ることができます。

企業が今求められていることとは!?

創造性と生産性のいずれもが求められる時代になりました。

新しい技術やアイデアをもとに市場をつくり出し、競争優位を築くためには、創造性が必要ですし、既存の事業やサービスの生産性を高め続けていくことは、永遠の課題です。

変化の激しい競争環境を生き抜くためにも、創造性と生産性の共存は、根源的な経営課題である。そのどちらか一方だけでは、企業は存続し続けることはできない。

付加価値創造のトレードオフ

こうした論点は、「両利きの経営」というキーワードを起点に足下でもさかんに議論されています。こちらの投稿「両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く |チャールズ・A・オライリー,マイケル・L・タッシュマン」もぜひご覧ください。

従来の5つの論点とは!?

創造性と生産性の向上のための、いくつかの論点がかたられてきました。それが以下の5つです。

1)独立した組織を作る
創造性を発揮する組織を、生産性を追求する組織から乖離するという打ち手です。多くの企業でとられる手法です。既存の資源を活用できないことや、実用性を追求させるがあまり、逆に実用性に乏しい利益を生まないアイデアが無作為に量産される危険性をはらんでいます。よって、万能の策とは言い難いものです。

2)製品設計を工夫する
製品にモジュラー構造を組み込むことで、プラットフォーム化を目指すことが可能になります。多様な企業が製品核心に参加でき、新たな商品群が量産される素地を担保できます。結果、自社で独占し、利益に結びつけることで生産性を引き上げることと、多様な企業の参入を許し、技術革新を促進し、生産性を向上する内容を共存させることに成功させることが可能になります。ただし、プラットフォームビジネスは、ディスラプターの登場により瓦解する可能性を常にはらんでいます。イノベーションのジレンマ陥りがちな既存組織では、大規模変革に対応することが極めて困難になります。

3)外部資源を活用する
創造性ある技術と人材を外部から調達してくる発想です。ただし、これは大きな困難を伴います。獲得した技術と人材を自社に統合して商業価値を引き出しながら、継続的に創造性を発揮する納涼句を失わないように、一定以上の自治を保証するという絶妙な舵取りが求められるからです。

4)評価制度をつくり込む
創造性の発揮と、生産性の改善、それぞれの共存に資する「適切な評価指標と報酬制度を運用する」ことは極めて重要です。
しかし、生産性を向上させていくような漸進的イノベーションと、創造性がカギとなるような破壊的イノベーションでは、ひとくちに目標設定と言っても、その特性や適切な報酬システムがまったく異なることから、両立させることは極めて困難になる。現実的には、試行錯誤の段階を突破することはできません。

5)業務プロセスを整備する
イノベーションのジレンマ」を執筆したクレイトン・クリステンセンによると、意図的戦略策定プロセスと創発的戦略策定プロセスの2種類を効果的に使い分けることが戦略策定の成否を分けると言います。
前者は意識的で分析的なプロセスであり、データの徹底的分析により意図的な成果を追求します。後者は経営の現場から創発される新たな方法論や知見をもとに、何が有効化を学習します。この根本的に異なる2つのアプローチを両立させることは難しいです。

創造性と生産性の共存をいかに実現するか。一つの企業でこの両立を可能とする方法は、なかなか見出すことができない。

オープン・イノベーションが問いかけるもの

オープン・イノベーションの可能性とは!?

2つの相反する機能を組織内に取り込むためには、オープン・イノベーションの手法にヒントがああるかもしれません。

オープン・イノベーションのカギとなるのは、社内外の組織境界をまたいで知見を共有し、組織間の協働によって事業を創出し、利益を生み出す仕組みを育て上げる点である。それは、単に創造性を獲得するためだけではなく、生産性を引き上げるためにも活用されうる。

オープン・イノベーションが問いかけるもの

オープン・イノベーションが社内外をまたいだ知識の探索、保持、活用であると定義すれば、これは、19世紀~20世紀初期にはすでに登場していた。じつは、この手法は日本企業にとっては新しいものではありません。

日本の製造業は自動車産業をはじめとして数多くのサプライヤーを技術開発と生産管理の現場に巻き込むことで、創造性の発揮と、生産性の改善を両立させてきました。

オープン・イノベーションが問いかける最も重大な問いとは、「企業とは何か」という問いでもあります。どこまでを社内で行い、どこからを社外で行うか、それは戦略的な意思決定であり、オープン・イノベーションの文脈でも戦略策定の根幹にあります。

そしてこの「企業とは何か」という問いの延長線上に、創造性と生産性をいかに共存させるかという問いに対する、未来の答えの可能性があるように思える。

オープン・イノベーションが問いかけるもの

改めて注目されるべき日本型経営については、こちらの投稿「【懐かしくも、新しい経営!?】「21世紀の経営」を語る|田坂広志」もぜひご覧ください。

まとめ

  • 企業が今求められていることとは!?――創造性の発揮と、生産性の向上、2つを両立させることです。
  • 従来の5つの論点とは!?――これまでも経営戦略オプションはいくつか描かれてきましたが、万能薬的手法はありません。
  • オープン・イノベーションの可能性とは!?――企業とはなにかという問いに答え、社内外の技術と知の融合がポイントです。
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