- 会社運営で大切にしたい普遍的な思想はあるでしょうか。
- 実は、「誠実」であることにヒントがありかも。
- なぜなら、人の社会は誠実さに敏感だからです。
- 本書は、誠実さをキーに、どうしたらよりよい組織が作れるかのレビューです。
- 本書を通じて、会社(組織)運営の方針によりよい視点を得ることができます。

誠実さとは!?
誠実さ、嘘をつかないこと、常に真摯であることが、会社運営では欠かせません。なぜそんな当たり前なことをいうか・・・ですが、実はそうした当たり前のことが人にとっては難しいことだからです。
人々は特定の状況下では、不誠実な振る舞いをしてしまいます。小さな嘘を日常でついてしまうことはないでしょうか?辻褄を合わせるように会話に乗せてついてしまう嘘が積み重なっていく時、組織のベクトルは大きくネガティブな方向へ触れていきます。嘘とまではいかないが、冗談の「つもり」で語った一言が、バタフライ効果で、大きな影響をもたらすことも考えられるのです。
大切なことは、そうした人間の性に注目し、いかに誠実であるかに自覚的になれるか?です。
誠実さとは、次の3つのピースが1つでもかけていない状態を指します。
- 正しいことを言い(真実)
- 正しいことを行い(公正)
- 正しい動機に基づいて正しい行動(目的) を続けること
3つ揃ってはじめて1つの力となる。
はじめに(ロン・カルッチ)
人間の身体には、初期設定として誠実さのバロメーターが組み込まれていると、著者ロン・カルッチさんは言います。誠実であればあるほど、気分が良くなるのです。私たちは、この感覚にとても敏感で、かつ重要視しています。心身の不調をきたすのは、よくあることかも知れませんが、自分自身に誠実でなくなることがきっかけです。たとえば、これは本当に意味があるのかな?と悩みながらブルシット・ジョブに邁進していたり、あるいは、ライフタイムの使い方のバランスが崩れてごまかしながら、仕事をしていたりとか、そうした自分の本音に対して誠実でない状況が続くと、人はまいってしまうのです。
これは、社会という人の拡大集団についても言うことができます。誠実でないことは、人の本来の生き様に反するのです。
大切なことは、誠実であることは、上記の3つのポイントにもあるように、行動まで落とし込まれている必要があるということです。
パーパスがやはり重要!?
会社に置き換えて考えてみると次の要件が満たされている時、誠実さにベクトルが向いていると捉えることができます。
- 組織のあり方や目標を戦略的に明示している
- それに伴う行動を起こしている
- その結果、
従業員が真実を知り、公正な行動を取り、公正な行動を取り、目的を持って働く傾向が高い状態を作れている
組織全体に誠実さのムーブメントがあれば、従業員に対しては、そうでない企業に比べて3倍のより良い影響力をもちます。
アイデンティを明確にする――自分が言う通りの姿でいる――というのは、従業員や市場に対して世間している自身の在り方と、実際の自身の在り方が一貫しているということ。
言葉と行動の溝を埋める
つまり組織(と、組織を通じてその先の社会)に対しても、自分に対しても、嘘がない状態を素直に目指せる環境次第で、組織パフォーマンスは左右されるということです。
大切なのは、従業員が、「自分たちはこのような組織である」ことを語れる組織が、実際にそのような組織を目指せるということです。言語化なくして、自らの心に訴えかけることはできないですし、ましてや相手(他人)に対しても標榜をすることは当然できません。
キーは、やはりパーパス・ドリブンにあります。社会における役割(使命)をパーパスとして明言し、それに基づいた行動を促せているかどうかに、私たちの意識が向いている必要があります。
たとえば、消費者の生活の質を向上させようと明確なコミットメントを掲げる企業(ブランド)は、市場平均対比120%のパフォーマンスを示しているというデータもあります。さらに過去10年でパーパスドリブンなブランドの企業価値評価は175%の急激な成長も見せています。17年にわたり28社を対象に行なった調査では、S&P500銘柄の平均成長率が118%であったのに対し、パーパスドリブン企業では1681%に及びました*。
*Business of Purpose (n.d.) Statistics, https://www.businessofpurpose.com/statistics (archived at https://perma.cc/J2QP-TNV6)
パーパスは、実行が全てです。パーパス・ウォッシュという言葉で、単純にパーパスだけを掲げてそれが実行に移っていない企業が批判にさらされることも増えてきました。個人のパーパスに火をつけながら、実際に企業の具体的な行動として社会に対してパーパスを実体化していくことが大切なのです。
パーパス・ドリブンについては、こちらの1冊「【あなたのパーパスは、なんですか?】パーパス・ドリブンな組織のつくり方|永井恒男,後藤照典」もぜひご覧ください。


パーパスは実行にあり!?
たとえば、一人ひとりが、自分の行動を振り返ってみることも大切かも知れません。
年度末において、裁判にかけられたことを想定してみましょう。あなたが、会社の「ミッション」を追求できていない罪に問われた時に、あなたが、有罪判決を受けてしまうような証拠をどれだけ揃えてしまっているでしょうか。もちろん、何も行動できていないということも証拠になります。
そうして考えてみると、実は私たち構成員一人ひとりの行動が会社の行動をなしているという当たり前の事実に気づきます。
一方で、そうしたことに気づいてもらえるためには、会社は「ミッション、大志、文化」を支えているのは、従業員一人ひとりであるということを、常に語っていく必要があります。
「あなた(You)」ではなく、「私たち(We)」という観点で、会社と個人がひも付き、互いに刺激をしあいながら、パーパスドリブンな取り組みを進めていける環境設定が求められます。
そのための組織的環境整備としては、次の3点をケアしていくことにもあります。
1)従業員に求めるものを組織の最優先事項と明確に結びつけること
2)上司を指導者として効果的に教育すること
3)きわめて高いパフォーマンスについては適切な形で報酬を与えること
一度、組織の方針と目標設定と個人の評価基準と方法がどの様になっているのかを点検することが大切ですね。
そして、パーパス・ドリブンを行いながら、誠実さのベクトルを維持していくためには、心理的安全性の要素も欠かせない点を強調したいと思います。組織に対してある程度自分を出すことができるか、そうした安全な環境が整備されているかが、一人ひとりの行動強化に欠かせないということです。
心理的安全性については、こちらの1冊「【安全だから、闘える!?】心理的安全性のつくりかた|石井遼介」もぜひご覧いただきたいですが、コロナ禍を経て、物理的な距離感を作りづらくなっていたり、あるいは、さまざまなキャリアの在り方が許容されたり、あるいは、安定成長社会から定常社会へ移行する中、組織成長が必ずしも従業員にコミットし辛い環境の中、心理的安全性の重要性は相対的に向上していると言えるでしょう。それは、企業に居ても良いなと思える指標でもあるからです。
ほとんどの心理学者がこのように認めている。不誠実あるいは不公正な言動の大半は、利己心によるものではない――自己防衛心によるものだと。
エピローグ
言い換えれば、ほとんどの人は基本的には誠実で公平な行動を取っているのです。嘘をつくのは、やむなく自分のニーズをほか(他者)よりも優先する必要がある・・と感じてしまうときなのです。それは、すなわち環境の設定によるのだと思われます。避けるべき何らかの脅威や危機を排除することができるか、そうした組織背景に意識的になれるかがキーだということでしょう。
まとめ
- 誠実さとは!?――意識的にならないと守れないことです。
- パーパスがやはり重要!?――社会的な意義意味と個人の信条のクロスポイントを作りましょう。
- パーパスは実行にあり!?――言葉だけでなく、行動がキーです。
