- 100年生きてしまう時代において、どんな人生設計(キャリア)が必要でしょうか。
- 実は、これまでのようなスキル・能力向上重視ではなく、その根底にある人生観が大切だからです。
- なぜなら、哲学的思想を持っていくことが、心身ともに健やかに働き続けることに寄与するからです。
- 本書は、キャリアコンサルタントである村山昇さんによる、これからの働き方を深く突き詰める1冊です。
- 本書を通じて、自分や自社従業員のキャリア戦略のあり方を見直すきっかけを得られるでしょう。
本書は、村山昇さんによるこれからのキャリアを考えるための1冊です。大きな時代感を持ちながら、ひとりひとりのキャリア戦略に必要な視点を提供してくれます。大変、読みどころの多い著書ですので、複数回に分けてご紹介をさせていただきたいと思っています。ぜひ、本書をお手にとっていただきながら、お付き合いいただければと思います。
「能力・処し方」 vs 「観・在り方」とは!?
企業オン経営層や人事部門では従業員に「もっと生産性を上げろ」「キャリアを自立せよ」というだけで、理念軸をもったメッセージ・人材育成方針を打ち出せていません。
もちろん知識やスキル習得のための教育は熱心に施すのが重要です。しかし、それは事業の競争力を保ち、組織を存続させるために人的資源を錆びさせないという理由にすぎず、ひとりひとりの従業員を全人的にどう育み、どんな働くことの醍醐味を味わってもらいたいのかという哲学は希薄です。
多くの従業員は目先の業務処理と短期的な数値に追われるばかりで、中長期的に自組織が、そして自分がどこに向かうかわからないまま、とりあえず担当事業の存続と自分の生活維持を目的にして働いています。
「目標数値」は溢れるが「目的・意味」が語られない職場
能力開発だけでは事足りず、もうひとつのアプローチが必要です。
それが、「能力・処し方」 vs 「観・在り方」です。
言い換えれば、「◎◎の能力を磨けばキャリア形成がうまくできる」ではなく、「自分の能力を何に使って世の中に貢献していくか、それを軸にして働く・生きるプロセスからキャリア形成はなされていく」という思考順序です。
後者のために必要なもの――それは「観」です。「能力」主眼のアプローチ、これが私の取った研修コンテンツ開発の基本でした。それは必然的に、抽象的・哲学的な思索を伴うものでした。
「能力・処し方」主眼のアプローチ vs 「観・在り方」主眼のアプローチ
これまでと、これからの時代のキャリア観とは!?
新しいキャリア観とは一体どのようなものでしょうか。これまでと決定的に異なるのは、まず100年を生きるということ、そして、社会が成長ではなく、定常を前提とすることです。
これらを総合的に考えると、100年続く幸福や健康について考える必要があり、それを過剰な成長をもって達成することは避けるべきだというスタンスになるはずです。
右肩上がりの経済のもと、誰もが会社に忠誠を尽くしてハードワークをし、物質的に裕福になるという画一的パターンの成功(者)を目指すのではなく、100歳まで生きてしまうかもしれない人生において、一人一人が自分らしく健やかに働き続けられることを目指す、これがこれからの時代の主流の構え方になるのではないでしょうか。
「健やかさ」という価値が見なおされる
「健やかな」キャリア観とは!?
健やかなキャリア観とは、次にあげるような要素を満たすものだと村山昇さんは提唱します。
- 働くことを通じて自分の「在り方」を豊かにさせていく。
- 意味/目的に向かう負荷やリスクを悠然と受け入れられる。
- 他人と比較して自分をどうこう感じる状態から解放されている。
- これらの結果、心身が生き生きとし、強い安定の状態にある。
「在り方」に眼差しを置き、そのもとで現実生活をどう処していくかという姿勢になります。スキルや能力が先立つのではなく、いかに生きていきていくのか、どうあるべき、ありたいのか、これを考える必要が私たちひとりひとりの課題です。
「成功のキャリア観」「自己防衛のキャリア観」とは全く異なる第3軸のキャリア観です。
「成功のキャリア観」とは、みながこぞって経済的価値のものさしにそって、単線的に上昇していくことだけを善としていてたものです。「自己防衛のキャリア観」とは、「成功のキャリア観」の反動でうまれたいわゆる”ゆとり的”脱力、保身のキャリア観です。
「健やかなキャリア観」はこの二項対立とは、まったく別の次元を追求するものです。
まさにアウフヘーベン。ちなみにアウフヘーベンについては、「【アウフヘーベンしようぜ?】直線は最短か?~当たり前を疑い創造的に答えを見つける実践弁証法入門~|阪原淳」もぜひご覧ください。
まとめ
- 「能力・処し方」 vs 「観・在り方」とは!?――100年時代のキャリア形成には、「いかに在りたいか・在るべきか」という見立てが必要です。
- これまでと、これからの時代のキャリア観とは!?――「成功のキャリア観」「自己防衛のキャリア観」とはことなる第3軸の「健やかなキャリア観」が求められます。
- 「健やかな」キャリア観とは!?――「在り方」に眼差しを置き、そのもとで現実生活をどう処していくかという姿勢です。