【あなたのビジネスの事業性はすでに決まっている!?】経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営|中神康議

経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営
  • 暗中模索にオリジナルな戦略を練っていませんか!?
  • 実は、まず大切なのは、あなたの事業タイプを知ることです。
  • なぜなら、その事業タイプごとにすでに戦略の定石はあり、まずは及第点を守ることが先決だからです。
  • 本書は、自身も経営コンサルとしてご活躍し、その後投資家としてさまざまな企業を支援する中神康議さんによる経営の本質を追求する1冊です。
  • 今回の投稿を通じて、事業を捉える基礎的視点を知ることができるでしょう。

本書は、経営者・従業員・株主がトレードオフではなく、トレードオン、つまりみなで豊かになる方策を示した本質的な経営書の1つです。内容が多岐にわたり、いずれの論点もとても大切だと思いました。ぜひ複数回にわたり投稿を作ってみようと思います。今回は、前回「【いかに長期的に豊かな経営を目指せるか!?】経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営|中神康議」に続き、2回目の投稿です。今回は、4つのビジネスタイプごとの事業性評価について、詳細を見てみましょう。

経営者にも、コンサルタントにも共通する、よい問いとは!?

私たちが、事業を見ていく時、大切な視点とはなんでしょうか。そんな、視点について、著者である中神康議さんは、アメリカでコンサルタントとしてキャリアをスタートさせた頃の象徴的なエピソードを紹介してくれます。

業界を知らないだけではなく、言葉もロクにできないわけですから。これで本当に戦略コンサルタントなんかできるのかと悩んでいるときに、上司から言われた言葉。これが衝撃的、かつ本質的でした。私の職業人生を一発で決めた言葉だったのです。

なぜ業界素人のコンサルタントが経営戦略を議論できるのか

その時の言葉は、経営者に対して、
”What bisiness are you in?” という議論をしてはならない。
”What KIND OF business are you in?” これならいい。

この真意は、「あなたはどんな事業を営んでいますか?」と聞かれれば経営者は、業界経験ゆたかであるがゆえに、仔細に入り組んだ事業の中身を淡々と語ることになります。しかし、業界の素人であるコンサルタントはこれについていくことができずに、適切なアドバイスを求められる場にならないのです。

しかし、「あなたの事業はどういったタイプの事業なんですか?」であれば、あくまで、個々の事業を抽象化してパターン化するということになります。そうすれば、「なるほどこのビジネスは、『この手のビジネス』なのか」と理解することができます。

このレイヤーで勝負をしないといけないということです。

そして、この抽象化したレイヤーで事業を見るという視点は、コンサルタントだけではなく、経営者自身にとっても多くの気付きをもたらします。というのも、すでに事業タイプに応じて、儲けの構造が決まっており、事業経済性を追求するアクションの定石があるからです。

中神康議さんは、多くの企業で、この定石が守られていないとしてきます。事実、日本の企業は、欧米に比べて本業の利益率が極めて低い。ざっと半分程度なのです・・。

日本企業の長期ROE水準は、欧米企業と比べると低いことは間違いありません。ざっくり言って半分程度の水準です。

コラム 日本企業のROEが低い本当の原因

事業経済性をうらなう4つのパターンと定石とは!?

この事業経済性をうらなう4つのパターンは次のように表されます。

1)規模型事業・・共有コストの比重が大きく規模効果を活かすことで、利益率が向上する。(例:紳士服製造販売業)
2)特化型事業・・コストが共有化されている分野とそうでないところがある。(事例:製薬業)
3)分散型事業・・共有コストの比重が小さく、事業を大きくすると儲からなくなる。(事例:卸売業)
4)手詰型事業・・市場が成熟し供給過剰な状態では共有コスト部分の規模効果が限界に達している。(事例:製紙業)

これらの分類は、ボストンコンサルティンググループがずいぶん前に開発した「アドバンテージ・マトリクス」によるものです。あまたある事業を「儲けの構造」という視点でシンプルに抽象化・パターン化するこの便利な道具は、なぜか、世の中にそこまで知られていません・・。

それぞれの経済性を左右するのは、「共有コスト」です。「共有コスト」というのは、いろんな事業や部門で活用できるコストのことです。一方、活用できないものは、「固有コスト」となります。

1~4の事業特性の中で、自社がどこに当てはまるのかがわかれば、定石を打つことができます。例えば、1なら、規模を追求して、さらに共有コストの活用範囲を広げること、2についても分野を絞って拡大を推し進めます。

一方で、分散型や手詰型については、拡大路線をとると収益性低下につながるので、効率化をはかるなどの別のアプローチが必要です。

これらの分類には、収益性散布図を業界別に描写すると良いでしょう。収益性散布図は、横軸に事業規模と縦軸に利益率を用いた図で、平均よりも収益性が下回っている場合、正しい打ち手を展開できていない可能性があります。

みなさんもご自身の業界でこの収益性散布図を描いてみて、自社の経営がどこに位置するのか、分析されてみてはいかがでしょうか?

儲けの出方は「コスト構造」と「共有コストの範囲」で決まる

超過利潤の蓄え方のスタンスとは!?

こうして、事業経済性にもとづき、定石を打ち一定の収益を確保するスタンスが大切です。正しい事業経済性を理解できれば、一定のROEを追求することができるでしょう。

そして確保した利潤をいかに運用していくかという視点も有していたいものです。

1)「額の経営」・・売上や高さを追求する経営。
2)「率の経営」・・高い利益率を追求する経営。
3)「利回りの経営」・・資本の投下という元手に対して、どれだけキャッシュフローを生み出せたか追求する経営。
そして、
4)「複利の経営」・・経営で生み出された果実を再投資していく経営。

ここで、見ていきたいのが、経営者、従業員、株主みなが豊かになる経営思想です。中神康議さんは、1~3ではまだ足りなくて、4の「複利の経営」を志向してみようと言います。

少ない「インプット」から多くの「アウトプット」を生み出すという「利回り」は重要ですが、より重要なのは、その「利回り」を持続させることです。アウトプットが元のインプットに加わり、そこからまた新たなアウトプットが生み出されることで、インプットそのものがどんどん増殖していくというサイクル。この「複利の経営」こそが、長期で安定的に資産価値を殖やすことを厳選投資家はよく知っています。これこそが長期的に「みなで豊かになる経営」なのです。

第1章 まとめ

厳選投資家とは、非常に厳しい視点で、自身が投資する企業や事業をよりすぐっている投資家のことを指します。中長期的に関わり、投資をしながらそして、ときには経営者を叱咤激励しながら、事業成長を共に志す投資家のことです。

短期的な株価や利益の追求ではなく、腰を据えて経営を中長期的に執り行っていくことが肝心です。そのためには、自社の事業に定石を打ち、そして、確固たる競争優位を発揮する必要があります。競争優位については、次回の投稿で詳しく見ていこうと思います。

まとめ

  • 経営者にも、コンサルタントにも共通する、よい問いとは!?――「あなたの事業はどういったタイプの事業なんですか?」で、戦略的抽象議論を心がけましょう!
  • 事業経済性をうらなう4つのパターンと定石とは!?――規模型、特化型、分散型、手詰型でコスト構造と「共有コスト」の活用範囲が異なることから、経済性と戦略定石が異なります。
  • 超過利潤の蓄え方のスタンスとは!?――「複利の経営」によりみなで豊かになれる世界観を共有しましょう。
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