【アパレル市場は、未来市場!?】ZARA、ユニクロ圧勝の秘密を明かす 生き残るアパレル 死ぬアパレル|河合拓

ZARA、ユニクロ圧勝の秘密を明かす 生き残るアパレル 死ぬアパレル
  • 少子高齢化の中で、日本の産業は、どのような変化が待ち受けているでしょうか
  • 実は、「アパレル市場」に起こっている変革を見ていくと、市場を予測することができます。
  • なぜなら、「アパレル市場」は産業の構造やものづくりの現場、はたまたブランドのあり方など、多彩で複雑な要素をはらんでいるからです。
  • 本書は、アパレル専門のコンサルタントとして活躍する河合拓さんによる著書で、2020年以降のアパレル市場に起きる変化を俯瞰しつつも、現場感の強い示唆を行き来しながら、伝えてくれます。
  • 本書を通じて、これからの日本の産業の多くが直面する状況を俯瞰することができるでしょう。

詳しくは表紙をクリック!! → Amazon

市場がシュリンクしているのに、KPIが変わらない!?

私の推定では、アパレルの市場規模は毎年約2%ずつ縮小している。それにもかかわらず、個社ごとに昨対比で成長する計画を立て、その非現実的な計画を前提に在庫を仕入れている

「アパレル業界を殺した」のは余剰在庫

個社は、「売上」を成果指標として捉える傾向が強いといいます。これは、アパレルがかつては、仕入れれば仕入れるだけ売れる業界であったことの習慣が残っているからだといいます。こうした、余剰在庫を抱えて、シーズンを終えることには、バーゲンで売り捌くか、あるいは、残った分を処分するという、大量生産大量消費時代的な市場であったのです。きっと日本では、これから消費高齢化もあいまって、売上至上主義では、なかなか立ち行かなくなる可能性が見えてきてます。売上はコストと利益で構成されますが、そのうち、利益を主役に、ビジネスやブランドを考えていくことが本来的です。

河合拓さんは、売上ではなく、アパレル市場を本質的に捉えるKPIは次の4つにあるといいます。

1)プロパー消化率
2)オフ率
3)商品企画原価率
4)残品率

いずれも、いくらで歩留まり販売できたかを計測するに不可欠な指標であり、売上をさらに細分化して、利益を以下に残せたかを丁寧に見ていくためのKPIであると思われます。

このように、市場が変化しているのにも関わらず、これまでの習慣のまま、KPIを運用していては、ビジネスが正しい方向に向かないことを、河合拓さんは示唆しているのです。

アパレル市場が硬直化する問題の根源とは!?

なぜ、アパレル市場や業界が変わりづらいのか、そこには、業界の構造的な問題もはらみます。

9兆~10兆円といわれるアパレルマーケットのうち、20%をファーストリテイリングが、同じく20%を同社を除いた上位10社が占め、残る60%は2万社弱の中小・零細企業で構成されていると説明した。

アパレル業界のフィクサー、商社の実態

むっちゃくちゃロングテールの業界なのです。もちろん小売業者もそうですが、製造(縫製)業者や、デザイン、材料メーカーまでもロングテールなのです。こうした超大多数の事業者が乱立し、それらが天文学的なやり取りをして、ひとつの商品を作り上げている業界です。

こうして超細分化してきた市場の隠れたとりまとめ役となっているのは、商社であるといいます。総合商社の繊維部門や繊維専門商社が、今後、プラットフォームを構築しつつアパレルの現業に乗り込み再編を行ってくる可能性もあると、河合拓さんは言います。

ちなみに、日本のアパレル大手「ワールド」社は、小売業から脱し(脱物販)、プラットフォームビジネスに舵を切っています。ワールド社のプラットフォームビジネスは、少しずつ成果をあげているようです。

今後アパレル市場に訪れる「7つの未来シナリオ」とは!?

そして、河合拓さんは、こうした状況を変えることに気づける業者のみが生き残れる可能性があるといいます。しかし多くは、これまでの経営体質や問題意識を変えることなく、事業の統廃合を迎えていくことになると予想しています。本書で、特に注目したいのは、河合拓さんが予想する7つの未来シナリオです。ざっと俯瞰していただくだけでも、多くの産業にも共通して見られそうな変化の一端を見つけられると思います。

1.企業数は半分以下に

企業数は半数以下になり、親会社として、外資系企業もしくは、生産現場のプラットフォーム化を狙う日系商社が存在感を発揮することになるでしょう。

2.販売拠点は自販機かウェブに代わる

リアル店舗は、ショールーミング機能に留まり、購入はウェブか、もしくは、無人の自動販売機によって対応されるようになります。一方で、趣味性の高く、世界観を大切にする一部の「ブランド」を持つアパレルについては、引き続き、リアル店舗を売り場として活用することができるでしょう。

3.従業員の多くはエンジニアとクリエーターに

ユニクロや、あるいは、商社の生産現場介入により、プラットフォーム化が進むことで、アパレル市場は様変わりします。システム構築のニーズが高まる一方で、どんなコンテンツをアパレルに載せるかを創造するニーズの両極に注目が集まるでしょう。

4.超大手と個人事業に二分される

グローバル超巨大アパレルブランド(これは、ライフスタイルブランドとして、さまざまな商材を取り扱う)と、超ニッチの個人事業(手作り等)の両極に二分されます。ここで思い出すのが、過去の投稿、「【これからの働き方の羅針盤!】ニュータイプの時代|山口周」「【実践考①キャリアと組織戦略】ニュータイプの時代|山口周」です。この本の中で、山口周さんは、ニュータイプシフトなキャリア市場で最もリスクが低くなるのは、「超大手でのジョブを得ることと、個人事業を両方展開することである」と説いていましたが、まさに、これがアパレル市場での生き残りにも当てはまると考えます。

5.個人間取引業者達が大きなシェアを握る

変化4の結果として、個人事業と顧客のもののやり取りが増加します。小ロットでも個性が強い商品づくりを行うことで、一定の顧客基盤を構築し、かつ、利益も想像し続けられるようなビジネスモデルをつくることができるでしょう。

6.在庫を持たなくなる

市場は、4分されます。「超高級ブランド品」「低価格コモディティ品」「二次流通品(中古)」「C2C」です。いずれの生産現場でも受注生産化が可能となり、在庫をほとんど持たないか、あるいはレンタル事業となる可能性が示唆されています。(中古市場はさすがに一定の在庫を保持するようにも思えます)

7.クラスターから個人へ

パーソナライズ化が、技術的にも実現可能となる中で、絶対単品と絶対個人の売買のやりとりが深く分析される時代になります。パーソナルコンシェルジュによる着こなし提案や、カスタム・オーダーなどが、一般化することも考えられます。

これらの変化は、単にアパレルだけにとどまらない可能性があります。たとえば、食事、インテリア、健康など多くのコンシューマー向け市場が、パーソナライズ化をはたしていく中で、これまでのものづくりや届け方とはまったく異なる市場になっていくでしょう。

まとめ

  • 市場がシュリンクしているのに、KPIが変わらない!?――過去の成果だけではなく今何が大切か?を問う姿勢も重要です。
  • アパレル市場が硬直化する問題の根源とは!?――サプライチェーンの個別領域が超ロングテールです。
  • 今後アパレル市場に訪れる「7つの未来シナリオ」とは!?――他の業界にも共通するシナリオが見え隠れします。

詳しくは表紙をクリック!! → Amazon

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!