【そもそも、ラグジュアリーって何だ?!】新・ラグジュアリー文化が生み出す経済 10の講義|安西洋之,中野香織

新・ラグジュアリー文化が生み出す経済 10の講義
  • これからの消費テーマは、どんなものごとが主軸になるでしょう。
  • 実は、「ラグジュアリー」にまつわる新しい潮流を見ることが参考になるかも。
  • なぜなら、新たな時代の象徴となる「大衆化」ではなく「民主化」のヒントがその背景に流れているからです。
  • 本書では、「ラグジュアリー」をテーマに歴史を俯瞰し、「新ラグジュアリー」の萌芽を探索します。
  • 本書を通じて、これからの消費テーマについて、ひとつの視点を得ることができるでしょう。

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安西洋之,中野香織
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「ラグジュアリー」の変遷とは?!

ラグジュアリーといえば、ヨーロッパ系の服飾ブランドが思い起こされるでしょう。本書では、もちろんそうしたいわゆるハイエンドブランドも含みますが、もっと広義にとらえています。

本講における私なりのラグジュアリーの定義をするとこうなります。「ラグジュアリーとは、誘惑的であり、豊かさを表すものであり、光り輝く(輝かせる)ものである」と。

Luxuryの源、光と豊かさと誘惑

こうしてラグジュアリー市場を算出するとなんと、140兆円規模にも及ぶといいます。また、いわゆるハイエンドなラグジュアリーブランドは、そのうち14分の1程度であるとされます。これはコロナ以前にベイン&カンパニー社が発表したデータに基づくものです。高級ブランドを展開する企業の本部の多くは、ヨーロッパに所在します。ラグジュアリーは、ヨーロッパ文化圏で培われてきたものであり、他の地域からみたある種の憧れでもあったのです。20世紀までは。

新ラグジュアリーを見通す前に、これまでの「ラグジュアリー」の歴史を見通してみます。「ラグジュアリー」の意味は時代と共に変遷してきました。

信頼性の高い代表的な英語の辞書『オックスフォード英語辞典(The oxford English Dictionary、通称OED)』で「Luxury」をひくと、大別して次の7つの意味が出てきます。( )内の年代は、英語圏において使われていた年代です。それぞれの意味がおおよそいつ頃の時代に使われていたかがわかります。
1.(古語)好色、色欲(1340年~1814年頃)
2.(古語)繁茂(1611年~1723年頃)
3.高価な一品としての衣服や食事や家具などに習慣的に耽溺すること(1633年~)
4.洗練された、熱情的な享楽(1715年~)
5.豪奢な楽しみの手段。効果で優雅な食事や環境(1704年~)
6.贅沢。快享楽(1715年~)
7.ラグジュアリー馬車、ラグジュアリークルーズ、ラグジュアリーアパート、ラグジュアリーショップなど、名詞の前に属性を表わす言葉として使われる(1936年~)

Luxuryの源、光と豊かさと誘惑

このように、「ラグジュアリー」のニュアンスは時間と共に変遷してきました。特に18世紀以降に付加されていた意味合いの集積が、現在のラグジュアリーを形作っています。本書の中で、反対語は、ココ・シャネルの言葉を借りて、「Poor(清貧)」ではなく「Vulgar(下品)」としています。

いわゆるラグジュアリーではなく、いま新しいラグジュアリー、本書で言うところの新・ラグジュアリーが芽生えてきています。

「新ラグジュアリー」の萌芽とその背景とは?

従来の権威的なラグジュアリーが「旧型」になりつつあるのです。ローカル文化に基づいた新しいラグジュアリーが世界各国でうまれつつあり、それがさらに拡大していく可能性があります。これまで覇権を握ってきたのがフランスですが、特に同国以外の地域に興味深い動きが窺えます。

ラグジュアリーの意味が変化している

これまでのラグジュアリーは、「排他性」「名声」「権力を与える力」によって構成されていました。でもこれらが時代にそぐわず、少しつづ様相を変えてきているということで、「旧型」と表現されています。

いま、ラグジュアリーを取り巻くキーワードは「クラフトマンシップ(職人)」「ローカル」「サスティナビリティ(OPEN)」です。すでに、いわゆるハイエンドブランドのいくつかは、こうした概念に対応した企業アクションを始め、新ラグジュアリーに向けたトランスフォーメーションを始めているといいます。

こうした、「ラグジュアリー」の変化の背景には、いくつかの要因があります。

1)旧来のいわゆるラグジュアリーブランドが、拡販的マーケティングモデルの中で、露出方になった。
2)新しい消費価値観を持つ、ミレニアル世代やZ世代が消費シーンで台頭してきた。
3)企業活動に、サスティナビリティを始め、社会的責任が含まれるようになった。
4)旧型ラグジュアリー文化発祥のヨーロッパが変容している。(移民増加・歴史認識問題等)
5)行き過ぎたグローバル経済の揺り戻し作用がある。

これらの大きなうねりのなかで、「ラグジュアリー」という概念が大いなる変容の只中なのです。では、こうした動きを見つめていく時に必要な心構えや知識、知恵とはどのようなアングルのものでしょうか?

「新ラグジュアリー」創造に必要な考えとは?

時代を大きく俯瞰すると、新しいラグジュアリーを構築するヒントを見いだせます。

大衆化とは、上下のある中で上にあるものが下に降りてきて広く普及すること。民主化は、上下そのものとをできるだけなくし、かつ公平な機会のもと、新しい価値を人々の創造意欲によってつくり出すことです。

はじめに

ひとつは、スーパーフラットな社会を志向するということです。本質的に「民主化」の社会に移行する中で、テクノロジーの力を借りて、一人ひとりの価値観を重視した創作活動がいかに支援されるべきか、が、ひとつの論点になります。

過去の投稿「【これぞ知の統合!バーチャリティの本質論を今、読もう!】メタバースさよならアトムの時代|加藤直人」も大きく関連するところだと思います。

人生の「深い意味」を問う次元まで切り込むことだからです。「意味」は、合理では叶えることはできず、審美性や心など広い範囲で捉えるもの。

はじめに

山積していく社会の課題に対して、「○○思考」という役に立つか、立たないかというノウハウが注目を浴び、さらに、いわゆるブルシットジョブを生み出し、人を苦労のスパイラルに陥らせていく、そんな時代背景を安西洋之さんは、読みます。そんな中で、彼が重要視するべきだというのは、「人文学」です。まさに文化を作ること、これに寄与することが新しいラグジュアリーを民主化のもとで構築することにつながるのです。一時、あまりにも顧みられてこなかった「人文学」の学習が重要です。

リベラルアーツは、読書体験を通じても得られます。過去の投稿「【なぜ読書は、今を生き抜く力になるのか?】本を読む人だけが手にするもの|藤原和博」もぜひご覧ください。

人文学の要は、プロセスがもたらす精神的自由とオーセンシティ

おわりに――「科学と心の融合」の時代における人文学の復権

人文学は、簡単に答えをくれません。読書でも、勉強でも、そのプロセスの中で、自分自身の価値観やものごとの見方をさまざまなに検証をして、鍛えてくれるものです。こうした時間をかけた体験をどれだけ持てるか、そして、それをブランドや企業活動へどれだけフィードバックできるかがポイントでしょう。もしかしたら、そうしたプロセスに生活者や消費者に参加をして頂くというのも一つのアプローチになりえるかもしれません。

一つの文化を生んでいく活動自体に、新ラグジュアリーのヒントが隠されています。

まとめ

  • 「ラグジュアリー」の変遷とは?!――「ローカル」「オープン」「クラフト」に変遷しそうです。
  • 「新ラグジュアリー」の萌芽とその背景とは?――行き過ぎたグローバリズム、消費の主役世代の変化などが起因となっています。
  • 「新ラグジュアリー」創造に必要な考えとは?――人文学をもう一度見つめ、文化を創造することです。

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