【人間は論理的?非論理的?】ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門|原野守弘

ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門
  • クリエイティブとは無縁なビジネスパーソン人生を送っていると思っていはいませんか?
  • 実は、クリエイティブ的に人間の習性をとらえる着眼点を持つことで、ビジネスとの関わり方向き合い方を変えていけるかもしれません。
  • なぜなら、クリエイティブとは、人の習性をよく知り、訴えかけるものだからです。ビジネスも、この習性を知ることが基本であるはずです。
  • 本書では、10年以上ビジネスパーソンとして電通メディア局で活躍していた著者が、ある時からクリエイティブ・ディレクターとして活動を始めていった時に考えたことが詳しく紹介されています。
  • 本書を読み終えると、非クリエーターのための人の見立てのヒントを得ることができるでしょう。

クリエイティブは「人間という生き物がもつ習性」との向き合い

よりよい答えや、それを導く「よりよい問い」をうみだすために必要になるのが創造性だ。そしてその基礎になるのが、「人間という生き物がもつ習性」についての理解だと、僕は思う。

はじめに

いわゆるクリエーターというと、ビジネス・パーソンと一線を画して語られます。著者の言葉で言えば、「川を隔てている」といいます。この川の両岸で活躍した著者だからこそ俯瞰した視点で、ビジネス・パーソンにもヒントとなる、クリエイティブとの架け橋的な考え方を提示できるといいます。

その考え方というか、もののとらえかたこそ、新しいものごとを生み出す時に大切にしなければならないのが、創造性です。

その創造性は、人間の習性をよく理解していることが土台になります。

人間観の違いを知ろう

ビジネスパーソンとクリエーターの最大の違いは、人間観だと思う。ビジネスパーソンは、人間を論理的な生き物だと考えている。だからこそ、ビジネスの基本は「理解」にあると考えている。(中略)
しかし、これは「理解」という名の宗教に過ぎない。人間を「論理的な生き物である」と仮定するがゆえの罠に陥っているのだ。

正しいという罠、理解という宗教

ビジネスはより多くの人の関与者の合意と強力が必要なので、おのずと「管理」できることに目が行きがちです。

管理できるということは、その対象を数値化、言語化できることが必須となります。

むかしむかし国の原型が誕生した時、文字(数字)は税収を管理するために発達したと、過去の投稿「【今頼るべきは、国家なのか?】くらしのアナキズム|松村圭一郎」で読みました。

でも、人工的に作られた組織や社会は、そういうふうに管理ができるかもしれませんが、目線を転じて、一人ひとりの行動や習慣にいたってはどうでしょうか?

なぜ、体にわるいとわかっていても飲み過ぎ食べ過ぎを避けられないのか?コンビニや自販機で対して比較もしないのに、商品を選べるのか?プロが時間をかけてフィニッシュしたデザインを自分が素人と知りながら思いつきで修正をしてしまうのか?

人間は、非論理的ないきものと言わざるを得ません。

これも過去の投稿「【あなたが見ている世界は存在するのか?】未来は決まっており、自分の意志など存在しない。|妹尾武治」では、そもそも、意識の前に、脳が動いていて、その前に、身体が反応しているのがヒトなのであると分析されていました。

なにか重大なものをひとりひとりが、抱えながら、社会というファンタジーを上手?に構成している生き物なのですね。不思議極まりないです。自分のことは全く理解できていないものです。

創造の3つのステップ

これは心理学ではなく、生物学と強調し、ゴールデンサークルが人間の脳の構造と一致しているからだ、と話を進めていく。What の部分は合理的な思考や言語を司る「大脳新皮質」に対応し、How と Why は、感情、信頼、忠誠心などを司る「大脳辺縁系」に対応するという。まだ大脳辺縁系は、ヒトの行動を司りすべての意思決定を行うが、言語能力はない、とする。

人間は感情でしか動かない

サイモン・シネックのTEDでの伝説的な講演である「ゴールデン・サークル」を引用します。

大切なのは、ヒトの行動を司る脳にインパクトをもたらすこと。そして、その際に必要なのは、「Why と How」なのです。著者は、ヒトは二人羽織のようだといいます。大脳辺縁系と大脳新皮質の自分、それぞれ自分なのですが、言葉で説明できない意思決定を下しているのは、辺縁系の自分・・やっかいですね。

こうした人間の習性を理解しながら創造性ゆたかに仕事に取り組むために必要なことは何でしょうか?

パブロ・ピカソは、「良い芸術家は真似をする。偉大な芸術家は盗む」と言った。これは「Good artists copy, Great artists steal.」という英語の方がわかりやすい。彼は「Copy」(真似する)という言葉と、「Steal」(盗む)という言葉を使い分けている。「真似する」のではなく、「盗め」と言っているのだ。

オリジナルという幻想

ここで著者の見立てがステキなのは、「盗め」についてです。「盗む」というのは、単なる模倣ではなく、じぶんのものにするということだといいます。ニュートンの「巨人の肩の上に立つ」と同じ。先行する人類のつくり出した知的財産、つまり巨人が見てきた景色を単にコピーするのではなく、自分のものとして、新しい世界を創ることを志向せよと語ります。

こうした考えのもと、どうしたら良い創造的アプローチができるのか?それを、著者は3つのステップで明快にまとめてくれています。

創造の3ステップ
1)好きになる・・好きをストックします。学び、遊び、思想というグループを意識しても良いかもしれません。
2)好きを盗む・・好きを抽象化します。どんな部分が好きなのか、どんな部分に惹かれたのか、を明らかにします。
3)好きを返す・・実際の制作でアウトプットします。巨人にお返しができているか?のチェックも忘れずに。

まとめ

  • クリエイティブは「人間という生き物がもつ習性」との向き合い――知らず知らずのうちにビジネス上で、論理的な生き物として人間を捉えていることから解放されましょう。
  • 人間観の違いを知ろう――論理的な生き物ではなく、非論理的な部分も持ち合わせている生き物だととらえましょう。そこからヒトを動かす創造性が、はじまります。
  • 創造の3つのステップ――完全オリジナルは幻想なので、まずは大脳辺縁系に従って「好き」を集めて、なぜ「好き」なのか考えながら、自分のアイデアへと導いてもらいましょう。創造の3ステップを活用しましょう。

テクニックとかそういうことではなく、ヒトという生き物について語られている点がとてもおもしろかったです。言葉は、便利なんですが、大切なところで、ヒトは言葉を失うんですね。

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