- コロナで大きく社会が変わった今、どのようなことに注意して経営や事業の舵を握ればいいのでしょうか?
- 実は、確実に訪れる未来が起きるかどうかよりも、起きた時どうするかという心構えが大切です。
- なぜなら、事業の不確実性が高まる中、将来の予測の確度を高めるよりも、想定外のことが起こった時の対応方法を準備しておくことの方が重要だからです。
- 本書では、今と少し先の社会環境を俯瞰した視点で論述しながら、個別の市場がどのような変化にさらされるかをレビューしてくれています。
- 本書を読み終えると、自社にとっての脅威だけではなく、機会も含めた展望を考えるヒントになることでしょう。
2022年は、進化の年になる。
今、多くのビジネスリーダーが感じている変化は、コロナ禍の一時的な影響としてではなく、コロナ禍を契機に加速する経済の構造変化として捉えるべきだ。AIなどの技術革新、米中の政治・経済摩擦に代表される地政学リスクの増大、異常気象が連続するなかでのサスティナビリティへの要請強化――従前からの変化のうねりに、コロナ禍が加わった。
はじめに
今、社会がどんな状況なのか?そして、今後、どういう方向性へ向かっていくのか?コロナを通じて加速したことはなにか?それぞれを見すえて、経営や事業の舵取りをしていきましょう。
変化の時代とされています。また、不確実さを極めています。
2022年以降の世界を読み解く2つのポイント
アンダーコロナのなかで、これから数年の経営環境に大きく影響を与える2つの方向性が決定づけられたと筆者らは考える。その方向性をしっかりと把握することが、アフターコロナの状況を読み、対応を考えるために不可欠となる。
Chapter1 2022年以降の世界を読み解く2つのポイント
この2つのポイントは、「ニューノーマル時代の到来」と「経済活動の前提の地殻変動的揺らぎ」です。
「ニューノーマル時代の到来」については、1.人々の行動様式・価値観の変容、2.デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速化に細分化されます。
コロナをきっかけに私たちの消費シーンと、働き方は大きく変わりました。ECやデリバリーを日常的に使いながら、リモートで会議に出席します。極端な日であれば、1歩も外に出ることなく、日常生活を家の中で完結できることに気づきました。
そんな中で、徐々に働き方や組織への帰属意識、生活と仕事のバランス、家族との時間の過ごし方、などについて考える必要が出てきた1年であったと言ってもいいでしょう。
私たちは、まだこれらの課題に答えを出しきれずにいます。また、企業にとっても、これらの課題に気づきながら、模索を繰り返す日々であるとも考えられます。
DXも加速しました。高齢者層でもデジタル化が進んだことは大きいでしょう。私たちは1歩先のステージに至ったがゆえの、さまざまな設計の見直しにチャレンジする必要性が出てきているのです。
「経済活動の前提の地殻変動的揺らぎ」は、1.カーボンニュートラルへの対応、2.地政学リスクが高まる時代の再到来、3.中間層の地位の不安定化が、あげられます。
菅内閣が掲げた2050年のカーボンニュートラル宣言を岸田内閣も踏襲をしました。2030年には、46%の削減をする必要があります。企業にとって、静観することは難しい状況が続くでしょう。善処する分野となっていくことには変わりありません。8年後、KPIの進捗を照らして、世論も含めてどのようなリスクやチャンスが潜んでいるかを今のうちから考えておくことが大切でしょう。
米中の攻防が続きます。米ソ対立と構造的に異なるのは、イデオロギーや価値観、政治といった対立だけではなく、世界的な経済覇権を含めた対立となっていることが際立ちます。
繋がりすぎた世界だからこそ、世界中には対立の火種が潜んでいるとも言えます。2022年2月から始まった、ロシアのウクライナ侵攻もその1つでしょう。
近年では、AI、IT、ロボティクスなどの技術革新による自動化で、中間層の仕事が奪われていくことが懸念されています。さらに、海外から安い労働力が流入する可能性も含めて、総中流化社会が揺らぎます。
一方では、技術革新では労働力が奪われないとの見方もありますが、より「人間がするべき仕事」への注目が高まる中、ひとりひとりがどんな価値提供ができるのかを突きつけられる時代になることは間違いありません。
学びなおし、リカレント教育への注力も今後進むと見られていますが、即時的な効果は期待できません。中長期的な視座に立ち、準備をする必要がありそうです。
日本企業がとるべき戦略的アクション
このような大きな環境変化のなか、企業経営が2022年に直面するパラダイムシフトを正しく認識することが、激変する将来への対応を始めるための第一歩だ。
Chapter2 日本企業がとるべき戦略的アクション
1.企業目標のシフト:「財務的な利益の実現」から「社会的な利益の追求」へ
企業経営の舞台である市場の拡大が続く中、企業が利潤を追求することがマクロ的にも最適な資源配分をされることにつながり、社会全体にも長期的にプラスに働くとの考え方がありましたが、外部環境が変化してサスティナビリティへの要請も含め、企業は、必ずしも利潤を求めるだけでは経営の舵が取れなくなってしまいました。
2.戦略策定のシフト:「先を読む」から「先が読めないことを前提として経営」へ
従来、先を読み経営における不確実性を極力減らしておくことが良しとされました。しかし、企業は今、地政学的リスクや気候変動など、多くの不確実性の中に立たされています。不確実性を減じることは不可能です。だからこそ、リアルタイムデータに基づきいち早い変化へのアラートを持つことと、シナリオへの対応力が求められているのです。
3.組織の進化:「決めたことを実現する」集団から「付加価値を追求する」集団へ
従来型の組織では決まったサービスやモノをいかに効率的に届けるかが論点となり、機能分化が進んでいました。しかし、人々の行動様式が変化する中で、企業の競争優位の源泉は、いち早く顧客が望むものを察知し、柔軟にソリューションを提供できるかに置き換わってきています。
4.人材マネジメントの進化:「企業に即した人材マネジメント」から「変化に対応する人材マネジメント」へ
従来、企業は特定領域の専門性と経験に基づいて、競争優位を実現してきました。しかし、大きな環境変化の中で、事業のありかたが大きく変わることを余儀なくされる中で、事業領域の変化や多様化に柔軟に対応できる人材を確保できるかが課題になっています。
その上で、2022年に企業が取るべき戦略アクションをBCG流に規定しています。
1)企業が目指すべき方向を再定義する/パーパス
2)不透明への耐性を高める/キャッシュ・マネジメント&サプライチェーン・マネジメント
3)シナリオの構想力を高める/不確実に備える
4)環境変化への対応力を高めるためにデジタル基盤を強化する
5)従業員のエンゲージメントを高める/企業と従業員の目指す方向を一致させる
まとめ
- 2022年は、進化の年になる。――変化の時代とされています。また、不確実さを極めています。こうした時代に対応するために進化をしましょう。
- 2022年以降の世界を読み解く2つのポイント――「ニューノーマル時代の到来」と「経済活動の前提の地殻変動的揺らぎ」を前提にしましょう。
- 日本企業がとるべき戦略的アクション――4つのパラダイムシフトに対応するように、5つの戦略アクションをとっていきましょう。
俯瞰した視点で今の時代背景をサマリーできる非常によい書籍だと思います。業界別の今後のトピックスもこれからのシナリオを予測するために貴重はヒントを貰えると思います。